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【井戸尻考古館】夏の縄文体験レポ(2022.8.6)

はじめに

 富士見町の井戸尻考古館では恒例のイベントのひとつに、春と夏に「縄文体験」があります。本年は8月6日(土)、7日(日)の2日間にわたり行われました。感染対策のもと、2年ぶりにこれまでと同等規模の開催内容となりました。
 この2日間は猛暑も少しゆるみ、晴天に恵まれ、比較的過ごしやすい中で行われた、井戸尻の縄文体験イベントを紹介いたします。

いつもと違う活気

 いつもは静かな考古館も、この日ばかりは違った雰囲気になります。芝生広場にはのぼり旗が翻り、テントが立ちます。駐車場にはいっぱいに車が並んでいます。
 この日は、井戸尻考古館とお隣の歴史民俗資料館の入館が無料となるため、常に人が出入りし、考古館の中は見学者が絶えません。外では縄文体験が行われます。すべて無料で一日楽しめます。

素朴だけどワクワクするチラシ

飾り玉づくり

 駐車場から来て最初に目に入る大きなテントの中にテーブルが並んでいます。飾り玉づくりのテントです。教えて下さるのは、普段は出土品の整理や記録などをされている職員のみなさんとH学芸員です。スタッフは職員のほかに実習や発掘の大学生、有志のお手伝いなども加わっていて、考古館を上げての行事となっています。
 飾り玉づくりですが、ロウ石と呼ばれる、やわらかい石を、ひたすらザラザラした石盤でけずり形を作ります。定番の勾玉型、はたまたハート型、三角錐など思い思いの形に削ります。ここで使用しているロウ石は天然のため、削っているあいだに模様が出てきたり、磨くと色合いが変わったりします。そんなことも楽しみ方のひとつです。
 次に砥石で磨いて大体になったら、紐を取り付ける穴をあけます。スタッフと穴の位置を決めて、黒曜石を取り付けたキリでぐりぐりと穴をあけます。穴の位置によってはせっかくの作品が割れてしまうので、見守るスタッフも緊張です。
 見事穴が貫通したら、スタッフが「勾玉しばり」で紐をつけてくれて飾り玉の完成です。

テーブルでロウ石を削ります、テント左ではスタッフが紐をつけてくれています。
磨きの甘い「飾り玉」と作りかけの黒曜石の破片(筆者)

矢じり作り

 奥の小さいテントではけっこう大人が集まっています。「矢じり作り」です。大人がはまるのはこちらです。教えて下さるのはS学芸員。
 黒曜石のかけらを鹿のツノでプチプチと欠きとって矢じりの形を作ります。結構力と時間がかかります。そもそも思うようには欠きとれません。

まだすいている午前中から始めるのがベスト

 削るのではなく力を加えて、引っかけて、ガラスの層を剥がしていくのだとか。そのためにまずは、黒曜石のかけらをまずぐるっと一周すべてはがしとってから始めるのですが、初期段階で筆者はギブアップ。
 あと黒曜石ですが、不透明な黒いまだらの黒曜石を使っています。透明な長野県和田峠の黒曜石とはまったく色が異なります。もし間違って黒曜石をそこらあたりに落としてしまっても、縄文の遺物と間違えないようにするためだそうです。この縄文体験は曽利遺跡の上でやっているのです。

火起こし

 リクエストがあれば「火起こし」もできます。チャレンジしているご家族どうしのグループがいました。
 もみ切り式というやりかたで、木をこすりつけます、摩擦熱を上げていきます。休まずに交代で木をこすり続けると煙が出てくるので、細かい木くずにつけて、腕をぐるんぐるん振り回すと、一気に火が燃え上がります。
 煙が出てくると見物人が集まり始めます、そして、火がつくと周囲から大拍手です。

丸木弓の的あて

 考古館の建物裏の縄文農耕の実験畑の隣で、段ボールで作った動物の的目掛けて弓を放ちます。教えて下さるのはH前館長。
 子どもたちには人気コーナーです。二日連続で来てしまった「つわもの」もいるとか。

弦と矢は現代のものですが、弓本体はイチイの木

 弓にはイチイの木を使っているとのこと。天然木のためかなり個体差があって狙った「獲物」に矢が当たりやすいものとそうではないものがあります。

親子が挑戦中


 すぐとなりの敷地にブルーシートがかけてあるトレンチは発掘中の曽利遺跡です。

曽利遺跡に2本のトレンチ

ぼろ機織り

 歴史民俗資料館の中では、紅蓮織りの会のみなさんの指導による機織り機を使った、ボロ織り体験をしています。

次のお客様のため指導の方が準備しておりました

 古い布を裂いた紐を横糸にして、布を織ります。だいたい一人30分の時間で15センチの幅の布を織る体験です。会場の後ろには、紅蓮織りの会の作品も多数展示されていました。

おみやげ

 帰りに「蓮の葉茶」をいただきました。
史跡公園にある大賀ハスの葉を乾燥させたもので、ヤカンにいれて煮だせばお茶として飲めます。少し甘みある紅茶のような色をしたお茶になりました。時間経過とともに、鉄分が酸化して紅茶のような赤色に変化します。

レシピの紙とハスの葉

おわりに

 以上、井戸尻の縄文体験を紹介しました。例年より多くのお客さんだったようですが、体験イベントの多くは事前予約と定員制となっているところが多いなかで、井戸尻では予約なしと聞いてこられた方もいたようです。
 ところで、K館長による「縄文人」は現れませんでした。筆者の想像するところ、この縄文体験は参加者自身が縄文人になり、体感するイベントだから「縄文人」は現れないのではないでしょうか。でも、時々外の賑やかな声に誘われて、井戸尻ポロシャツを着た館長が様子を見に来ていたようです。


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