お祈り

私には毎日お祈りを欠かさないような厳格なムスリムの友人がいない。

泊まっているゲストハウスの後ろがモスクだったので、毎朝4時半から5時の間に大音量のアザーンが聞こえてきた。もちろんそんな時間に起こされてもめちゃくちゃ眠いし、仕事で来ているからきちんと寝たいわけで、ばっちり目が覚めてしまった最初の日なんかは、これはなかなかきついなあと思ったのだった。とはいえ毎朝なので後半は慣れてきて、なんとなくああアザーンだなと思ってまた眠ることさえできた。帰国の日にいたっては、早朝フライトで早起きしていたのになぜかアザーンが聞こえなくて拍子抜けしたぐらいだった。

仕事場のそばにはモスクがなかったので昼間はアザーンを聞くことはなかったけど、一度だけ午後のお祈りの時間に大きなモスクのそばを通った。割れるようなマイクの音でお祈りが鳴り響くモスクに人々が静かに吸い込まれていくのは、予想を超えた美しい眺めだった。モスクにはこれまで何度か行ったことがあるけれど、この営みが遥か昔から現在まで、しかも広い世界のいろいろな場所で毎日規則的に続けられているという事実を肌身で感じたのはこれが初めてだった。

毎朝のアザーンが私に共鳴するリズムのようなものを与えたのかもしれない。それはスケールが大きすぎてまるでうねりのような、自分ではどうしようもない何か大きなものにつながるもののような気がする。神様の名前は気にならない。

読んでくださってありがとうございます。頂いたサポートは、私が新しい何かに挑戦するときに使わせて頂きたいと思います。そのお話は、きっとまたnoteで!