見出し画像

Kindleで『ジョゼと虎と魚たち』を読んだ

 Kindle Unlimitedで無料になっていたので『ジョゼと虎と魚たち』を読んだ。
タイトルについては何年も前から知っていたのだが、内容についての知識はゼロだった。
読み始めて驚いたことは、この作品は短編小説だということ。
映画化された作品なので160ページ近くはあると思っていたが、40ページで完結していた。

次に驚いたのが、この作品が1984年に書かれたということ。
作品について調べるまで、30年以上前の作品とは気づかなかった。
軽やかでテンポの良い文体はライトノベルに近いものがあり、ジョゼのキャラが立っている。
ただ、話が短いため、最後は「ここで終わり?」という唐突さは感じた。
(映画化やアニメ化されているのは、話を膨らませる余地があるから?)
しかし、印象的なシーンやセリフはいくつかあったので、上げてみたいと思う。
※Kindleは複数の人が良いと感じた箇所にハイライトが入っている。

「帰らんといて。もう、三十分でも居てて。テレビは売ったし、ラジオこわれてしもたし、アタイ淋しかったんや……」「何や。僕、テレビやラジオ代りかいな」「せや。このラジオは返事するだけマシや」

同居していた祖母が亡くなり、安アパートへ引っ越したジョゼが、久しぶりに主人公が再会した時のセリフ。
ツンデレ系ヒロインが、寂しさを見せるシーンはツボに刺さった。

「一ばん怖いものを見たかったんや。好きな男の人が出来たときに。怖うてもすがれるから。……そんな人が出来たら虎見たい、と思てた。もし出来へんかったら一生、ほんものの虎は見られへん、それでもしょうない、思うてたんや」

55人がハイライトしていたジョゼのセリフ。
タイトルに繋がっているの気づいた時はハッとさせられた。
個人的にはここが一番好きな箇所で、しばらく頭から言葉が離れなかった。
この作品は、ジョゼの人間としての弱みを見せるシーンがホントに上手いと思う。
あとは、学生生活が忙しくなった主人公が、ジョゼ達と疎遠になるところは現実的で説得力があった。
綺麗なシーンだけでなく、現実の厳しさを織り交ぜるところが作品の奥行きを出していると感じた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?