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枠を外す~スランプと、フィレンツェの大聖堂と

 まいったな。

 何も思いつかない。

 今日こそnoteに穴を開けてしまう。そう思った日は、今までにも何回かあった。

 でも、ここまで何もひねり出せない日、というのはあっただろうか。

 底の底で、泥のようにへばっているイメージ。

 空っぽの井戸をひっかいているような。

 電池切れ、とでも言おうか。

 さて、どうやったら回復、あるいは充電できるのでしょうか。

 

 これまでやってきた方法、「常識」では解決できない場合。

 その「常識」や「前提」を失くしてしまうと、意外とうまく行ったりする。

 フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の建造における最難関、クーポラ(ドーム)の建設もそのパターンに入るだろう。

 キリスト教の聖堂は、上から見た時に、縦軸が長いラテン十字形になっている。

 この十字の交差部分に、クーポラ(ドーム)が置かれる。それは、「建造」の計画当初からイメージとしては決まっていた。

 直径47メートル。地上から頂点までの高さは107メートル、およそビルの30階に相当する。

 完成すれば、当時最大の規模のものができあがる。

 そう、「完成」さえできれば…。

 だが、呆れた事に、それを現実化する方法を誰も知らなかった。設計者本人も、他の代々の建造プロジェクトに携わった人たちも。

 それでも、「できるところから手をつけていきましょう」、といったスタンスで、まず「ジョットの鐘楼」、洗礼堂が出来上がる。

 その洗礼堂の扉をめぐっておきた出来事は、先日少し触れた。

 さてはて、クーポラをどうしよう。

 仮の支柱を使う方法が一般的だが、規模が桁違いだ。途中で落ちて来てしまう心配はないだろうか。

 皆が頭を悩ませる中、

「方法がある!」

 と名乗り出たのがフィリッポ・ブルネレスキだった。

「俺の方法なら、柱を使わずとも、巨大クーポラを実現できる」

 そのヒントを、彼は10年以上に及ぶローマ滞在の中で研究した古代建築の一つ、パンテオンから見つけ出していた。

パンテオン内部(Wikipedia

 この通り、ここではドーム屋根を支えるのに、柱は使われていない。

 その秘密は、外殻(60㎝)を内殻(2.1m)が支え、骨組みを覆い、湿気も防ぐ、という二重構造にあった。

 そして、それを可能にした、独特のレンガの組み方の工夫「矢筈組み」。

 これらを武器に、ブルネレスキは巨大クーポラの建造、というプロジェクトを成功させる。

 もっとも、「柱を使わない」という「常識」はずれのプランは、最初は荒唐無稽としてなかなか受け入れられなかったらしい。


 このブルネレスキのケースに限らず、「常識」や「経験則」はなかなか厄介だ。

 私自身、同じパターンを繰り返すことの方が安心する。

 だが、それに乗ったままでは、枠で区切られた水槽の中をぐるぐると泳ぎ回る魚と同じだろう。

 自分が、「枠」の中に囚われている、ということに気づけないことも多いのではないか。

 以前、何かの本でも見かけた。

 スランプになったら、普段やらないようなことに敢えて手を出してみるのも策の一つだ、と。

 水平思考でも、「常識」を敢えて逆にしてみるのが、考え方の一つとして挙げられている。

 そこに思い至れれば、なんとかなる。

 「思い至れ」さえすれば。具体的な方法が思いつければ。

 そこまでが、何と長いことか。

 …明日、noteの更新に穴が開きませんように。(合掌)

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