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「品質ではなく期待値の方を調整する」という対処法について考える

こんにちは、渡辺です。
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズというコンサルティング会社で、経理・人事の仕事をしています。

ケンブリッジ社内で課題について議論しているとき、「それは期待値設定の問題だよね」という発言がよく挙がります。
実際、成果物の品質はそのままに、「相手の期待値を調整する」対処法をとることもよくあります。

この「品質ではなく期待値の方を調整する」という対処法について書いてみます。

「期待値を調整する」の具体例

具体例として、ケンブリッジの新入社員研修で実施する人事制度説明をとりあげます。

ケンブリッジでは、新入社員研修で人事制度や人事ポリシーを説明する時間を設けています。
200人くらいの小さな会社ではありますが、就業規則や人事評価制度、福利厚生などあらかじめ伝えるべき内容は多岐に渡ります。

これらの人事制度を説明し終えたあと、「情報量が多く、理解できない部分があった」という声が新入社員側から挙がることもあります。

この声を受けて、次回の新入社員研修に向けて皆さんはどのように改善するでしょうか?
・人事制度の説明資料を簡素にする?
・説明にかける時間を増やす?
・説明する側の体制を増やし、質問に答えやすくする?

私であれば、上記の対処はとりません。
次回の新入社員研修の冒頭で「今から説明する内容は多岐に渡り、ついてくるのも大変だと思います。一度では理解できない部分もあるかもしれません。でもみんな通る道だし、伝えないわけにはいかないので、頑張ってついてきてください」と伝えます。

すると、新入社員側の「分かりにくかった」という声は減り、「想像していた以上に理解できた」という反応が増えます。
これが「あらかじめ相手の期待値を調整する」という考え方の一例です。

不満は「期待値と実態のギャップ」

使い古された表現ではありますが、不満は「期待値と実態のギャップ」です。


期待値を上回れば満足し、期待値を下回れば失望や不満を抱きます。

このギャップを解消するための手段は2つしかありません。
1)実態のレベルを上げる 
2)期待値を下げる

人は課題に直面すると、つい「なんとか改善しなきゃ。どこから手をつけよう」という気持ちになり、「1)実態のレベルを上げる」に取り組んでしまいます。
ですが「2)期待値を下げる」という手法にも、もっと目を向けてもいいのではないかと感じます。

前述の人事制度説明に限らず、私たちは期待値調整を大事にします。

  • 採用面接の場面で「カルチャーを大事にしていますが、必ずしも全社員が100%カルチャーを体現しているとは限りません。中にはこういう人もいますよ」と、選考段階から伝える。→転職先に対する憧れを抑制し、入社後ギャップを減らす

  • 社内トレーニングの冒頭で「今日のトレーニング内容に対して"なんだ、当たり前じゃん"と思う人もいるかもしれません。でも、その当たり前を言語化して徹底することに意義があるんです」と伝える。→新奇性に対するワクワクを抑制し、意義を捉え直す

など、いろいろな場面で活用します。

これ、謙遜とはちょっと違うんですよね。
謙遜が「自分自身がどう思われるか」に主眼を置いているのに対し、期待値調整は「相手がどのような感情を抱くか」に主眼を置いています。

「期待値を調整する」手法が有効であるのは、どんなときか?

もう少し考えを深めてみます。
「期待値を調整する」という対処法が有効であるのはどんなときでしょうか?

  • 実態のレベルに対して、即座の改善が難しいとき

実態のレベルがあまりにもひどいものだったら、それを改善すべきです。
ですが「過去の様々な工夫を経て、今のレベルに至った」という場合は、なかなか即座の改善は難しいもの。
こういうときは、期待値調整でしのぐのが一手です。

  • 改善しても期待値とのいたちごっこになるとき

仮に実態を改善したとしても、その分期待値が上がってしまうケースもあります。
冒頭の人事制度説明を再度例にとると、仮に資料をきれいなものにブラッシュアップしたとしても「大満足でした」となる将来はあまり想像できません。
そんな期待値と実態のいたちごっこになりそうなときは、期待値の方を早めに押さえちゃいましょう。

  • そもそも大した問題ではないけど不満を押さえたいとき

これは身もふたもないのですが、実は大した問題ではないという状況もあります。
冒頭の人事制度説明も、伝えるべきことを明示的に伝える場であり、本来は新入社員に満足してもらう必要はありません。

それでも、不満の声が起こるのは気持ちのよいものではありません。
そんなときは「ちょっと期待値調整でなんとかしておくか」という対処法ですね。

おわりに

課題に対して「なんとかしなきゃ、改善しなきゃ」と慌てる前に、それって期待値調整の問題かもよ?ということが言いたかったのです。

もちろん、本質的な問題解決手法とは言えませんが、相手も自分も気持ちよく働くためのちょっとした工夫ではあると思います。終わりです。

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