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仏像を見に行く人にオススメしたい本4冊


 仏像、と一口に言っても、様々だ。
 悟りの境地に達した如来、しなやかに体をくねらせ、アクセサリーをふんだんにつけた菩薩、武器を手にした恐ろしげな明王。
 時代によって、また国によって顔が違うのも面白い。(父が出張先のミャンマーで撮った仏像は、アウンサン=スーチーさんにどことなく似ていた)

 そんな仏像を見て回りたい人に、僭越ながら是非読んで欲しいと思う本がいくつかある。

・真船きょうこ『仏像に恋して』、『もっと! 仏像に恋して 』



 コミックエッセイ。
 西洋美術史専攻だった私が、仏像に興味を持つ最初のきっかけを作った本。
 京都、奈良、東北...さらにはタイや仏教発祥の地インドまで、行動範囲の広さに脱帽。
 仏像一つ一つの描写もリアルで、関連のあるエピソードも楽しく読める。
 京都や奈良はともかく、仏像に会いに行き先として、すぐには発想できない場所までカバーしているのが、すごい。
 コミックという形もあって読みやすい。入門にはうってつけ。


・梓澤要『荒仏師運慶』、
 澤田瞳子『満つる月の如し 仏師・定朝 』

 こちらは小説本。
 どちらも平安・鎌倉に活躍した実在の仏師を主人公とし、その生きざまに迫っていく。
 定朝は平安中期(10~11世紀)、藤原道長が権力を握った時代の人。
 生涯に謎が多く、今では、彼の作とはっきりわかるのは、平等院の阿弥陀如来のみ。
 しかし、彼の作った温和で優美な仏像は、「仏の本様」と呼ばれ、長く仏像の手本になり、貴族たちに愛された。
 運慶は約百年後、平安末から鎌倉時代を生きた仏師。力強い造形でもって、新しい支配層である武家に支持された。

 何のために、仏を作るのか。
 人々は、仏像に対し、どんな祈りをこめたのか。
 どちらの作品も、数百年の時を越えて、その答えに肉薄できる、腰を据えて読みたい小説である。
 
 
 これらの本が、世界が広がるきっかけとなりますように。

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