海獣の子供 :映画感想

 観た。映画。おれ。

 米津玄師さんファンのこどもの猛プッシュにより、映画、見に行くことになりました。確かに作画はすばらしく、絵としての美しさに加え、水滴の動き、細かさ、躍動感、語る絵としての最高の出来栄え。また4Dで描かれた宇宙の美しさは何とも言えないね。鉄コン筋クリート好きだったわー。と思い出ししみじみしました。BGMが最高だなと思ってたら久石譲大先生でしたね。ちゃんと感情に沿って音楽が盛り上げてくれて、よかった。

 しかしな。内容。内容だよー。

 こちらの記事が批評文として優れていたので読んでみてください。


 以下私個人の感想です。

・セリフがしんどい。

 あかんかった。琉花は自分の気持ちが表現できず、たびたびトラブルを起こしているキャラクター。作中でかなりのコミュ障である空も指摘するところ。けれどもこの作品を通して描かれていたのは、言語化できない理解のあり方を肯定する内容だった。それはそれで素敵だと思う。なのに。

 なんでかラストに向け人間世界でのコミュニケーションの問題がすべて解決しているやん……崩壊寸前だった家族、暴力沙汰で退部させられそうになったハンド部。主人公はただ海で「まつりすげー」ってなっていただけなのに? トラブルの方が主人公を避けて受け入れるラスト。家族は百歩譲って、娘の失踪で再び結びついたとしてもですよ。退部の件は謎過ぎてもやもやする~。もうわかった、自然が人間を凌駕したんだろう。ひれ伏したんだろう。ヒューマンコミュニティが。しかし。

 なのに登場人物めっちゃ無駄な語りするやん。設定の語りが多いよ~! 説明役が多すぎる~(三人)! 三人もいるのに誰も具体的な話をしてくれない~! 


・まったく個人的な感想。妊娠のメタファー繰り返されすぎて辛い~!

 辛い。石を呑んだ瞬間に下腹部を強調する動作からすでに不安を感じていた。

 祭りは完全に受精の描写ですね。卵子の保護膜を最初に到達した精子が解いて次いで到達した精子が侵入する。クジラのお腹の中で受精ねー。どこにでも子宮を見出すのね。

 うーん、現実にある物理法則や知恵を身体や日常の延長で表した神話から翻って現実を読み解く行為はわたしには無謀に思えました。微分と積分繰り返しても元の数字は得られないからさ。私は「自然すげー」と言っている体で、人間礼賛する物語があまり好きではない。人体の構造から自然の在り様を読み解くのは不遜であると考えます。だからこの映画は合わなかった。

 でも絵に迫力や独特の魅力があるのは認める。あの絵のクオリティで漫画をずっと続けられたらハマると思う。作者に惹かれて読みはじめてしまうタイプの漫画かなと思った。でもそれを二時間の映画にするには内容が薄い感じでした。

 このMVは短く美しくまとまっていて、素敵ですね。

 タイアップの曲って変に力み過ぎてたりしてて、私はもっと鼻歌みたいにさくっと作られた音楽が好きなんだなあとあらためて思いました。原作ファンは見に行って損はない映画だと思います。

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