ゼロからイチへの日誌【35】ゼロがイチになる日

これは2024年4月27日に開幕した朝ミュージカル東京の新作『ながめせしまに茶の湯でも』のクリエイター目線からの記録です。

ゼロからイチへの日誌【35】ゼロがイチになる日

2024年4月27日

朝7:30。
会場に入った。
7時台って、学生時代の台やがな。
そんな7時台にアラサーアラフォーを中心としたカンパニーが集合し始めた。
通常営業時のテーブル&椅子などの配置が移動され、つかのまのシアターへと変身してゆく。

8:15。
ゲネプロ開始。
最後の足掻きでところどころメモをとる。
脚本家としてよりは、音楽チェック要員として。

9:00。
ゲネプロ終了。
楽屋にひきあげ、キャスト達と最後の確認をする。
なんだか空気が武者震っている。

10:00。
開幕。
手放しで楽しみたい気分と鹿爪スタッフモードのないまぜだ。

10:50。
終演。
つかのまシアターをカフェにもどし、今後にむけての更なるノートをカンパニーと共有する。
全て終えて11:30に会場をあとにした。
まだ午前ちゅーう!


すこし前、疫病という予想外の事象が人生にふりかかり、自分にとっては唯一とも云っていい「生きるよすが」を抜き取られた。
演劇なんて、どうでもいい人にとっては心底どうでもいいだろうし、演劇人の生き方が愚とか無とかにしか思えない人で世の中あふれているだろう。
そんなことを毎日突き刺されていたあのころ、五里霧中のなかから顕出したあたらしい演劇形態の一環で「無観客」という言葉がうまれた。
演劇の4大要素が「戯曲」「役者」「劇場」「観客」なのにだ。

むろん、「配信」というオルタナティヴの手段によって劇場における「無観客」の虚しさの半分は埋められた。

だけども、お金と時間をこのために割いていただいて、
劇場という空間で、
観客と演者が互いの温度を、香りを、音を、呼吸を、まといあう。
それが初めて、

ゼロがイチになる日だ。

ハッピーバースデイ、
『ながめせしまに茶の湯でも』。


ゼロからイチへの日誌【了】


4/24/2024
©朝ミュージカル東京

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