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『全部ザラメのせい』

カステラと喧嘩をし、三時間ほど口をきかずにいた。

頭を冷やすため、散歩がてらザラメを買いに町に出た。仲直りのアイテムはいつもそれだった。

帰宅すると、カステラはお気に入りの平皿の上で性懲りもなくふて寝を決めていた。

優しく声をかけるつもりが、カステラのその物言わぬ背中のふてぶしい気配に無性に腹が立ち、私はとっさに買ってきたザラメを思いきりぶちまけると、それをかき集めては一心不乱に奴の小さな鼻の穴へ詰め込んでいった。

はっと気がつくと、カステラはぐったりと力なく横たわり、ピクリともしなくなっていた。

部屋中にザラメの甘い匂いがきつく立ち込めていた。




水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。