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こばちどり清

友達二人が協力して、たくさんの力を借りてお店を出しました。
「こばちどり清」という、小鉢と焼鳥のお店です。
先日、関係者試食会にもお邪魔させていただいて、二人が提供してくれる時間が幸せで満ち溢れていて、帰り道1人で少し涙が出ました。

めっちゃお出汁染みて美味しかった。柔らかい中に小エビの食感もよかった。
つくね、ほんとに美味しい。何か言うのは勿体ないくらい。
お出汁とからしの香りが美味しかった。香りも美味しい料理が出る。
焼鳥も本当に美味しい。提供の仕方も素敵だった。

助と清大さんとはもう、すごく長くて濃ゆい時間を過ごしているような気がします。
それは私だけではなく、みんなもだとは思いますが。

助と初めて会ったのは大学の入学式でした。
私は高校にも行かず家に引きこもってばかりいた子どもだったので、「ナメられたくない」というアホみたいな理由で髪をシルバーに染めて行きました。
するとそんな派手な髪をしているのは会場で私だけで、なんとなく「ヤバいことしてしまったかも」と不安で立ち尽くしていたところに助はやってきました。彼女もシルバーの髪で。
「同じ髪色じゃん!」と笑う彼女にとても安心感を覚え、入学式を隣同士に座って終えました。
でも私はそれまで人と関わらない時間の方が多かったため、優しくされることに急に不安を覚え、彼女が家族と話をしている隙に逃げるように帰ってしまいました。
それでも彼女は次の日、責めることもなく「なんで帰っちゃったんだよ!」とまた笑顔で話しかけてくれて、ぐしゃぐしゃのハッピーターンまでくれて、一緒にサークルの見学に行こうと誘ってくれました。

それから私たちは同じ授業をとって、同じ軽音サークルに入って、同じバイトをして、私にとって初めてのオリジナルバンドも組みました。
THE JET-MANS(仮)。
JET-MANSは私が考えて、THE (仮)は助が考えて。
ジェットマンズをしていた時の私はとても横暴でした。
練習に遅れてきて、曲が上手いこといかないとぶすーっとして、ライブ当日に出たくないと駄々こねて、ライブ中にメンバーを睨んだり蹴ったり殴ったり、褒めてくれたお客さんに向かって愛想悪くしたり。
それでも助は「あずまんが作った曲と演奏はあずまんの感情が爆発してるから良いんだよ」と言ってくれました。
でもやっぱり私は彼女の優しさが時折怖くなって、やっぱり最後は逃げ出してしまいました。
それから数年、私は助に会いませんでした。なんなら無礼なことも沢山しました。
でもしばらくして久しぶりに会ったとき、彼女はやっぱり優しく受け入れてくれました。
こんなにアホみたいに優しい奴、幸せになってくれないと困るなと、仲直りの握手をしているときに思ったのを今でも覚えています。


清大さんとは助とバンドをやっているときに初めて会いました。
彼もまたぶすーっとしている人でした。
数年経って当時のお互いの恋人がお互いの友人だったこともあり、「会ってみてよ」と言われて2人ともぶすーっとした顔で、やきとり騎射場で再会しました。
清大さんは国語が好きだという話をして、私は数学が好きという話をしました。
でも、私本は好き。と言うと、彼は町田康の「告白」を勧めてくれました。きっと君も何かを感じるはずだと。
帰って、読み終わって、これからは彼にたくさん会おうと思いました。
ちょうど私たちは鬱が酷い時期でした。
2人ともやせ細って、仕事もなんとかという状態で、それでも外には出ようかとたまにやつれた顔でコーヒーを飲みに行ったり、一緒に映画を見たりしました。
2人でいるとき私たちに会話はほとんど無くて、たまに飲み物を飲む音と、ライターをつける音がするくらいです。
そして帰る頃に二言三言、映画を見た時は少しの感想を言い合って、じゃあと帰りました。
それでも私はなんだか楽しくて、でも彼は楽しいのだろうかと不思議に思っていました。

そんなときに彼が「その日暮らしのスタッフをしてくれないか」と言ってくれました。
悩む間もなく、すぐにいいよと答えて、その後にメンバーにも知らせたように思います。
それからはもうずっと笑ったり泣いたり怒ったり、どんな時間も一緒に共有しました。
思えば助と仲直りの握手をした日は、彼の誕生日会かなにかだったと思います。
「お前らが仲悪いのうぜえからよ」とぶすーっとして言う彼もまた、アホみたいに優しい人なのです。
私はこの人が生きてさえいてくれたら、それだけで生きていけるなと思いました。


THE JET-MANS(仮)
5年前、2人とも痩せてる


清大さんがお店を開きたいという話をしてくれたとき、「一緒にやるのは助がいい」と言ったとき、とんでもなく面白そうなことになったなと思いました。
私の18歳からの人生は主に2人に寄りかかりながら生きてきていたので、そんな2人が新しい夢を実現させようと力を合わせるなんて。
そんな夢のタッグマッチみたいなことあるのかと。
だから、先日の関係者試食会で、2人が不安そうな顔をしながらあくせく働く姿を見たときに、私の祈りみたいな夢もまた叶ったような気がしてとても嬉しかったです。
そんなに不安にならないでとも思いました。
きっと2人には不安になるな!なんて無理なのは分かっているのですが、でも不安にならないで大丈夫だよと思います。
2人がアホみたいに優しいことを知ってるのは、きっと私だけじゃないからです。
優しいだけで飲食店やれるか!とかそういう話でもなくて、でも優しくないと人にご飯食べさせることを仕事にしようなんて思わないとも思うし。
2人が「ごはんを食べてもらうのが好きだから」「この人となら頑張りたいから」というアホみたいに優しい気持ちで始めたお店です。
きっと、きっとたくさんの人が愛してくれることでしょう。

こばちどり清、2023年3月16日オープンです。

清大さんのSNSから

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