元陸自自衛官の五ノ井里奈さんのセクハラに対し、防衛省は謝罪と関係者を
処罰すると共に五ノ井さんは防衛省を相手取り損害賠償請求の訴訟を行った。
これまで自衛隊でのパワハラやセクハラに対して防衛省はあまり対策を取らなかっただけに
防衛省が謝罪した事は大きな事だ。損害賠償請求の訴訟も当然と言えるだろう。
この他にもパワハラの内部告発を行った海自自衛官が損害賠償請求の提訴を行ったり
空自の自衛官がパワハラで自死する事件も起きている。

パワハラやセクハラはどこの国の軍隊でも起きているがそれぞれ対策を行ってきたが
自衛隊ではその対策は最近まで行わなかった。ようやくハラスメント対策を
防衛省は打ち出して来たがまだまだ不十分と言わざるを得ない。
そこで2つの提案をしてみたい。

先ずは軍事オンブズマンの設置である。軍事オンブズマンは軍人（自衛官）の
人権を擁護するための内部告発と是正を行う行政相談委員であり、
スウェーデンが最初に始め、ドイツなどでも採用されている。
軍事オンブズマンには元軍人が就任して横暴な上官やいじめへの内部告発窓口や
問題是正を命令する権限がある。当方は一時期政治将校を置くべきと提言したが
政治将校にはデメリットも多いと政治将校を設置している国の方に仰られたので
軍事オンブズマン設置という代替の措置を提言したい。
所属は総務省でもいいし、人権擁護委員を設置している法務省でもいい。
オンブズマンには元自衛官がなるべきで癒着を防ぐために陸自には元海自自衛官を、海自には元空自自衛官を、空自には
元陸自自衛官がオンブズマンになるのが良い。名称は防衛相談委員というので良かろう。

また欧州では軍人の労組や労組とは別の労組と同じ役割と権限を持つ
利益団体を創設している。当方は欧米は何でも見習え論には否定的だが
この組織とそれを認める法体系は評価してもよい。ドイツ連邦軍協会や
イギリス軍連盟など軍人の労組的な役割を持つ軍人利益団体を創設している。
自衛官を含め特別職公務員の労組を日本にもと安易に設置するのは早計だ。
ドイツではミュンヘン市警の警察ポスターが人種差別的とした指摘に反論したのが
バイエルン州警察労働組合だった。この他にも日本の労働組合は契約社員には
どちらかといえば冷たく、契約社員が権利侵害されても救済しない事も多い。
自衛隊では契約社員にあたる士の権利が侵害されても放置されて
パワハラやセクハラが起きても黙認されかねない。
また職責上国民の生命と財産を守るために団結権は認めないという主張を
覆す事は難しく、イギリスですら軍人や警察官などの本邦では
特別職公務員にあたる公務員の団結権は認められていない。
そうであるなら全国消防職員協議会のような任意団体として政治活動（特定の政党の
支持は行わない、左右過激派とは繋がらない）は行わないのを条件に自衛官の利益団体を
任意団体として認めるべきだ。これは自衛官に限らず警察官、海上保安官などにも
言える事だ。イギリスのスコットランド警察官協会のように労組機能を持つ利益団体は
既に存在している。

さらに階級ごとに陸海空自衛官の利益団体を下部に置いて防衛省に
待遇改善（労使協議）やパワハラ、セクハラ対策への交渉も行えるようにすべきである。
階級ごとにだけでなくさらに男女別の利益団体にするのが望ましいと言えるだろう。
また士については実質兵の任務に就いている3曹が専従や代表になるのが望ましい。
3曹は士の辛さを良く知っている階級であるからだ。

交渉や労使協議については全国消防職員協議会は自治労の協力を得ているが
自衛官の利益団体は連合の協力を得てもいい。連合のメーデーには総理時代の安倍元を始め岸田総理など自民党政権の
総理も祝辞に参加しており、本邦の労働組合は特定政党の支持基盤としての機能から
脱却しつつあるので自衛官を始めとする特別職公務員の利益団体には
共闘出来る団体になっている。

■ソース
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https://www.mynewsjapan.com/reports/2618