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「伝わる」文章に必要なこと


「蝶のように舞い、蜂のように刺す」

軽やかなフットワークと、鋭いジャブで相手を的確に仕留める伝説のボクサー、モハメド・アリが自身のことを評した言葉だ。
軽やかなフロウで韻を踏み、的確な言葉で相手を刺すラップバトルでよく使われているビート、SOUL SCREAMの「蜂と蝶」のリリックにもこの言葉が使われている。


今年のはじめ、「谷川俊太郎展」で改めて彼の作品を読んだとき、彼の紡ぎだす言葉はまさに「蝶のように舞い、蜂のように刺す」ようだと感じた。

思わず声に出して読みたくなるくらいにリズミカルな彼の詩は、一見するとポップな"ことばあそび"でありながら、現代社会に生きる"一人の生活者"のリアルな言葉であり、思想だ。
彼の作品には読んだ人をハッとさせる魅力がある。

「自己紹介」と題された作品はこんな言葉から始まる。

私は背の低い禿頭の老人です
もう半世紀以上のあいだ
名詞や動詞や助詞や形容詞や疑問符など
言葉どもに揉まれながら暮らしてきましたから
どちらかと言うと無言を好みます

「言葉」を生業としてきた自身を、リズミカル且つユーモアたっぷりに紹介するセンスに、思わずクスッと笑ってしまった。

私は工具類が嫌いではありません
斜視で乱視で老眼です

と赤裸々に続く「自己紹介」はこんな言葉で締めくくられる。

私の書く言葉には値段がつくことがあります

詩人といえばどこか浮世離れしていて、金銭の話とは無縁なイメージがあるかもしれない。しかし彼はそういった「幻想」は語らずに、あくまで事実を静かに述べる。
会場に並べられた彼の作品を見て「ああ、生きている言葉だ」と感じた。

文章は内省だ。
考えや行動、体験を省みて、言葉として形に残す。
心の中にあることを言語化し、表現するのは裸になることくらい恥ずかしかったりする。
だから照れ隠しにかっこつけてみたり、世論に迎合してみたり、なかなか素直になることが難しい。
とはいえ、息継ぎもできないほどにだらだらと自分の想いを垂れ流した文章は書いている自分でさえも辟易としてしまう。

たとえ読み手が自分しかいないとしても、「伝わる」文章を書くためには、"蝶のように"華麗に人を惹きつけるテクニックと、"蜂のように"自分の考えを言い切る勇気が必要なのだと思う。

#毎日noteとは **
複数人で毎日違うお題を出し合って、考えたこと、思ったことを書いています。
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