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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系… もっと読む
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#文縁の輪

『ラストクローン』

百万回蘇生を繰り返して、 生きながらえてきました。 もう一度貴方に会いたくて……。 でも、 そろそろ記憶の劣化が限界に達したようです。 もう、あなたの顔も声も思い出せません……。 ただ、あなたの欠片のような温もりだけ、 まだ、胸の奥にあります。 どれだけこの日を待ちわびたことか。 ついに、貴方が目覚める日が来たのですね。 なのに、それを、心から、喜べないなんて…。 だから、神様は、私に意地悪をしたのですね。 次のクローニングで、 「貴方を知ってる私」は 完全に消えること

『魔災チルドレン』

【ご注意下さい!】 ※魔災(まさい)チルドレン →架空の大震災の被害児童 ※地震前の作品です。不謹慎の極みですが、 架空作品と思える方だけお読みください。 ………………………………………………………… ――今思えば、 ぼくは本当にどうかしていたんだと思う。 妹のことを忘れるなんて… ぼくらは、 「魔災チルドレン」といわれてきた。 両親と住む家をそれで亡くしたから。 視界をおおう炎と煙… 人々の泣き叫ぶ声と、 耳をつんざくけたたましいサイレン… がれきの下で、 ぺちゃん

『染み』

白くて大きな壁に 小さな黒いシミがひとつ。 シミは恥ずかしかった。 みんなと違って自分だけが黒い。 どんなに頑張っても、けして白くはなれない。 白い壁は「おまえさえいなければ」という。 「めざわりだ」ともいう。 シミは、自分をごしごしとこすったり、 つばをつけてみたり、真っ黒な色を 必死になってごまかそうとした。 しかし、どうしてもみんなと同じ白にはなれない。 自分ひとりだけが取り残されたようで、 いてもたってもいられない気持ちになる。 ――と、壁の前に老人が一人や

『飼い殻~KAIGARA~』

唯一の肉親だった祖母が死に、ボクの友達は絶望だけになった。 祖母だけは味方だった。 祖母はボクの全部だった。 女なのに「ボク」って言っちゃうのはどうしてなのか。 自分でもわからない。 ひたすらに絶望を研ぎ澄ませていると死の領域に入っていくしかなくて。そんな風にしか考えられなくなってしまうというのは、要するにボクはきっと、愚鈍な愚か者なのだろう。 死ぬ前に何か楽しいことはないかとふらりと入ったお店だった。看板には巻貝っぽい不思議な絵が描かれており、なぜか貝本体がいるべきは

『覚醒』

気が付くとそこに立っていた。記憶喪失だろうか。自分の名前すら思い出せない私以外の連中も同じなのだろうか。みな、寡黙に押し黙ったまま茫然としている。 番号のついたネームプレートをつけられ、綺麗に整列させられているところをみると、何か悪いことをしでかした報いを受けているのだろうか。 青ざめた顔してる奴もいれば、血の気のひいた白い顔の奴もいれば、肝臓に疾患があるのか、病的に黄色い顔の奴もいた。 ――っう! 突然、頭の中に白い閃光が走り、記憶がフラッシュバックする。無骨で無機

『父親のかけら』

人には言えぬ苦労の末、 私はついに有名女優へとのぼりつめた。 ――それが届いたのは、 ブログで婚約発表した翌日だった。 蒸発していた父の訃報だった。 3年前、リストラされた父は 私たち家族にその事実を打ち明けられないまま、 姿を消した。 警察の話では、 季節労働者としてあちこちを転々とし、 暮らしていたらしい。 その日――ネットカフェにいた父は、 突然血相をかえ、どこかへ飛び出したという。 そして、大きな荷物を抱えて 戻ってくるところをトラックに跳ねられた。 運

『ハサミ男』

毎週日曜日なると、うちのドアポストにハサミを入れる男がいる。静まり返ったベッドタウンの深夜、午前零時から始めて1時間ごとに1挺ずつ。 アパートの二階から見下ろせる電信柱の裏にその男が今も佇んでいる。いつもそこから一時間ごとにポストに通ってくるのだ。 夏だというのにトレンチコートで身を固め、両ポケットにじゃらじゃらとたくさんのハサミを入れている。 顔は目深にかぶったキャップで見えないが恐らく人ではない。それだけはわかる。 カチャン。 午前三時、また1挺追加されたようだ

ぼんのくぼ 缶で冷やして 夏の息

「I LOVE YOU」をnoteの世界で意訳すると 「あなたというマガジンをフォローしました」 意訳:うわがわきしみ

君の時間と心 奪いたくて書いてる うたがわきしみ

僕は君を見つけた。 君も僕を見つけた。 見つかりあった。 だから今ココにいる。

むなしい抱かれ方する夜人形 あたし

きちんと途方に暮れた空を連れていく

溺れても優しい