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食レポ:完全無欠のスーパーゴールデンカリー炒飯(大阪王将のメニュー)


その日は休日だったが、仕事日と同じ時間に起床した。

ベットから身を起こして軽く伸びをすると、洗面所で顔を洗い、ダイニングへ向かう。
食パンにベーコンスライスチーズを載せ胡椒を少々ふりかける。トースターでパンを焼く間に冷蔵庫からコーヒーのボトルを取り出しコップについだ。そうだ、と振り返り再び冷蔵庫からカップヨーグルトを手に取る。
今日の朝食はベーコンチーズトーストとアイスコーヒー、ヨーグルト、そしてバナナ丸ごと1本だ。朝に食べるにしては、久しぶりのしっかりした量の食事である。
普段なら朝はそこまで食欲はないのだが、今日は問題なく食べ終えることが出来た。これなら大丈夫そうだ。

朝食が腹に”馴染んだ”頃を見計らって、スポーツウェアに着替えるとランニングに出た。
最近は忙しくてなかなか走りに出られなかったせいで、いつものコースがきつく感じる。やっぱり週に一度は走る習慣を取り戻さなければ。
息切れを起こさない程度で走り続け、心地よい疲労感を覚えながらシャワーを浴び汗を流す。髭を剃り、髪を乾かすと、いつもの休日より少し洒落た服を着る。
鞄に財布や携帯、もしものための折り畳み傘を放り込むと、車に乗り込んで走り出す。車内では「アウイエー」とご機嫌にピロウズが歌っている。
目的地までは小一時間。空はどんよりと曇っている。雨が振り出さなければいいが。

昼時の店内は喧騒に満ちていた。
順番待ちの後、カウンター席に通されると、メニューを一瞥する。水を持ってきた店員に料理を注文する。
嗚呼、ついにこの時が来たのだ。待ちに待ったこの時が。
平時より数倍に引き伸ばされたような待ち時間ののち、それは私の前に姿を現した。

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完全無欠のスーパーゴールデンカリー炒飯、という。

スパイシーなカレー炒飯にチキンカツと禁断のタルタルソース。さらに牛カルビとカレーソースのコンボで究極のゴールデン炒飯が完成。どこから食べても主役級の美味しさ!

もはや炒飯の姿は何処にも見当たらず、撒き餌に殺到したかのようなチキンカツの群れと、どろりとしたカレーソースにまみれたカルビ肉が我が物顔で皿の上に鎮座していた。その頂点に我が物顔で寛ぎ座すのは白濁したタルタルソースと刻みねぎ。


大阪王将が50周年記念に生み出した狂気の怪物。

その名を、完全無欠のスーパーゴールデンカリー炒飯、という。


具材をかき分けるようにれんげを差し入れる。
カレーソースが雪崩のように分け目に流れ込んだ。同様に転がり落ちてきたカルビ肉の塊とともに炒飯を口の中に放り込む。まずは一口。

堰を切って悪魔たちがなだれ込む。
チキンカツ、炒飯、カルビ、チキンカツ、タルタルソース、炒飯。恐るべき連撃により胃の均衡が崩れ始める。水を飲み、一度距離をとる。
一緒に注文していた餃子スープが不気味に存在感を示し始めた。下した連中は無にはならない。奴らは腹の中で今か今かと機会を伺っているのだ。何の機会だって?考えたくもない。今でも仕留め損ねた餃子が肉汁を撒き散らしながら胃の中を暴れ回っている。
長く息を吐き、再びれんげを構える。仕切り直しだ。

炒飯、カレーソース、カルビ、チキンカツ、餃子を挟み、キャベツの添え物、チキンカツ、炒飯、たまごスープ、炒飯、カルビ。
私は徐々にやつの動きに対応し始めつつあった。
最後の餃子を食いちぎると、一瞬の隙を突き、れんげを縦横に走らせ、残りの炒飯を掻き集める。
取ったーーー私は残りの炒飯、カレーソース、チキンカツの残骸をれんげですくい取り、一思いに丸呑みにする!ザクザクした衣がカレーソースと溶け合い、炒飯がすり潰されーーー嚥下した。

決着だ。

いや、まだだ。腹の中で暴れ回らんとする悪魔を鎮めるため、たまごスープを飲み干す。徐々に抵抗が弱まっていく。残心。ぐるる、という消化音が体の中に響いた。
よし、”馴染んだ”ーーー私は人知れず凄まじい笑みを浮かべると、最後に水を一口飲み、会計へと向かう。

「1770円でーす」

店の外に出ると、地面が濡れていた。どうやら店内にいるうちに雨が降っていたようだ。未だどんよりと危うい空模様の下、私は車に乗り込む。

そして、次なる獲物を求めて、アクセルを踏み込んだ。


正式名称:完全無欠のスーパーゴールデンカリー炒飯
生息域:大阪王将
出没期間:2019年9月17日(火) ~ 2019年10月31日(木)
創業50周年記念メニューとして期間限定販売されている、大阪王将の完全無欠すぎるメニュー。カレー炒飯の上に牛カルビ、チキンカツがどかどかと鎮座し、その上にカレーソース、タルタルソース、そして申し訳程度のネギが乗っかった男子中学生ズの権化。料理において「皿が大きいだけの見掛け倒しの量」はよく知られているが、「通常の皿の大きさのはずがやけに小さく感じる」という正反対の性質を持ち、その妙にこじんまりとまとまった見た目からは想像もつかない物量を秘めている。大盛り無料という悪夢の誘いに乗ってはいけない。めちゃくちゃ美味しい。




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(ごちそうさまでした)

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