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おっさんずラブ 牧が春田とのルームシェアを決めた理由を考えてみた

異動したばかり。慣れない仕事。いろいろと親切に教えてくれる、お人好しな先輩。一度だけ一緒に飲んだことがあるけれど、まだ出会ったばかりで、どこに住んでいて、どんな生活をしているのか、全く知らない、職場の先輩。

に、突然「一緒に住まない?」って誘われたら、どう思うだろう。

もし私が同じ立場だったら普通に無理だ。
いくら好感を抱いている相手とはいえ、いきなり躊躇なく生活まで共にできるなんて、どんだけオープンハートバリアフリーマンだ。しかも職場の先輩とってキツくない? 息抜きできなくない?

ドラマ『おっさんずラブ』、第1話についての話だ。



牧凌太、彼はなんでほんの数日考えただけで、あんなに嬉々として引っ越してきたのでしょうね。
出会って間もない春田の魅力が、牧にそこまで伝わっているとは考えにくい。しかも引っ越し当日の様子を見ると、玄関でキョロキョロしちゃって、事前に下見さえしてなさそう。あの人、相手の家がどんなどこかも知らないで飛び込んでくるような無鉄砲な人でしたっけ?

これだけで、あのルームシェア開始がとても不自然なものに思えてしまいます。第1話の時点で牧のキャラ崩壊してる。

誘われた直後は社交辞令で誘いをかわしているようにも見えましたが、その後の数日で彼にどんな心境の変化があってルームシェアに至ったのか。もやっとしたので考えてみました。

ああ、もうまどろっこしいので結論から書きますね。

あいつあいつ。政宗。結局マサムネ。


人は、どんな理由で住環境を変えるのでしょう?
以下、いくつかの不動産サイトの調査を参考にしました。

外的要因
・進学、就職、転勤、結婚など、生活環境の変化
・物件の建て替えや売却、更新など、契約に関わるもの
・よりよい条件の物件(賃料など)が見つかったため

心的要因
・現在の住環境への不満(広さ、通勤通学のアクセス)
・現在の同居人への不満(嫁姑問題、独立)
・気分転換

2018年4月。本社から営業所に異動してきたとき、牧くんはどのような状況だったのでしょうか。

・入社4年目。<公式HPより>
・前年(入社3年目当時)本社勤務時に都市開発で成果をあげた。<第1話、黒澤のセリフより>
・本社勤務のときは実家住まい。異動になってからは、営業所近くの物件を探しつつウイークリーマンション住まい。<第1話、牧のセリフより>

本編からわかるのはこんなところ。
天空不動産の本社と東京第2営業所、牧家と春田家の位置関係がわからないのがもどかしいところです。(知りたい…)

以上のことから、牧が「外的要因による住環境の変化」を求めていたことは間違いないでしょう。要は、職場が遠くなるから引っ越す。

では、「心的要因」についてはどうか。

実家暮らしに対する不満があったとは考えにくいですよね。両親に妹もいる立派なおうち。牧家、おっさんずラブ内では最も「均整のとれた」家族構成で、第6話でも仲の良い家族に見えました。ただ営業所から遠かっただけ。

じゃあ…気分転換
どんな気分からの転換?

明言されてはいませんが、成績優秀な牧が左遷ということは考えにくいですし、営業所への異動はおそらく経験を積むための配置転換といったところでしょうか。
つまり、仕事の面で大きなストレスもなく、エリート街道まっしぐら。順風満帆な社会人生活。
もしこの状況で気分転換も兼ねた引っ越しなら、多少賃料が高い部屋でもよいのでは? だって年収も上がってってるでしょ? 余裕で借りられるでしょ。なのに「安いとこ探してる」と言う。
これって、堅実、だけが理由でしょうか?


前置きが随分長くなりました。
大事なのはここからです。

条件に合う物件、探せばいくらでも見つかりそうなのに、異動が決まってから準備する期間もあっただろうに、彼はいまだにウイークリーマンションで生活している。なぜ?

わたくし、ピーーーーンときました。

牧くん、揺れていたんじゃないでしょうか。

元カレ・武川さんとよりを戻すか、それとも吹っ切るか。



牧は、もちろん異動先に武川がいることは知っていたでしょう。
同じく武川も牧が来ることは知っていた。
武川さん、それで何もアクション起こさずにいられるでしょうか?

牧が大学3年生(就活のOB訪問時なのでおそらく)のときに2人は出会い、いつから付き合い始めたのかはわかりませんが、牧の就職後まで交際は続き、最後は生活のすれ違いが原因で別れている。<5話、武川のセリフより>
牧は勤続4年目なので…武川と別れてから2年以上は経過している計算になるでしょうか。公式さん、正確な年表はよ。

都市開発の仕事に邁進し、多忙な日々を過ごしてきた、20代の牧の2年間。
東京第2営業所をトップの成績に押し上げた功労者、40代の武川の2年間。

互いに仕事面では充実していた2年間だったでしょう。
別離を吹っ切るように、傷口から目をそらすように、がんばってきたのでしょう。新しい恋のひとつやふたつ、できたでしょうか。忙しくて実らせることはできなかったでしょうか。

こうして走り続けてきた彼らのところに、無情な辞令が届きます。

都市開発部
牧 凌太 様

平成30年4月1日付で、東京第2営業所への異動を命ずる。

いや知らんけど。辞令ってこんな感じかしら。

これを見た瞬間の武川さんの心中たるや、察するに余りある。



あ、メロディー(政宗からの鬼LINE)降りてきた。

「聞いたよ。うちの営業所に異動だってな」
「慣れない営業、大変だと思うが、しっかりフォローするから。よろしくな」
「で、住むとこ、どうするんだ?」
「実家からじゃ遠いだろ」
「よかったら」
「またうちに来ないか」
「おーい」
「ずっと引っ越していないし、部屋も空いてる」
「お前さえよかったら、いつでも待ってるぞ」
「考えておいてくれ」
「(謎スタンプ)」


ああ、政宗(号泣)




牧も牧で、実際武川への情を断ち切れていなかったと私は見ます。
だって、時間はあったはずなのに、すぐには引っ越し先を決めきれない。武川のところに戻りたい自分を否定できなくて、誘いを断りきれなくて、ずるずるとウイークリーマンション暮らしを続けてしまっている。弱くて、ズルいとこがある。

このままではずっと武川に甘えてしまうことはわかっている。
吹っ切らなきゃいけないこともわかっている。
でもでも、だって。

そんなとき
「じゃあさ、ウチ住まない?」
と、屈託のない笑顔で誘われたら。

春田さんかぁ。まだよくは知らないけど、少なくとも悪い人じゃなさそう。
ああ、でも酒癖は最悪っぽかったな…どうしようかな…
でも、ここらで思い切って環境を変えてみるのもいいかも。
じゃないと、いつまでも変われないしな。
つか、唐揚げ目当てって(笑) 上等じゃん?


春田の何気ない提案は、牧に過去を吹っ切るきっかけを与えたのではないか。相手が春田だからということではなく、たまたま思ってもみない方向から手が差し伸べられた。その手をとってみた。過去から差し伸べられる手を振り切るために。

そう考えると、唐突な決断に思えるルームシェアにも納得がいくのです。
春田に対する恋心が芽生えてくるのは、また別の話。




あ、既読スルーの鬼LINEに返信がきたようです。

「武川さん、お気遣いありがとうございます」
「どうにか住むところ決まったんで」
「ほんと、ありがとうございました」

ああ、政宗(号泣)





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