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<No.29>企業がSDGsに取り組むために-SDGsは企業の成長戦略:フォアキャスティングからバックキャスティングへ

 近年、企業の社会的責任や企業価値の創造のという非財務指標における企業評価の文脈において、CSR、CSV、ESGといった点が注目されています。また、最近は新たにSDGsというキーワードが新たな話題となっています。

 SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年9月に国連サミットにおいて採択された国連全加盟国が合意した国際目標です。2030年までを期限とし、貧困、エネルギー、経済成長・雇用、気候変動、平和、協働など、持続可能な社会の実現のための17のゴールと169のターゲットから構成されています。また、取り組みにあたって、政府の持続可能な開発目標(SDGs)実施指針において以下の5つを重視することとしています。

普遍性:先進国を含め、全ての国が国内と国外の両面で行動する

包摂性:人間の安全保障の理念を反映し「誰一人取り残さない」包摂的な取り組みを行う

参画性:全てのステークホルダー(政府、企業、NGO、有識者等)が役割を持つ

統合性:社会・経済・環境は相互関連性があるため、統合的に取り組む

透明性:モニタリング指標を定め、定期的にフォローアップし、評価・公表を行う


 なぜ今になってSDGsが企業に注目されているのか、今回は日本企業にとってSDGsが経営戦略上、重要な目標となった背景と経緯を整理し、特に中小企業におけるSDGsの活用についてまとめます。

 SDGsは、2015年に期限を迎えた国連の「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継として、2030年までの新たな国際目標として合意されました。MDGsは開発途上国向けに設定された目標であったため、先進国政府やNGOの目標として認識されており、民間企業にとっては国外の政策課題と認識されていたため関心が薄かったと言えます。

 しかし、SDGsは貧困、飢餓といった開発途上国支援に寄った課題だけでなく、技術革新や、経済成長、働きがいという先進国の課題や気候変動や海洋資源の保護といった世界全体にも影響する広範な目標となっています。また、各国における目標を定めて定期的にモニタリングすることが定められおり、日本においては全省庁が実施主体となっています(全主務大臣が参画する持続可能な開発目標(SDGs)推進本部の設置)。また、2017年の世界経済フォーラム(ダボス会議)において、企業がSDGsに取り組むことは12兆ドルの価値、3億8千万人の雇用が創出されるとの推計が出たことが経済界における一つの契機となり、企業がSDGsにコミットする流れができました。2017年11月には、経団連が「企業行動憲章」と「実行の手引き」をSDGsの達成を柱として改定しています。

 各企業は、SDGsに積極的に取り組むメリット(ビジネスチャンス、企業価値の創造等)、取り組まないリスク(調達先からの排除、ダイベストメント等)を考慮し、SDGsに協力し、競争する時代となりました。その意味で、SDGsは各国政府や企業の「成長戦略」とも言えます。

SDGsが掲げた2030年の目標に対して、社会の現状にはかなりのギャップがあります。ギャップがあるということは、そこでビジネスができることを意味します。これは、逆に言うと、SDGsから外れた成長戦略は長持ちしないことを指しているといえます。

 SDGsに盛り込まれた内容は、これまでも言われてきたことであり、それほど新しいものではありませんが、SDGsは社会が複雑化する中で、今後進むべき方向性を17の目標と169のターゲットという形で明確に打ち出した点が時代にマッチし、各国のリーダーや世界の優良企業の取り組みが見えたことが経済界における潮目の変化になりました。

 民間企業がSDGsに取り組むうえで一番大事になるのは、「バックキャスティング(目標から逆算して現在の計画、戦略を策定する方法)」で考えることです。2030年の目標からスタートして考えれば、今足りないものがクリアになります。そして、目標を達成するには、自社がどのような取り組みをすべきかのヒントが見えてきます。

 日本の大多数を占める中小企業にとって、2030年に向けた経済成長戦略は死活問題であると言えます。ほとんどの中小企業は、毎年の経営計画は作成しているかもしれませんが、自社の2030年の姿をバックキャスティングで考えたことがないと思われます。しかし、例えばこれからEV(電気自動車)の存在感が高まる中で、自動車部品の町工場が2030年に今と同じ部品で事業を続けられるとは限りません。

会社の存続のためには、今から2030年をにらみ、何にシフトしなければならないのかを考える必要があります。中小企業がSDGsを活用することで、「自社が新たに何をすべきか」を考えるきっかけになります。

 どちらかと言うと、日本人は目標達成に向けて細かく積み上げていくスタイル(フォアキャスティング)が得意であると思われます。また、SDGsは難しく考えられがちですが、そこまで難しく考える必要はありません。まずは、基本的な目標やターゲットを理解します(グローバルな視点とローカルな視点を考慮します)。そして、未来への目標(=自社の理想的な姿)を定めて、そこからスタートします(バックキャスティング)。最後に、それぞれの課題は関連しているので、そのつながりを考える(SDGs全体のテーマでもある「誰一人取り残さない」の視点とパートナーシップの視点)、これら3つに集約できるといえます。

これらの基本的な背景とSDGsに取り組むために視点を押さえたら、具体的な取り組みの参考となる資料として環境省の中小企業向けSDGsガイト「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」がありますので、ぜひそちらを確認してSDGsの実践につなげましょう。

環境省 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド
https://www.env.go.jp/press/105528.html

その他、ビジネスにおけるSDGs活用の参考資料

グローバル・コンパクト・ジャパン SDG COMPASS(SDGsの企業行動指針)
http://www.ungcjn.org/pretest/sdgs/pdf/SDG_COMPASS_Jpn.pdf


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