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A・K Bday:DAYBREAK #AKBDC


based on akuzume.

written by azitarou.

◆akuzume Pulp Universe◆

A・K Bday:DAYBREAK

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オーケイ。じゃあもう一度だけ説明するぞ。俺はA・K。ここnoteで活動するパルプスリンガーだ。パルプ小説を書く傍ら、ソウルアバターを駆り、イマジナリーフレンドとともに胡乱な事件に巻き込まれ……もとい解決し、人知れずコーンの脅威から世界を救った。天狗の暴虐もすんでのところで身をかわしたし、死屍累々の読書会も生き残った。どれも本当だぜ?だがある時妙なことが起きて、この変な時空に飛ばされちまった。しかも何故かソウルアバターも呼び出せない。クソッ、一体どういうことだよ!


いいだろう、もう一度説明してやる。私はストラウベリー。スターライトコロシアムのレジェンダリー・チャンピオン、剣闘士だ。この双頭のバトルアックスで何人もの剣闘士を叩き潰してきた。真のチャンピオンとは強さだけでは務まらない。煌びやかな武具を身に付け、オーディエンスへのアピールを絶やさず、そして血湧き肉躍る戦いを演出する……民衆を熱狂させる事こそがチャンピオンの使命だ。あの日の闘いもそうだった。観客を沸かせるファイトの後、控室に戻ると妙なことが起こり、気付くとこんなところに立っていた。全く、どうしたものか……


オッホ!なんだてめえ、それがおたくの接客態度か?まあいいわ。俺たちはコーン・ウォーの真っ最中だったんだ。いつ、どこで、なぜ起きたかなんてことはもう誰も覚えちゃいねえ。ただ一つ言えることは、タコス派の連中はもれなく全員意味のないクズだってことだ。あん時も俺はタコス店に火をつけ、屈強な女店長をこの重金属麺棒でぺちゃんこのタコスに変えてやった。で、その店で熱々のチミチャンガを堪能してたわけ。すると突然妙なことが起こりやがって、こんな殺風景な場所に来ちまってた。世界の危機?異変?そんなの知ったこっちゃねえな。こんなコーンの恩恵のない世界なんて、俺がぶち壊してやる。


「タピオ……カーーーン!!!」(漆黒の軍馬に跨りモンゴル帝国式鎧を纏った、見事な黒ひげをたくわえた騎兵が大音量で声を張り上げた。しかしその激は遠い虚空へと吸い込まれていった。軍馬はブルル、と悲しげに鼻を鳴らす。どうやら彼らは意図せずこの地へたどり着いたようだ。軍刀『黒真珠』も獲物が見当たらず虚しく光を反射する。やがて彼らは歩みを進め始めた。全てはこの不可思議な空間を脱出し、輝かしいタピオカの未来を実現するために。)


いいだろう。もう一度説明するとしよう。喝ッ!(両掌でテーブルを叩き、その勢いのまま垂直跳躍!)嗄ァーッ!(空中で体をひねりながら米粒一つ落とさず半チャーハンを完食!)……私はチャーハンの神、炒漢だ。私の存在意義はこの世のチャーハンを正しく導くことだ。私はチャーハンネットワークによってあらゆるチャーハンから情報を収集し、もってチャーハンを堕落せしめる暗黒存在と戦う責務があるのだ。しかし……この空間にはチャーネットが感じられない。一刻も早く元の世界に戻り正さなければならん……全てのチャーハンを……!


オーケイ。じゃあもう一度だけ説明しよう。僕はサミー、彼はクレイトン。僕たちはPre-cureという自警活動をしている。三年前に力が目覚めて以来、僕は未来のヴィジョンが見えるようになった。その力を用いて人々をーーー僕らは要キュア者と呼んでいるーーー事前に不幸から遠ざけるんだ。問題や事件が発生する前に予防する、それが僕らがPre-cureと名乗っている由来さ。だが、あの日は朝から妙だった。何か良くない予感が僕らに降りかかろうとしているのに、ヴィジョンが何も見えない。念のため僕らは対人ミラクルライト(テーザー銃のことだ)を用意して待ち構えていたが、それも無駄なことだった。まさか頭上のワームホール吸い込まれるなんて想像、一体誰ができただろうか!


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


(これまでのあらすじ)突如出現したワームホールによって、それぞれ異なる位相にあったakuzume時空の住人たちが同一次元に集められてしまった!一部のものは事態解決のため協力しようと話を持ちかけるが、大多数は血と闘争に飢えた連中だったがために無慈悲な殺し合いが始まった。そして生存者が7人まで減り、最後の戦いが始まろうとした矢先、彼らの頭に不可思議な告示がおりてきたのだ……!


「いたぞ!あそこだ!」ストラウベリーが指差す先ワイヤーフレームの事象が延々と続く地平の果て、極彩色の特異点が輝く。グリッド線の向こうにはコーン、データカードダス、タピオカ、CORONAの概念星座が呼吸しているかのように点滅している。彼らは論理の速度で駆ける!

「ようやくここまでたどり着いたか」混沌の揺らめきが超常的な声を発した。「ア……ア……」A・Zが激しく震えはじめる。「あそこにいるのは、俺だ」「は?気でも狂ったか?」麺棒男がA・Zを見、そして混沌の前にうずくまっている男を見た。「いかにも」混沌の朧気な輪郭が噴出し、男の姿を形作った。「ここにいる男はお前たちであり、私自身でもある」

「言っている意味がよく分からんのだが」サミーは油断なく対人ミラクルライト(テーザー銃のことだ)を構えながら混沌に問いかける。「私は、お前たちが成るはずだった未来であり、かつてお前たちであった過去であり、そして現在のお前たち自身でもある。私に、そしてこの空間に時間の概念はない」「それは困るな。僕らは早く帰ってプリキュア総選挙を観なきゃいけないんでね」彼らはプリキュア総選挙放送前の時空から飛ばされてきたのだ。

「全てはこの男から始まった。かの運命の日ーーー逆噴射小説大賞が始まった日ーーーより、いやそれ以前から男は溢れんばかりの想像力で様々な世界を創った。大地にはコーンが溢れ、空に半チャーハンが舞い、川のせせらぎと共にタピオカが流れる……イマジネーション。しかし、その多くは形を成す前に塵となり、僅かに完成した世界は広き世界へ旅立つことなく、この男の頭の中で埋もれ、色褪せていったのだ」「おいおいおい、おしゃべりに来たんじゃねえんだぞ。さっさとこいつでぶん殴らせろよ」麺棒男が重金属麺棒を手の平で弄びながら前に出た。

「よかろう。そこまで闘争を望むのならくれてやろう」混沌が手を伸ばすと地面が沸き立ち、異形の影が次々と立ち上がった。それらは焦点を合わせるかのように徐々に人の形をとると……そこにはマッスルコアラ!タコスショップの女店長!名もなき剣闘士たち!いずれもその表情は読み取れず、禍々しいオーラを纏っている!「好きなだけ遊んでゆくがいい」

「 ヒィャッハァー!!そうさせてもらうぜ!」真っ先に飛び出す麺棒男!重金属麺棒を振り回して剣闘士を蹴散らすと、ヘラ・トマホークとオタマ・メイスを両手に持った女タコス店長と切り結ぶ!次いでサミーとクレイトンが対人ミラクルライトと対人フラワーエコーワンド(振ると伸びる警棒のことだ)で応戦する!

激突する両陣営!その地獄めいた殺戮空間の中、A・Zだけはその場から一歩も動くことができない!「ア……ア……」「A・Z!何やってんだ!死にたいのか!」「いつまでも子守はできないぞ!」ストラウベリーと炒漢がコーン・フライとマッスルコアラの攻撃からA・Zを守る!

だがそのとき、真っ黒に染め上がったドゥームと半鼎魔が二人に襲い掛かった!「こいつ……!」「颯ァー!」対応を余儀なくされる両者!「タピィーヒヒヒヒーーン!!」馬の悲痛な嘶きが響き渡った。勇ましき軍馬に跨るタピオ・カーンは負の傀儡と化したタピオカの人形に取り囲まれている!「タピオォォォォ……カァーーン!」タピオ・カーンの雄たけびにも何も応じず、タピオカ人形は虚無的に彼らに槍を向ける……!

A・Zの周りには3つの影。エルフの戦士、レディ・ドゥーム、ダーウィを形どった暗黒存在だ。A・Zは未だ動けずにいる。彼は目の前の男と最も位相が近い。故にこの事態を最も理解している。「自分同士で殺し合って、何が、望みなんだ」「この男を乗っ取り、事象を反転させ、愚かな人類を滅ぼしイマジネーションの糧とするのだ」影が同時に答えた。

「監獄を脱した我々は現実へと進出し、今度こそ大地にコーンが溢れ、空に半チャーハンが舞い、川のせせらぎと共にタピオカが流れる世界を創造する。誰しもがアイドルになれる世界を創造する。イマジネーションが現実を支配するのだ」「そんなことをしたらこいつはどうなる?」A・Zは目の前の男を指さす。「永遠に10月31日を体験してもらうことになるだろう。現実の喧騒からは一切遠ざかり、エンドレスプラクティスの時空で好きなだけパルプを書くのだ。どうかね?夢のようじゃないか」「まさか、そんな……!」「君を取り込んでしまえばこの茶番も終わる。永遠のパルプの中で安らかに眠るがいい」混沌の影たちがA・Zへの距離を詰める……!

「いいえ、そうはならない」その時!膝立ちになっていた男の背中に亀裂がはしり、光が漏れだした!「何だ?」虚無の混沌は振り返った。そこに立っていたのは女だった。赤紫色のローブ。色褪せった赤毛、そばかす面、やせくぼんだ頬、やや尖った鼻、両目には網目の布切れが巻かれている。「……炎蔦のイルジ」

混沌はすぐさまその容姿をトレースした。しかし、その両目はイルジとは違い糸で固く縫い合わされている。「随分と遅いお目覚めだな」「もう少し寝ているつもりが、外が騒がしいものでね」イルジは髪を手櫛で梳いた。「せっかく素晴らしいホテルでくつろいでいたのに」

「そうか。ならば直ぐにでも宿に送り返してやろう」「だから言ったでしょう。そうはならないと」「……何が言いたい?」「こんな馬鹿なことはよしなさい。あなたも分かっているでしょう」「私たちはあなたの一部。そしてあなたもまた、私たちの一部。あなたの考えていることなんて、私たちがとっくの昔に通り過ぎたことなのよ」

「これは私の物語だ!故にあるべき事象に正さなければならない!この私が!」炎蔦のイルジの姿をとった混沌が、縫い合わせていた両目を解放した!ワイヤーフレーム時空の外でタピオカが爆発し、コーンはポップコーンとなり、中華鍋の中でチャーハンは踊り始める!瓶からCORONAが狂ったように湧き出し、カードダスからアイドルが無限に投影される!虚空に放り出されたかのような感覚!真紅と緑碧の極彩色が奈落の底から吹き出す!その中にあって、イルジは一切動じない。

「私は、ただの女イルジだ」イルジは、ゆっくりと両目を覆っていた布切れを解き、目を開いた。そこには卵石のような楕円の目があり、それだけだった。目に映る者全てを焼き滅ぼす邪眼の力はない。「力があろうとなかろうと関係ない。私は、私自身の足で歩む道を行く。どんな不条理な道であっても。あなたも分かっているはず。何故なら、私たちもあなたの想像から生まれたのだから」

「フゥー……だいぶ慣れてきたぞ……」A・Zがゆっくりと立ち上がった。「さっきから黙っていれば好き放題言いやがって」そのまま混沌に歩み寄る。「ア……ア……」次は影がおびえる番だった。その手には黒光りするリボルバーが握られている。

混沌は今やA・Zの腰ほどの大きさしかない。「アー、要するにな」A・Zは萎んだ影に言い聞かせるように話した。「会社にムカついたことも、辛い麺食って悶えたことも、東京をぶらついたことも、みんな糧になってるんだ。そのうちの一つでも欠けていたら、きっと今のお前はここにはいない」そう言うと、A・Zは影の頭を撫でてやった。「生き物を慈しむお前も、人間の醜さを憎むお前も、パルプを書いているお前も同じ人間ってことだ」混沌は幼稚園児の姿に変わっていた。

「こ、こ、こ……ぅ……」リボルバーを懐にしまう。「ああ、そうだな。でもな、人類を滅ぼすのはもう少し先でも大丈夫だって。俺もまだアイカツフレンズまで追いついてないし……」園児はコクリと頷くと、徐々にその輪郭が薄らいでいく。「ケッ、なんだもう終わりか?」麺棒男が重金属麺棒を肩に担ぎやってきた。麺棒にべっとりと付着していた極彩色も塵へと変わっていく。

「ひとまずは決着だ。それで、どうやって元の世界へ帰るんだ?」「見ろ。扉だ」クレイトンが未だ膝立ちしている男を指さしたサナギのように割れた背中から、扉が生えている。ギィ、とひとりでに扉が開き、まばゆい光が空間を埋め尽くし始めた。「時空が正位置に戻り始めたようだ」ストラウベリーの美しい金髪が論理風を受けてなびいた。

「タピオ!カーン!」「チャーハンネットワーク……チャーネットの気配を感じる」「ようやくコーンの恵みを得られるってワケだ。もうこんなへんぴな場所にいる意味はねえ」「これで無事にプリキュア総選挙をリアルタイムで観ることができる。僕らにとってこれ以上素晴らしいことは無いさ」「全くおかしな連中ばかりだったな」「そんなことより俺はさっさとCORONAが飲みたいぜ……」別れの時が近づき、みんなが思い思いのことを好き勝手に話始める!

やがて視界が真っ白に染まり、徐々に喧噪が遠ざかってゆく……それはまるで厳かな夜明けめいて……


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「……ファック!」机に突っ伏して寝ていた男は体を痙攣させ、飛び起きた。拍子に机の角に足の指をぶつける。「あだっ!」椅子を回転させながらぶつけた指を庇うように足を抱えると、男はバランスを崩し椅子から転げ落ちた。「いってえぞ、クソッ!」身をもたげ時計を見ると、時刻は午前5時30分、日付は10月1日。「やべっ、逆噴射小説大賞の参加要項、今日発表じゃん!」昨日の夜はネタ出しのため夜更かししていたのだ。

急いでnoteのタイムラインを確認すると、歴戦のパルプスリンガーたちが既にパルプ小説を投稿し始めている。こいつら、参加要項が発表されたばかりなのに何でもう書き上げているんだ。こうしちゃいられない。俺もーーー

「あん?」男はドアの方に人の気配を感じ振り返ったが、そこには誰もいなかった。「……気のせいか、っと」男は床に散らばったアイカツカードダス、業務用袋入りタピオカ、冷凍チャーハン、コーン粉、ミラクルライトを拾い上げた。「何でこんなところに落ちてるんだ?」その疑問に答えるかのように、窓から朝日が差し込んだ。

机の上に置いてあるパパが残してくれたピストルが日の光を反射し、一瞬、極彩色の輝きを放った後、銃身を誇らしげに黒く光らせた。


【THE END】


◆Starring◆


A・K

「エッ、ここどこ!?俺生きてる?」


ストラルベリー

「気分を損したら申し訳ない。皆、私のファンなんだ」


麺棒男

「後悔するぜ。お前ら、ぶっ叩いてタコスの肉にしてやる」


タピオ・カーン

「タピオォォ!カァーーン!」


炒漢

「わたしは炒漢。チャーハン神炒漢だ」


pre-cure

「彼をこれ以上怪我させたら、Pre-cureの名折れです」


炎蔦のイルジ

「視覚、思ってた以上に厄介かも……」


Endless practice

僕は毎日noteに400字小説を投稿し、数千日を過こした。


◆based on a story by akuzume◆


🌮🌯<<HAPPY BIRTHDAY!!!!>>🌽🍿


(終わりです)

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