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『今日は実在感の日』

ここは誰?
私はどこ?

初めて聞いたとき
そのシンプルでダサイ
アベコベがくすぐったかった

世界を逆さまに眺めるレンズを
手に入れたんだと思う

何者にも縛られない世界が僕を待っていた

レンズを少しずらしてあげるだけで
街もポッケも引き出しも
一瞬で二重底になり
無かったはずのビルとビルの隙間には
袋小路ができていた

まだ誰も観たことのない袋小路を探して
詩人たちが毎日ひしきめきあっている
自分だけのレンズを手にして

僕の眺めている世界では5000匹の
羽化したバームクーヘンが世界を飛び回ってるし
鳥たちは深海の海底を夜な夜な徘徊してるし
もちろんイワシやクジラは空を泳いでて
金魚はいつだって森を散歩中だ

太陽が六つのぼる日もあれば
夕陽が青い日もある

銀色の月が銀河鉄道のホームに腰掛け
うつらうつらと船を漕ぐ日もあれば
電信柱が道端で酔いつぶれ
「るせーバーロー! おがーちゃん愛してるよ!」
などとのたまってる日もある

黒猫が鉛筆をぺろりと舐めながら目を細め
ひねりのきいた傑作探偵小説を書く日もあれば
『犬の惑星』のごとく
地球のすべてを犬が支配する日だってある

要するになんでもありだ

だが、それは
そこに実在感があればの話

さあ、僕が眺めてる
本当のことを
君に話そう

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。