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書きたいもの~<モナ・リザ>の隣人、ヴェロネーゼ<カナの婚礼>

 ルーヴルのその部屋で、人々の視線のほとんどを集めているのは、一人の女性だった。

 そう、<モナ・リザ>だ。

 10年以上前に訪れた時、部屋に入って最初に目についたのが、国籍も様々と思しき人々が小さな絵の前に群がって、携帯電話(当然ガラケー)を向けている姿だった。

「本当に小さいねえ…」

 苦笑と共に、私はちょうど<モナ・リザ>の向かい側の壁にかけられた絵へと目を向けた。

 ヴェネツィア派の大家パオロ・ヴェロネーゼの<カナの婚礼>だ。

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 縦6メートル、幅9メートル。

 モナ・リザの一体何十倍の大きさだろうか。

 ルーヴル級の広い壁をまるまる一つ占める巨大な画面には、みっしりと人が描き込まれている。

 楽器を演奏する人。

 酒を注ぐ使用人。

 乾杯する男性客。

 映画や演劇の一場面のようだ。実際に、明るい色彩といい、衣装や小道具の華やかさといい、大いに参考になりそうだ。

 何より、向うに開けた空の広さ、青さ!

 とにかく華やかな色彩で溢れている。

 でも、一応この絵はジャンルとしては「宗教画」だ。婚礼の席で、ワインが足りなくなる、というトラブルに際し、キリストが奇跡を起こす、というのが主題だ。

 そのキリストは…画面の下半分、中央にご注目を。

 一人だけ頭に淡い光輪を帯びている男性がそうだ。赤と青の服、髭を蓄えた顔…一般的なキリストのイメージそのものだ。

 ただし、本来なら添え物であるはずの細部が盛りに盛られ過ぎて、埋もれてしまっている、と言うべきか。よくよく注意しなければ、気づけない。

 そもそもこの絵が「宗教画」だと気づける人は何人いるだろう。

 

 しかし、この絵にとって気の毒なのは、お向かいさんが<モナ・リザ>だということではないだろうか。

 <カナの婚礼>は、作品単体で飾られていたなら、「おお!」と感嘆せずにはいられない。

 だが、訪れる人の目は、まず<モナ・リザ>に向く。

 やはり、世界的に有名な絵、謎をはらんでいるからこそより魅力的な絵だ。

 ルーヴルの膨大なコレクションの中でも、見逃せないお宝だ。

 一度は見ておきたい、と思うのが人情というものである。


 そうでなくても、ヴェネツィア派ルネサンスの絵は、日本ではどうしてもフィレンツェ・ルネサンスや盛期ルネサンスの三大巨匠に比べると、どうしても知名度で負ける。

 十分に負けないだけの魅力も備えている、というのに。

 もっとヴェネツィア派について見てほしいし、知って欲しい。

 そして、ヴェネツィア派絵画の魅力が伝わるような記事をノートでも書きたい、と思っている。

 特に、このパオロ・ヴェロネーゼ。

 彼についても今一度ちゃんと調べて、そして紹介する記事を2~3は書きたい。

 それが今の目標の一つである。


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