カーナビにセンチメンタル

今のカーナビは便利だ。簡単にどこでもいけるようになった。 

昔のポンコツなカーナビとは違って、道路が何車線あるのか教えてくれるのだ。すごいのはそれだけじゃない。

例えば3車線あったら、左・真ん中・右どこを走行すればいいのかまでも、知らせてくれるのだ。

カーナビのおかげで、めったに道を誤ることはなくなった。もし間違えてしまっても、たった数秒で現地点から目的地までのルートを、再び案内をしてくれるのだ。

カーナビがあれば、どんな遠出だって怖くない。知らない場所にだって、何も考えずに飛び出していける。どこにでもいける気がするんだ。

最高だ。最高なんだよ。

それなのに、無性にカーナビのアナウンスを無視したくなる瞬間がやってくる。

示される道ではない道に、どんな景色がみえるのかを知りたい。

道を間違えて、途方にくれたい。  

「やっぱりあの道にいけばよかった」 
そんな後悔をして、自分の選択を恨みたい。

自分でも意味がわからないほどバカげている。
ただ、『正しく最適』じゃない道を選んでみたい、それだけだ。

茜色のキャンバスに水色と紫色。溶け込まない夕焼けの美しい刹那、僕はジャンクションにいた。

「この先、分岐を右です。」

焦げ付いた、うらめしい影をふりきるように、アクセルを深く踏んでみる。僕が、僕であるために。自分らしく生きるために。

「このまましばらく道なりです。」

僕は結局カーナビの案内に従ってしまっていた。

「このまましばらく道なりです。」
「このまましばらく道なりです。」

機械的な音声が頭の中でリフレインする。気がつけばハンドルを持つ指先から、カラダがココロが、冷たくなっていくのがわかった。

黒く塗りつぶされた空に、オレンジの光が並ぶ。正しい道をひたすら進み続けた。痛みや不安に気付かないように、かきけすように。
 

「運転お疲れ様でした。目的地に到着しました。」

目を開けると、闇が溶けて空は白んでいた。 

思ったよりもずっとキレイで 

「ここから見える景色も悪くない」

確かにそう思えたんだ。

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あゆむ

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