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お金がなければお金を貯めて149を買いなさい

モンブラン・マイスターシュテュック149を買った話をする。

まず、モンブランという万年筆の存在を知ったのは
それでも町は廻っている』というマンガの2巻第13話に収録されている「それでも町は廻っている 前編」を読んだことに始まる。


この回で主人公は何を思いついたのか、叔父から貰ったモンブランのキャップに虫眼鏡を付けるという魔改造を行っている。
内容は尾栓をカットして接着剤で虫眼鏡をくっつけるという大胆なもの。
(万年筆+虫眼鏡で万年虫と呼んでいる)

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本人は特許モノの開発だと喜んでいるが、ルーペ付きのペンは年寄りの間では有名な商品というオチ付き。
この後に主人公はモンブランの値段を知り悶え苦しむのだが、顛末が気になる人は単行本を読んで欲しい。

ちなみにこのアイテムは作者のお気に入りのようで、フィギュアの小物としても付属している。
小道具として万年筆が付いているのは、このフィギュアくらいではないだろうか。

1.開高健の本に出会う

モンブランについての情報収集をしている際に、オススメされた一冊。
「万年筆の本・5選」でも取り上げたが、開高健の『生物としての静物』の中にモンブランについての話が登場する。
ページ数としては10ページ程度の長さだが、モンブランを買おうか迷っている人は絶対に読むべきである。
この本は値段で足踏みしていた私の背中を押すキッカケとなってくれた。

2.大須のペンランドカフェへ行く

モンブランを欲しいと思いつつ、踏ん切りが付かなかった一番の理由が
メンテナンス体制である。
リシュモングループに買収された後のモンブランは、ペンクリニックでのメンテンスを受けることができない。
(モンブランお断りと書かれている場合が多い)
しかも、正規店のメンテンスはペンクリニックに比べると高額である。
そこで色々と調べているうちに、名古屋・大須の「ペンランドカフェ」という店を知ることになった。

元々はカフェと万年筆の販売を並行して行っていたお店である。
現在はヴィンテージ万年筆を中心に販売しており、店名にのみカフェの名残がある。
このお店では年に数回「モンブラン・フェア」という年代別のモンブランを試筆できるフェアを行っている。

物は試しで入ってみると、70年代から現行モデルまで10本近いモンブランが並べてあり、試筆をさせてもらえた。
※百貨店などではインク入りの万年筆で試筆はできない場合が多い。

書き比べた感想としては、同じシリーズでも年代毎に書き心地が異なり、現行モデルはボールペンのように書き心地が硬い。
それに対して、80年代のモデルは筆に近い柔らかさがある。
事前に「モンラブランは80年代までが良い」という評判は聞いていが、試筆をして確信に変わった。
気がつけば80年代モデルの149ばかりを手にとり、紙にの文字を書いていた。

「これ下さい」

モンブラン マイスターシュテュック 149(80s)F字 88,000円
漢の一括払いである。
まさか自分よりも先に生まれた万年筆を買うとは思ってもいなかった。
ヴィンテージに手を出すのも初めてである。

ちなみに店主は字幅変更や修理も行える職人のため、店が続く限りメンテンスは安泰である。
(1910年代のオノトも再生する程の腕の持ち主)
You Tubeでチャンネルも開設しているので、見ていただきたい。

3.神戸のペンアンドメッセージで細字に変更

一括払いで手に入れたモンブランだが、字幅が国産の細字に比べて太いため神戸の「ペンアンドメッセージ」で字幅加工を頼むことにした。
今思えばペンランドカフェで頼めば良かったのだが、仕事で神戸に行く機会があり、雑誌で目にする名店を訪れてみたいという理由だった。

店内は省スペースだが、厳選された万年筆が陳列されている。
ファーバーカステル、アウロラ、ヴィスコンティ等、舶来万年筆を主にガラスケースの中へ収められていた。
じっくり見ようと思ったが、目的を忘れそうになるので早速モンブラン149の字幅加工をお願いした。
太さに関しては手持ちのパイロットと被らないMとFの中間を選んだ。

加工の作業自体は20分程度だったが、著名な吉宗さんが目の前で自分の万年筆を調整してくれている事に感動した。
そして、調整中はペリカンスーベレーンM400(調整済み)を試筆させてもらった。
インクはペリカンのロイヤルブルーで、どのペンも筆圧をかけずにスルスルと書くことができた。
調整のために訪れたのに、ペリカンも欲しくなってしまった。

調整完了後は何度か書き心地をチェックし、字幅加工は完了した。
最後にファーバーカステル ギロシェでメンテンスカードにサインしてもらい、店を後にした。

4.そして相棒に

こうして、自分の149は一応の完成を迎えた。
県を跨いだり、ペン先を調整したりと、想像以上にお金がかかってしまった。(笑)
あとは、老朋友となれることを信じながら使い続けるだけである。

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