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火を点けろ、お前自身の燃え残った心に。「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」感想(ネタバレなし)

「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」をクリアした。「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」や「ファイナルファンタジーXVI」など、2023年は大型かつ傑作なゲームタイトルが立て続けにリリースされているが、その中にアーマードコアも含まれるようになった。10年ぶりの新作、「一度生まれたものはそう簡単には死なない」 。そう豪語するにふさわしい素晴らしいゲーム体験だった。


「ARMORED CORE VI」は最高のロボットアクションゲームであることは間違いない。だが、誰にでもオススメできるゲームとは言えない。それはロボゲーというジャンル自体がややマイナーであることや、情報が氾濫している画面を正確に把握しながら最大四箇所の武器をリアルタイムで使い分け、瞬間的な移動を繰り返すカメラワークを乗りこなさなければならず、前提としてプレイヤーに要求するスキルの敷居が高いゲームであるからだ。

 特にチュートリアルのヘリからチャプター1のボスまでは、ゲームを始めたばかりのプレイヤーにとっては操作に不慣れなこともあって非常に難しい。マジでムズいと思う。ソウルやSEKIROを始めとする「フロムの死にゲー」のような強い印象を植え付けられるのも無理はない。おれも相当死んだ。死に過ぎて頭がどうにかなりそうだった。

序盤の山場どころか一週目で最も辛く苦しい戦いを強いられるバルテウスくん


 しかし、おれはチャプター3を乗り越えた辺りから"びっくりするほど死ななくなった"(当然ながら全く死ななくなったわけではない。理不尽な死が見るからに減ったということだ)。これは難易度がヌルくなったというよりも、操作に慣れ、落ち着いて画面を確認できるようになったことと、アセンの幅が広がって攻略に行き詰まっても即座に対策を立てやすくなったからだ。

 AC6の特徴として「ブリーフィング通りにいくミッションがほとんど存在しない」(「騙して悪いが」はもちろんのこと、想定外のイレギュラー案件が頻発するため愉快な遠足気分でいくと大概痛い目を見る)というのが挙げられる。探索任務としか聞かされていないのに最奥でデカいボス敵が待ち受けていたり、拠点防衛のはずが一対一のサシの勝負だったり、ブリーフィング内容を想定したアセンが全然見当違いで劣勢を強いられるパターンが少なくない。だが、その不利な状況を立ち回りで補い、見事撃破したときの達成感は半端ない。それは紛うことなきプレイヤーの熟練による結果だからだ。

 攻略の最適解としてショットガンの名前がよく挙がるが、ショットガンは単発武器ゆえに的確な射撃を心掛ける必要がある。これは射撃適正距離の認識(特にショットガンは散弾の軌道で分かりやすい)やASCゲージ(言わずもがなSEKIROでいうところの体幹のことだが、アレに比べれば遥か簡単に敵をダウンさせることができるので一括りにするのはやや乱暴である)を絶やさないためにリロード時間を考慮した射撃間隔が身に付くということで、つまり「スタッガーをキメて大ダメージを与える」というゲームシステムの理解に繋がる。ショットガンを使いこなすことが出来れば初心者は卒業だろう。ただ敵の攻撃を避け続けながら弾を垂れ流すだけでは勝てないのだ。この辺がアーマードコア6がロボット"シューティング"ではなくロボット"アクション"である所以である。

 前述の通り「スタッガーをキメて大ダメージを与える」がこのゲームの定石であるが、当然相手によってはアセンブルの有利不利がある。君はそれを熟達したプレイヤースキルで押し通ってもいいし、有効なアセンを模索して完膚なきまでに完封してもいい。そういったアーマードコアの真の面白さが見え始めてくるのは中盤以降だ。これが分かってくるとめちゃくちゃ面白い。


防衛ミッションは敵の総数や侵攻位置が読めないこともあり一発でクリアするのが難しい

 ただまあ、説明不足な面もある。何しろ本番チュートリアルが開放されるのはチュートリアルヘリを撃破してからだ。これはボスよりもACの機体制御のほうが難題になるはずで、ここで躓いてバルテウスで脱落したプレイヤーも散見される。死にゲーの彫り込みは十中八九ここが原因だが、今となっては「バルテウス、全然楽勝じゃね?」としか思えないので、やはりプレイヤーの上達と本格的なアセンブルの解禁(つまりパーツショップの品ぞろえが充実すること)がそのまま面白さに直結するゲームなのは間違いない。そこまで辿り着けるかどうかという意味では、やはり敷居が高いのではないか。

 安全地帯からミサイルやライフルを垂れ流すような生ぬるい戦いは一切許容されない。積極的に攻め、猛攻の合間を縫って銃弾をブチ込み、ダウンした瞬間を狙って瞬間的な火力を叩き込む。スタッガーさせれば相手の動きは止まり、フザけた攻撃範囲のブレードも強引に中断させることができる。攻め続けることがプレイヤーの延命に直結するのだ。

 戦闘の花形とも言えるボスもバラエティに富んでいる。前述のバルテウスや身の丈を遥かに上回る大型兵器や惑星封鎖機構の巡洋艦、非ACの人型ロボなど、それぞれ攻略の糸口が全く違い、ミッション毎にアセンを見直すきっかけとなる。クソデカいボスなら容易にブチ当てられるバズーカやグレネードも、ちまっこいAC相手だと簡単に避けられるから別の武器を背負っていく必要がある(当然君にはちまっこいACにバズーカやグレネードをブチ当てにいく選択肢もある)。

強敵を撃破した瞬間は「シャッターチャンスですよ!」と言わんばかりにスロー&ズームアップ演出が入る。めちゃくちゃ気持ちいい



 鉄と鉄が激しくぶつかり合い、数多のミサイルが火の華を咲かせ、レーザーライフルの軌跡がネオンのように光り輝く。いつの間にかACの複雑な操作に適応したお前はその戦場の景色を見て思うはずだ。”美しい”と。

インゲーム映像としては最高クラスのグラフィックも素晴らしい。あらゆるシーンが美麗だ



 物語の話もしておこう。基本的にはミッション→通信・会話→次のミッションという流れで非常にシンプルに進み、ゲーム体験を阻害することは一切無い。ストーリーの転調も主にミッション内のボス敵の出現などといった演出でなされるため盛り上がりに一役買っている(そしてブリーフィング内容は裏切られる)。登場人物はシリーズの伝統でビジュアルは存在しないが、どいつもこいつもボイスだけでも個性的な連中ばかりで、キャラ立ちは文句なしと言える。何しろ違法と分かった上で密航してきたやつや封鎖地域に居座っているやつばかりなのである。そんなやつらが騙し騙され、出し抜き、時に協力し合うというストーリーが面白くないわけがない。個人的にはゴールデンカムイを想起する。

ルビコン3は極限状況下なので様子のおかしい人間も少なくない


 話の中心となるのがコーラルという夢の新物質である。コーラルは単なるマクガフィンではなく物語の根幹を成す重要な存在でもあり、そのことはプレイヤーの脳内に聞こえる不可視の声「エア」の口から語られる。ここでは多くは語らないが、これは非常にSF的な要素であり、ソウルやSEKIRO、エルデンリングを経たフロムが作り上げたアーマードコアの完全新作に相応しいテーマだ。

シリーズのリブート作に相応しい設定、ミッション、シチュエーションに溢れている

 他にもフィールドにデータログが落ちていたり、世界観自体に興味をそそられる要素も多分にある。ちなみに今作は歴代作品のオマージュが多いが、世界観は完全に独立しているので完全新規でも全く問題ない。おれもPSP作品から久方ぶりに帰還した人間だ。操作感とかも全然違う(むしろPSPのボタン数でどうやってACを動かしていたのか全く思い出せない)。

 複数の勢力が入り乱れるルビコン3の戦局は激しさを増し、遂には一方の陣営に味方する選択ミッションという形で物語は分岐していく。プレイヤーはどちらかのミッションを選ぶことでしか意思表示できない。戦闘が始まれば共に愉快な遠足へ行った戦友であっても、ターゲットサイトにロックすれば殲滅するしかない。なぜなら、殺し合うことでしかお互いの気持ちを伝える事ができないからだ。

最大の驚きは主人公の雇用形態が劇的に改善されたことだ。休暇はもちろん労災まで下りる


 気になった点はキャッチーなサウンドがあまりないくらいだ。これまでもヒロイックな4系や重厚な5系、それ以前はテクノサウンドがメインだったように、アーマードコアの音楽はシリーズによって大きな振れ幅がある。今作はヴァンゲリスを思わせるSFシンセが特徴的であり、ゲーム内容自体には完璧に合致しているため、あくまで好みの範疇だろう。個人的には6の楽曲を含めたFreQuencyの新譜をリリースして貰えればファン冥利に尽きる。

「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」は誰にでもオススメできるゲームとは言えない。だが、最高のロボットアクションゲームであることは間違いない。それはロボゲーというジャンルそのものを根底から押し上げ、複雑な操作系をマスターし強大なボス兵器を撃破する快感を提供してくれるものだ。

火を点けろ、お前自身の燃え残った心に。そして他ならぬお前自身の目で。ルビコン3で繰り広げられる壮絶な戦いの顛末を見届けるのだ。


(終わりです)

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