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大きな声は出さなくても、それはとても確かな。【一番イケている街はどこ】

大通りには、特急電車の停まる主要駅。
毛細血管のようにあちこちにバス網の張られた福岡だけれど、ここはまさに大動脈だと言えよう。

朝から晩まで車通りも人通りも多いその道路から南側に一本入ると、別世界のように静かな土地。
ここが、福岡市中央区白金(しろがね)。
私は、この街を愛している。

最寄りの薬院駅から徒歩6分程度。
ひとり暮らしをするマンションにたどり着く。
今日の食事をどうしようか。早く帰れたので自炊をする元気は残っているけれど、大好きなごはん屋さんに行こうかな。

一息つき、家を出る。
空気があたたかくなってきた。春はもうすぐ。
マンションを右手に見ながらまっすぐ歩くこと5分弱、目的地へ到着。

私よりほんの少し年上のお姉さんがおひとりで切り盛りされているごはん屋さん。
「ほっこり」という言葉がこれ以上に似合う場所はない。

そこにある雑貨、流れる音楽、料理を彩る食器、お店をかたちづくるそのどれもが気になって、店主の手が空いているときにはあれこれ質問をした。
たぶんこのコミュニケーションがなければ、ジョアンナ・ニューサムなんてアーティストを知ることさえなかっただろう。

ごはんもスイーツもとても丁寧に仕上げられていて、お味噌汁をいただくとすっと背筋が伸びる感じがする。
「今日もおいしかったです」と声をかけると、「ありがとう」とはにかんで返してくれる。

帰りがけ、「今度、みんなでピクニックをするよ。雨の時は、お店にレジャーシートでも張ろうかな」と声をかけてくれた。
きっと気のいいお得意さんや、イベント出展の時に知り合った作家さんやアーティストさんが、わらわらと集まる楽しい席になるだろうな。

お店を出た。
家にまっすぐ帰るのがなんだかもったいなくて、うろうろと散歩をする。

同じ通りには、ガラス張りのピザ屋さん。
角を曲がれば、有名な焼き鳥屋さん。
少し足を伸ばせば、お茶漬け屋さん、水餃子屋さん…おっと、食べ物のことばかり。
姉妹でカフェと美容室を営むお店にはいつもお世話になっている。
こだわりのキッチンツールを取り扱うお店が最近できたし、近くの革小物のお店も気になるんだよなぁ…。

大きな声で主張はしない。
けれど、それぞれがこだわりと意思をもってそこにいる。
枠にはまらず、おおらかに、来るものを拒まず、優しい笑顔で営みを続ける。

ぐるりと小さな街を一周し、部屋に戻る。
携帯電話には、彼からのメールが入っていた。
今度の週末は、ひたすらミスチルを流してくれているお茶漬け屋さんに一緒に行こう。
窓を開け、北向きのベランダからすっかり暮れきった景色を眺めながら、改めてこう思うーーこの街の、春になりかけのあったかい空気みたいなその雰囲気を、私は愛しているなあ、と。



書くンジャーズ今週のテーマは、【一番イケている街はどこ】
12年ほど前の独身時代の記憶を引っ張り出してみたのは、火曜担当のみねでした。

ちなみに、書いているお店の半分ぐらいは、残念ながらクローズしたり移転したりしてしまっています…
でも、先日界隈を訪れる機会があり、またこの土地を新しくかたちづくる、ステキなお店があちこちにできていることもわかって嬉しくなっちゃいました♪

メンバーの皆さんの思う、【一番イケている街はどこ】?
今週も、日刊「書くンジャーズ」マガジン、要チェックです!





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