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ウェザリング・ウィズ・ユー・ネヴァーダイズ

◆◆◆ご注意ください◆◆◆
この記事は映画『天気の子』と小説『ニンジャスレイヤー』のマッシュアップ二次創作です。また、『天気の子』の重大なネタバレが含まれておりたいへんきけんです。貴方は少なくとも劇場で『天気の子』を観る必要があるし『ニンジャスレイヤー』は現在物理書籍最新刊「スズメバチの黄色」が絶賛発売中!今すぐしよう!


◆◆◆止めなさい。迂回しなさい。ここは危ない。私は狂っている。◆◆◆


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


(これまでのあらすじ)偶然天候を操る力を得た少女、ヒナ。彼女はその力で人々のささやかな幸せを叶えていくが、代償に人柱となり空に消えてしまう。彼女を取り戻すためヨヨギ・スゴイフルイ・ビルのトリイゲートを目指すホダカの前に現れたのは、彼を匿ってくれていたスガであった。


「ヒナ=サンのところに行かせてくれよ!」BLAM!銃弾が天を衝き、銃口から硝煙が立ち上る。スガの顔色がさっと変わる。銃声を聞きつけマッポが部屋に駆け込んできた。「銃を捨てなさい!」「直ちに銃を捨てなさい!」リーゼントのデッカーがホダカに銃を突きつけた。「ザッケンナコラー市民!」

「おいおいおいおい、ちょっと待ってくれよ! 誤解ですって、ちゃんと説明しますから!これから一緒にマッポへ行くとこだったんスよ!」スガの声が遠く聞こえる。膝がガクガク震え、心臓が爆発しそうだ。しかし拳銃を構えたまま、ホダカは剥き出しの感情と共にデッカーたちを睨みつける。

視界が回転する。大人たちの顔がぼやけていく。ホダカはマッポ包囲網をくぐり抜けて屋上へ向かうことだけを考えていた。マッポとデッカー、合わせて5人がホダカとスガを囲んでいる。ホダカは涙ぐんでいた。スガがマッポに仲裁に入っていることにも気づかず、ホダカは叫んだ。

「バカハドッチダー!」その場の全員がホダカを見た。「なんで邪魔するんだよ!皆なにも知らないで、知らないふりして!」焦燥感と混迷した状況が、ホダカのニューロンを蹂躙した。スガ。マッポ。デッカー。拳銃。晴天。トリイゲート。人柱。ヒナ=サン。

「俺はただ、もう一度あの人に」涙を流しながら、ホダカの全てが叫んだ。「会いたいんだ!」爆発する感情に身を任せて、ホダカは拳銃を投げ捨て非常階段へと走った。

「ザッケンナコラー市民!」リーゼント・デッカーがホダカの腕を掴み、引き倒した。「確保!」「直ちに確保!」マッポたちがホダカの周りに集まり、囲んで棒で叩く!「グワーッ!」ホダカはなおも抵抗するも、デッカーがその左手首に手錠をかけた。

「離せ!」ホダカは拘束から逃れようと暴れる。デッカーがホダカを殴りつけた。ドクン!とスガの心臓が脈打った。(そこまでして会いたい子がいるってのは、私なんかにゃ、羨ましい気もしますな)中年デッカーの言葉がよぎり、もう写真でしか見ることの出来ない、微笑んだ表情が浮かんだ。アスカ。

「てめえらがホダカに触んなッコラー!」スガは自分でも驚く程の大声でヤクザスラングを吐き、リーゼント・デッカーに飛びかかった!「グワーッ!?」「ナンオラー市民!」もんどり打って倒れるマッポたち!「ホダカ、行け!」ホダカは弾かれたように走り出す!

「止まりなさい!」遅れてやってきた中年デッカーがホダカの前に立ち塞がった。だが次の瞬間、中年デッカーにワンピースの少女が躍りかかった。少女ではない。ナギ=センパイだ。「ホダカァ!全部お前のせいじゃねえか!」声変わり前の少年の声がホダカをなじった。

「グ、グワーッ!」ナギ=センパイは中年デッカーの髪を掴み引きちぎりながら、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔でホダカを睨みつける。「お姉ちゃんを返せよ!」刺し殺すような視線に押され、ホダカは再び駆け出す!

「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」黄ばんだガラスから差し込む陽の光を浴びながら、ホダカはめちゃくちゃに走った。殴られた後が熱を帯びているのを感じたが、痛みはなかった。駆け出した足は止まらない。ホダカの中で叫んでいる声が言う。「行け」と言う。

割れた窓から非常階段の踊り場へと飛び込む。腐食しきっていた階段が音を立てて崩れ落ちる。ホダカは落下する踊り場を蹴り、宙へと飛んで、かろうじて残った手すりにしがみついた。まるでブッダの垂らした糸だ。階段を駆け上がる。

(今から晴れるよ)(ねえ、東京に来て、どう?)(私、好きだな、この仕事。晴れ女の仕事)脳裏に次々とヒナ=サンの言葉と顔が浮かぶ。「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」真夏の青空が冷酷にホダカを見下ろす。屋上に辿り着く。全ての始まりの、あのトリイゲート。

(ねえ、ホダカはさ、)声が頭の中に響いている。(この雨が止んでほしいって思う?)息苦しい島での生活。巨大で複雑な東京。K&Aプランニングでの日々。ヒナ=サンとの出会い。そして晴れ女の仕事。どうしてこんな事になったのだろう。

僕が狂ってしまったのだろうか。そうかもしれない。少女1人が犠牲となって晴天が還ってくるなど、この世の道理を超えているのだから。ならば、もう後戻りはきかない。そもそも、失うものなどもう無かったのだ。いま、ホダカの手にあるのは、ヒナ=サンからもらった勇気、ただ一つだけだった。

なにかを踏みつけて生きている大人も、顔の見えない社会もどうでもいい。ヒナ=サンと引き換えに青空を手に入れた世界もどうでもいい。僕は知らぬ顔で寝ているブッダにも、ジーザスにも、オーディンにも逆らう。ホダカはこの世のすべてに中指を立てた。僕が全部ファックしてやる!

「イヤーッ!」もはや大人の聞く耳など持たぬ!ホダカは不格好に、ただ力任せにトリイゲートに足を踏み入れた!もう二度と晴れなくたっていい!天気なんて狂ったままでいい!ヒナ=サンからもらった勇気よ、願わくばこの狂った青空から君を取り戻す力となれと願いながら!

(((もう一度ヒナ=サンのところへ!)))

【ウェザリング・ウィズ・ユー・ネヴァーダイズ チャプター10おわり。チャプター11に続く】

(続かない)

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