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バスケのデータ分析オンライン講座第7回 ~指名権の価値の定量化~

こんにちは。

アメリカのバスケのデータ分析オンライン講座について、前回は第6回の講義のまとめを行いました。

今回は第7回の内容の振り返りや感想を記載していこうと思います。
内容としては、指名権の価値の定量化になります。
第4回と同じく、具体的な分析手法の話になり、表計算ソフトも利用する回になります。

算出の各種前提

  • ゴールは指名権の価値を定量的に算出すること

    • プロテクトされてる場合や、指名権の対象シーズンを踏まえた割引率なども考慮する

  • 価値を表す指標にはWin Sharesを採用(概要はこちら)

  • 分析対象の指名権は、SACの2024年1巡目指名権(1~10位までプロテクト) or もしプロテクトされたときの2025年指名権

※サンプルのスプレッドシートはこちら

算出フロー

  1. 指名権の順位ごとに、獲得後のWin Sharesの値がどうなるかを算出するロジック作成

  2. 分析したい指名権について、指名権元のチームの戦績を元にどの順位の指名権になりそうかを推測

  3. 1,2を元に当該指名権の価値を算出する

  4. 当該指名権の対象シーズンが何年後なのかを踏まえて、割引率を設定して現段階での指名権の価値を算出

各フローの詳細

フロー1(”Pick Range”のシート)

  • 過去20年のドラフトを対象に、選手ごとの獲得後4シーズンのWin Sharesの合計を算出

    • 4年の理由としては、チーム側が最大4年間まで契約延長して選手を確保することができるため。

  • 順位ごとにWin Sharesの合計の代表値を決める

    • 今回は順位ごとのWinSharesの中央値を採用。

      • なぜ中央値を選んだかの明確な説明はありませんでしたが、平均値だと超絶活躍する選手などが外れ値となりうるからと思われます。

・成績の悪いプレイヤーは長い時間プレイしない傾向にある(その前に解雇されたりする)ので、低い数値は出づらくなることに留意
例)アンソニー・ベネットはWSがマイナスになる前にカットされたので、1位指名権のlowestにいない
・具体的な選手名も併記することで、見る側にとってイメージが付きやすくなるようにしている
例)1位指名の選手の活躍度合いは、大体Dwight Howard(75% quantile)からAndrew Wiggins(25% quantile)の間に収まる傾向にある等

指名権の順位ごとのWin sharesの値
  • 単純に上記の中央値を使うと、2位指名権(13.7)より3位指名権(17.7)のほうが価値があるなど、実際の数値は単調減少になっていないが、下位の指名権ほど価値が下がると考えるのが自然なため、それを踏まえて1巡目指名権範囲の30位までで、順位ごとのWinSharesの価値を算出するモデルを作る

    • シート内のグラフ(画像を下記に添付)を参照のこと

    • グラフのトレンドラインは対数関数を採用していたが、理由は不明。

指名権の順位ごとのWin Sharesの予測値

フロー2(”Pick Valuation Example”のシート)

まず、譲渡元チームの2024年の1巡目指名権(1~10位までプロテクト)の価値を算出する

  • 2020-2021シーズンの勝ち数(今回は30勝)を元に2023-2024シーズンの勝ち数の分布を予測

    • 見方としては、今シーズン30勝だったチームが3年後にどの程度勝つのかを、過去のデータを集計して、実績を当て込んでいる
      ※イメージは下記の表

今シーズンの勝ち数ごとの3シーズン後の勝ち数分布
※勝ち数の分け方は、該当チーム数が均等に20%ほどになるようにしている(講師的には自由に考えてもらってよいとのこと)
  • 各勝ち数ごとに、どの指名権の順位がもらえることになりそうかを決める

    • 譲渡元チームが0~28勝なら1~3位指名権がもらえて、29~39勝なら4~10位指名権がもらえて。。。と指定

      • このケースでは、主観で決めていました。

      • 0~28勝の中に4チーム入ってきて、4位指名権にはじき出されるなども起こりうるが、今回はサンプルなので特に気にしない

フロー3(”Pick Valuation Example”のシート)

  • 譲渡元のチームが何勝しそうか、それによって指名権はどの順位になりそうか、もらえそうな指名権の価値の平均値は何かを踏まえて、最終的な価値を算出する

    • 例)54~82勝になる確率が9.77%で、その場合は26~30位指名権のどれかをもらえるので平均的に3.5勝分の指名権になるので、掛け算すると0.34勝分になる

    • 上記の例を勝ち数ごとに行って、最終的に出てきた値を合計すると、2.55勝の価値となる
      ※0~28勝と29~39勝のところは、10位指名権までの枠になってプロテクトされており、指名権がもらえないので0勝の価値となる

  • 次に、2025年に指名権をもらえた場合の価値を同じように算出すると、結果は11.2勝の価値となる。

  • また、2025年に指名権を貰える確率は55.64%である。
    (2024年に0~39勝してプロテクトされる確率)

  • 上記を踏まえると、「2024年1巡目指名権(1~10位までプロテクト) or もしプロテクトされたときの2025年指名権」の価値は下記式で表される。
    ※実際の値は式の下の画像

$${2024年指名権の価値+(2025年指名権をもらえる確率*2025年の指名権価値)}$$

フロー4(”Pick Valuation Example”のシート)

  • 未来のシーズンの指名権をもらうことになるので、割引率を0.2として将来の指名権の価値を現在の価値に直すこともできる

  • 割引率0.2は仮置きでなのでシチュエーションによって数字は変わりうる。

    • win nowなら現在のほうが優先されるので、相対的に未来の価値は下がるため、割引率を高くする

    • 再建モードなら未来の価値が上がるので、割引率を低くする

    • etc

※計算式はスプレッドシートを参照のこと

  • 結果として、割引率を考慮すると、SACからもらう指名権の勝ちは5.38勝分になる

最終的に指名権の価値を1つの値で表していますが、個人的には分布を出せる形にしたほうが意思決定しやすいなと感じています
(少なくとも、x以下の価値にはならなさそうだったり、確率は低いけど一発逆転も狙ったりできる、といった意思決定もありうると思うため)

感想

個人的に一番おもしろいと感じた回でした。
NBAでは指名権を交えたトレードがよく起こりますが、対象にする指名権はどのように決めているのかなと疑問に思っていたので、裏側でチームがこのような考えで、いかに良いトレードになるかを検討していると知ることができて、講義中にとても興奮していました笑

もちろん、「指標は4年間のWin Sharesでいいのか」、「将来の勝ち数と指名権の順位の関係性が雑ではないか」などなど、各フローで穴は多いです。しかし、ベースの考え方としては筋が通っていてとても参考になるのも事実で、ここからの改善やアレンジもしやすそうなので、興味のある方はブラッシュアップを試してみても良いかもしれません。

第7回の講義内容のまとめは以上になります。
最後の第8回の講義もまとめていくので、ぜひ見ていただければと思います。

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