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音で見るドラマ

毎週楽しみに見ていたドラマ「緊急取調室」が先日最終回を迎えました。最終回はCMの度にTwitterのタイムラインで、たくさんの人と一緒にハラハラしながらストーリーを追っていました。今回がシリーズ4作目なのですが、他のシリーズも見たくなり、時間を見つけて見返しています。好きな作品の世界に没頭して、改めて私は「音でドラマを見ている」ことを感じたので、具体的なエピソードを交えて書いていきます。最新シリーズをどうやって見ていたかは以前のnoteで書いているので、こちらを読んでもらえると嬉しいです。


音だけでは絶対に分からないシーン

音だけでは絶対に分からない部分は、動きと映像で話が進んでいくシーンです。最新話のnoteに書いた友人のKさんが、過去の作品の質問にも答えてくれました。
(以下ドラマのネタバレになります)
たとえば、大切なポイントが動きで説明されている部分にはこんなシーンがありました。

事件に大きく関わっている人が青酸カリの入ったお酒を飲んで自殺未遂をするシーン。部屋に入った刑事二人が倒れている人を見つけて言った台詞。

「青酸カリだ!」

これまで追っていたストーリーがここで途切れてしまいました。どうして青酸カリだと分かったのかが画面を見ていない私には分からなかったからです。後から教えてもらったところによると、刑事の一人がコップの臭いを嗅いでいたとのこと。一つの動きを教えてもらったことで、また話が流れ始めました。

台詞が全く入らず、映像だけで話が進むシーンにはこういうものがありました。
廊下に響くヒールの音。シーンは切り替わって自宅。
「お花?どうしたの?」
という台詞。
これは、お見舞いに持って行ったお花を渡せずに持ち帰り、それを見た家族が言ったものでした。音から得られる情報は靴音と台詞のみです。どこにいるのか、何を持っているのかが全く分かりませんでした。

音だからこその勘違い

音で聞いているからこその勘違いもありました。ミスをしたことで部署を異動することになった上司と主人公のシーン。

「全て自分の責任です」

という主人公に

「かみ…。やめるわけじゃないだろうね」
と上司。

「何があっても絶対にやめません!」

と続きます。この「かみ」私は辞表を持っているのだと思っていました。「紙」だと思っていたんです。でも、「やめません」という台詞が続いて、紙も一向に出てこないしおかしいなと思っていると「髪」でした。前の部署にいたときは長かった髪をバッサリ切っていて、それに対する台詞でした。

音から得られる情報をフル活用する

ちょっとした音がドラマを楽しむ重要な手掛かりになっています。たとえば、重なる台詞の間にパット受話器を上げる音が入ればどこかに電話をしようとしてるんだなと分かる。クラシックが鳴っている場所でコーヒーカップをソーサーに置く音がすれば、ホテルのカフェで話しているのかなと分かる。電話をしながら急いでペンを走らせ紙をやぶる音が聞こえれば、急いで何かを書いてメモを周囲の人に見せているのだと分かる。台詞の間に入る細かい音も作品を見る大切な要素になっています。

音から広がるシーン

こんなこともありました。主人公が電話をしているシーン。車の音が大きく聞こえたので外で話しているのかと思いました。でも、話の流れとしては、仕事を終えて家に帰った後、子供たちと話しているシーンがあり、電話へと続いていました。夜電話をするためにわざわざ家から出るのはおかしいかなと想い、思いついたのがベランダでした。台詞の後ろで聞こえる車の音からこれだけの想像が広がります。Kさんに聞いたところベランダが正解でした。

「車の音が大きかったから外かと勘違いした」
「うん、車の音大きかった。低層階に住んでるのかもね」

という話に広がりました。

Kさんは私の質問に答えるようになってから、これまで全く意識していなかった「ドラマの中の音」に注目するようになったと教えてくれました。ドラマの制作スタッフの方はちょっとした効果音にも意味とこだわりを持って作っていると思います。数え上げればきりがないぐらい、私にとって音は重要な情報になっています。

作品をもっと楽しむために知りたいこと

これが分かればいいのに、と思うのは登場人物の立ち位置です。演劇を特等席で見ていれば、足音や声が動くことから誰がどこに立って話しているのかが分かります。でも、ドラマでは聞こえてくる音はもちろん同じところからです。立ち位置や座っている場所がストーリーの中で重要なこともあり、位置関係も知れたらといつも思っています。

音を情報として使うということ

以前も書いたことがありますが、全盲だから特別な聴力を持っているわけではありません。私はただ「音を情報」として使っているだけなんです。同じ視覚障害の人でも、細かい効果音なんて気にせずに台詞だけで十分たのしいと思う人もいるでしょう。いくら映像の説明をしてもらっても全く楽しめないという人もいるでしょう。これはあくまでも「私の楽しみ方」であると思ってください。

見える人が目をつぶってドラマを見ても、すぐに私と同じように音を情報に変えることは難しいと思います。それは生活の中で「目から情報を得る」ことが当たり前になっていて、耳を使わなくてもいい状況だからです。普段目でドラマや映画を楽しんでいる方も、少し「音」に意識を向けてみると、新たな発見があるかもしれません。

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