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変わってしまった世界と希望の話

この状況下で開催されたプリパラ&プリチャンライブで感じたこと、そこから見えたもののお話。

これは #プリッカソン Advent Calendar 2020 - Adventar の6日目です。

プリパラ&プリチャン ウインターライブ2020。
そこでプリパラのアプリ、そして新しいアニメの制作が発表された。
その発表を聞いて、ぼくは現地で思わず泣いてしまった。
でも、涙したタイミングは発表の瞬間ではなかった。
その後の、今後の話をしている茜屋さんの「いいことがありますよ」という何気ない言葉を聞いた時だ。
それはただ、この後も定期的に新情報を公開していきますよ、という単なる宣伝の言葉に過ぎないのに。
その理由が知りたくて、ライブ当日のできごとを振り返ることにした。

久しぶりのリアルライブ。幕張に来たのは一年ぶりになる。
待ち合わせしていた友人と合流。
友人と会うことすら久しぶりだ。この一年で、人と会うことが本当に縁遠くなってしまった。

会場に入る。
去年と同じ会場なのに、光景は一変していた。
前回のウインターライブは物販に並ぶ人がいっぱいいた。認定試験にも行列ができていた。
それが今はどうだ。待ち合わせする人がちらほらいるだけで、会場前は閑散としている。

閑散としている理由は物販がないだけではない。
入場は時間を分けて、少しずつ入れることになっているからだ。
なくなった行列とは対照的に、スタッフさんの数は増えていた。
機械を額にかざして検温。手にアルコール。
去年は想像すらせず、そして今は当たり前になった世界。

入場。しかしゲートを越えた先にも、何もない。
去年はプリッカソンでフラスタを出した。ギリギリまでホテルでデバッグして、当日はみんなで試したり写真撮ったり落ちないかハラハラしたり。とにかくライブ前の自分たちのお祭りを楽しんでいた。
しかし今回、フラスタはない。禁止になったのだ。
様々な趣向を凝らしたフラスタ、それを見て回りながら写真を撮る参加者たち。その光景は皆過去のものになった。
出演者宛のプレゼントボックスにどんなものが入っているのか覗いてみたり、プロモーションカードを受け取ったり。
そういった、人にものを渡したり貰ったりといった行為も、すべてなくなった。

チケットに書かれた席を見つけて、座る。
座席が一つ飛ばしになったおかげで余裕ができたのはありがたい。
今では無意識のうちに人との距離を意識するようになった。昔の詰め込まれ間隔にギョッとすらしてしまう。
新しい常識、とはつまりそういうことなのだろう。

ライブが始まる。
立ち上がり禁止。声だし禁止。それがこの時代のリアルライブだ。
できることはペンライトを振ることと、拍手をすることだけ。

「ハートフル♡ドリーム」が始まった。今までなら会場一体となった合いの手でテンションがぶちあがる曲。
しかし声は出せない。まるでクイズゲームで間違えた人のようだ。
マスクをつけられて、次の問題のあいだじゅう話せなくなるというアレだ。
これが罰ゲームだというのなら、我々はどんな間違いを犯したのだろう。

その後も、かつてならコールしたり歓声を上げたりした大好きな歌たちが、どんどんやってくる。
演者のものすごい熱気だけは、昔と変わらない。いや、それ以上かもしれない。
なのに観客は声を出せない。こうまで沈黙を強いられると、そのうち人は声の出し方を忘れてしまうのではないかとさえ思う。

曲が変わるたびにペンライトの色を変える。
曲に、アイドルに合わせて色を変え、合わせ終わった者から参加する。
席が一つ飛ばしになったから、ペンライトの光も半分。
それでも、家で配信を見るのとでは見える世界は違う。
配信ではコメント欄越しに、あるいはSNSを通して同じライブを見ている人たちと繋がっていた。
リアルライブでは、光を通して同じファンとつながる。皆必死にライトの色を変え、少しでも気持ちを伝えようとペンライトを振る。声は出せないけど、ぼくたちは確かにここにいる。
「チクタク・Magicaる・アイドルタイム!」が始まった。昼はライトの色を変えるのに夢中で間に合わなかったが、夜は無事に歌いだし前の手拍子に間に合った。
手拍子を一斉に合わせる気持ちよさは、昔と同じだ。声を失っても、変わらないものもある。

そして、アプリとアニメの告知。
「さよならだけど、さよならじゃない。」
そう言い残しながらも、プリパラは最終回を迎えた。
ずっと終わらないでと思っていた。けれど前に進むために、当時のぼくはなんとか気持ちに区切りをつけた。
(気持ちの整理をつけるために、きらきらメモリアルライブの映画は五回見に行った)

それなのに。
プリパラは帰ってきた。死んだと思った人が生き返った。そんな夢のようなことがあるのか。
確かにプリパラは夢がかなう場所だ。終わってからもライブは続き、夢を見せてくれていた。新曲もあった。
でもそれは、現実ではない、いわば幸せな夢に過ぎないと思っていたのに。
しかし、これは夢じゃない。あのプリパラが「本当に」帰ってくる。とびきりの吉報だ。

思えば、今の世界で耳にするニュースは、悪いものがほとんどだ。
しかも状況は悪化する一方。世界はこれからますます悪くなる。そんなことが当たり前になろうとしていた。
そんな中で、プリパラの新作は純度301%の良いニュースだ。
しかも根拠のない慰めではない。確信をもって待てる、これからが楽しみで仕方のないニュース。

改めて振り返る。
思えば今日のライブでも、昔と比べ(悪いほうに)変わってしまったところに意識が向かい、変わらずに残ったものに安堵ばかりしていた。

「いいことがありますよ」

ようやく、理解した。
それは希望だ。
ぼくは、その言葉に希望を見たのだ。
長らく見失っていた、キラキラに輝く明日への光。だからこそ、涙したのだ。

世界は変わってしまった。
それでも、変わらないものもある。そして希望はそこにある。
今が暗闇でも、この先にもっと闇が待っていたとしても、その先にはきっと光があるのだ。

最後に、はやまるはこう聞いてくれた。
「プリティシリーズは好きですか?」
会場で声は出せなかったけれど、みんなの答えはちゃんと聞こえた。みんな、その答えを知っているから。

「なら大丈夫」

変わってしまった世界でも、こうやってまた、ライブが開けたのだから。


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