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『スパイダーマン:スパイダース』のアニメーションが革新的な2つの理由

第91回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞したマーベルコミックスの有名ヒーロー、スパイダーマンの活躍を描いた、『スパイダーマン:スパイダーバース』。
これほどまでに革新的なアニメーションをこれまでみたことがなかった。観ている最中も後も、その興奮が冷めやらない。

ピクサーやディズニー作品の完全なる3DCGの彩度や、つるつるテカテカさ、人間の瞳の大きさが苦手だった私がなぜこれほどまでに興奮したのか、今回は画期的な演出方法である「アニメーション」のポイントについて調べてみた。

1. 最高のチームでどこまでも挑戦的に
2. コミック漫画とCGの融合

1.最高のチームでどこまでも挑戦的に

製作総指揮を務めたのは、『21ジャンプストリート』シリーズや『LEGO(R)ムービー』(2014)の監督として知られるフィル・ロード&クリス・ミラー。
この映画のコンセプトはとても野心的で、ストーリーやアニメーションのスタイル、脚本、音楽、それらすべてで限界を超えようとしていた、とインタビューで語っている。
テクノロジーを生かし、まるでコミックの中に入ってしまったような、没入感の強い「印刷されたコミックのアニメ版」を目指した。

日本のアニメーションでは監督は1人であることが多いが、監督として更に3人追加され、計5人のプロフェッショナルなチームが組まれているが、全員が「共通のビジョン」を持つことで「意見がぶつかる」などの困難な状況が起きても深く話し合いを重ねることで、最高のクリエイティブへと昇華したという。

2.コミック漫画とCGの融合

コミック漫画は静止画にて多くを語らなければいけないため、各フレーム毎をダイナミックに表現することが必要とされている。この作品ではコミックの手法を取り入れるために、各フレームをCGで作画してからその上に手書きにてコミックの手法を加えている。
コミック調の「エモーショナル」な部分を、劇的に表現する手法にこだわっていて、素早い動きのあるシーンのボカシやブレの表現には2Dの手法を取り入れ、3DCGと融合することにより唯一無二で刺激的なインパクトを与えることに成功している。

またクリエイターには日本人のアニメーターも多く参加しており、日本アニメーションの手法も取り入れられている。
「とにかくかっこよくしてくれれば、何をしてもよい!」など個人に裁量を与え、アイデアをぶつけ吸収していくような手法で、一見バラバラになりそうな世界観をここまでのクオリティとしてまとめているところが最高のチームとしての成果である。

クリエイターによる作画のメイキングがYouTubeに上がっているのでみてほしい。

まとめ
『スパイダーマン:スパイダーバース』はクリエイティブな現場に身をおいてきた私自身が、その手法や作品づくりにおける考え方や熱量において、心が揺さぶられる「映画」に出会えることができ、とても感動した作品。

ものすごい熱量の中つくられた作品であるのにかかわらず、アニメーターのインタビューによると、1日の制作時間は8時間と決められており、プライベートが侵略されることもなく極めて健康的に制作に携わっていることがわかり、学ぶべき要素がたくさん散りばめられていた。


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