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葵ひなたと葵ゆうたのファン

あたしは、あんさんぶるスターズ!!に登場する『2wink』というユニットのファン。

2winkというユニットは、双子のシンクロしたトリッキーなパフォーマンスが魅力のユニットと言われて、テクノポップめいたサウンドに惹かれて、彼らの笑顔が眩しくて、なんて素敵なアイドルなんだとその光に触れてみれば、彼らはずっとファンではなくお互いを向いて、ずっと『俺たち』の話をしていた。

それを、「ファンとおもちゃ箱を広げて遊んでいるだけ」と言われたことが実際ある。召しませ/ナイトクラブです。スト面白いから読んでね。彼らが広げて遊んでいるのは他でもない「俺たち」という自我で、腑をひろげて笑っているのだ。あたしたちはそれを臓物と気づかないで尊いねとか言っていた。

これは個人的な懺悔で、全部個人の感想だ。

2winkの売りはそっくりな双子。
けれど、今の2winkの見た目は顔いがい、そっくりじゃない。
!!にアップデートされた時に、兄のひなたはプライベートの髪型を恒久的に変えた。次年度のイベントでは弟のゆうたが髪を伸ばし、イベント後のスカウトでその件に触れた。今更ながら、あんスタにおけるユーザーは『プロデューサー』の女の子、物語開始時で高校2年生なので、2winkの葵兄弟はひとつ下の後輩。
その後輩が悩み抜いて伸ばした髪は、ゆうたの復讐を別の番組のプロデューサーが好意的に受け取ったことでなされた。あたしは噛んでいない。

例えば葵ゆうたくんのクラスメイトで、ゆうたくんが髪の毛を伸ばした理由を知っている子はいない。どうして急に双子売りをやめたんだと聞かれて、ゆうたくんは『プロデューサー』の意向と答えるかも知れないけれど、そのプロデューサー役はあたしではないのだ。
あたしは確かに『2wink』の『プロデューサー』だったけれど、!!の彼らは!のラスボス、ヒール側のユニットと同じ運営の、いわば敵陣営の事務所に所属した。そっくりな双子の見た目はそれぞれの髪型を変更したことで見分けがつくようになった。そしてそれを決定した『プロデューサー』はあたしじゃない。

だったらファンであることは、と思っても、あたしにはそれすら名乗ることを許されない。

ファン第一号は他にいる。
言ったもん勝ちだ。でも言われた。あたしは一番のファンじゃない。

例えば、と思う。
例えば2winkが人気ユニットだったら、ひなたとゆうたは今でもそっくり双子のテレパシーでシンパシーだったかな、と思う。世界が終わるまで歌って踊って、皮の破けて爪の剥がれた潰れた足をあたしは綺麗な赤色だねよく似合ってるねと笑っていたかな、とか。
!の2winkは葵ひなたを幸せにするために、弟のゆうたにすべてを捧げさせてと願う兄の物語だと思ってる。これはメインライターの日日日先生の執筆ストにゆうたメインのものが少ないというかイベストがなかったからが原因かもと思うけど。そしてゆうたは、兄のそのエゴを、弟を愛してくれているからと受け入れて、一度は『俺たち』に納得している。

『俺たち』とは『2wink』という名前の個人だ。脳みそも心臓も器用な手足もとびっきりの笑顔も歌声もふたりぶん持った人間。それが2wink。ゆうたはひなたのために、ひなたは俺たちのためにその個人の養分になることを受け入れて、ふたりは高校2年生になった。そこから物語がはじまるのが!!だ。
例えばその姿がアイドルとして大人気だったら、いつまでも自我を擦り潰されながら、2winkはあたしに笑ってくれていただろうか。その裏のマメの潰れた手足をけして見せない。ステージの上でめちゃくちゃ喋るあんさんぶるスターズにおいて、2winkはいつも板に上がる前に話を終わらせていた。そういうところが好きだ。

結果、2winkは大人気じゃないし、ひなたとゆうたは今、それぞれ人間として、ひなたは死ぬまで幸せに生きること、ゆうたは自分で愛せる自分になることを目指して、それぞれの道を猛ダッシュで走っている。繋いだ手を離さないまま。ちなみにひなたくんは身軽で足が速いので、ゆうたくんも身軽で足が速い。

そしてあたしは、今の2winkのファンだよと。アイドルとしてのふたりに思うことは、そう。たったそんだけ。いちファンのちっぽけなお話。

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