自分たちのペースでやりたいのもあると思います(別居嫁介護日誌 #51)

「デイ通いを週2回に増やしてはどうですか」
もの忘れ外来の医師からそう提案されたのは、デイ通いがスタートしてから約1ヶ月後、2017年10月のことだ。

もの忘れ外来では診察時に、医師が義父と義母それぞれに「最近楽しかったことは何ですか」「最近お困りのことはなんですか」と尋ねる。そのとき、義母が「夫が日中、寝てばかりいる」と繰り返し訴えたことがきっかけで、デイ通いを増やす話が浮上した。

日中しっかり活動すれれば、夜もぐっすり眠れる。逆に、昼寝をしすぎて“昼夜逆転”になってしまうと、夕方や夜に不安が強くなるなどマイナスの影響が懸念されるという。

デイに行く回数が増えれば、その分、栄養バランスがとれた食事(昼食・おやつ)をとる機会や入浴回数が増える。健康管理の面でも、家族としては大歓迎だった。

医師の提案に義父母は少し顔をしかめたが、ノーとは言わなかった。念のため、後日、ケアマネさんからも回数を増やす件について義父母と話し、承諾をとりつけてもらった。“勝手に増やされた”という印象にならないよう、外堀から埋めていく。ケアマネさんから「ご承諾いただけました」という連絡が入り、次は他の介護サービスとバッティングしてしまう曜日の調整。

デイに通う曜日が1日増えると、訪問日の組み替えが発生する。ケアマネさんが関係各所と連絡をとりあいながら、曜日を組み替えていく。ほとんどジグソーパズルである。

大きな問題は起きないまま、いよいよ週2回体制に移行へ! ……と思っていた矢先に、ケアマネさんから連絡が入った。義父から「やっぱり、週2回は混乱しそうなのでキャンセルしてほしい」と連絡があったとか。ガーン! ケアマネさんはひとまず、「来週また相談しましょう」と対応してくれたという。

介護状況を共有するためのLINEグループに投稿すると、義姉からはこんな返事が来た。

「あらら、デイケアの件そうでしたか。たしかに、いろいろな方が来て下さっていますが、その方たちと対応することで薬を飲み忘れたり、洗濯物を干さずに忘れ去られたりということがあるみたいです。自分たちのペースでやりたいのもあると思います。『来週のお話』に期待してます」

あれ……お義姉さんもデイの回数を増やすことには懐疑的だった!? どうリアクションすればいいかわからず、夫に相談すると、「俺から返信する!」という力強い回答が返ってきた。おう、頼もしいぞ!

「デイの件はおそらくお袋が面倒がって、親父はその意思を尊重しているんだろうけど、認知症患者に“自分たちのペース”で物事を進めさせるのはよくない。おふくろは基本的に人のせいにするクセもある。

いちばんいいのはもの忘れ外来のドクターに叱ってもらうことなんだが、その場では言うことを聞くふりをして後からキャンセルする手口は正直タチが悪い(笑)。なんとかうまくその気にさせる方法、ケアマネに相談してみましょう」

お、おう……。(笑)とついているけれど、なかなかの強い調子。でも、これぐらいじゃないと、事態の切迫感は伝わらない…のかも? 義姉からは数分後に返信が来た。

「前回の印象だと、デイの翌日は調子がいいように思います。本人がそれを感じられるといいんだけど」

あれ? やっぱりお義姉さん、デイ通いに否定的ではない!? テキストメッセージのやりとりだとそのあたりのニュアンスがいまいちわからない。でも、ここであわてて、電話をかけたりすると今度は“言った・言わない”の罠が待ってる。うーん。

悩ましい気持ちになりながら静観していると、夫からさらにメッセージが入った。

「もうひとつ姉貴に念のため、お袋が『その方たちと対応することで薬を飲み忘れたり、洗濯物を干さずに忘れ去られたり』というのをあまり真に受けないでね。あれはオフロウが面倒がって気乗りしないときに使う上等手段です。

サポートチームが来る前はもっと薬を飲めていなかったし、最近はいろんな人が出入りしてくれるおかげで先週は(たぶん初めて?)飲み忘れがゼロになりました。本人の印象を否定したり詰める必要はないけど、親の言うことを華麗にスルーする場面もあると思います」

ていねいな仕事! 夫はこういうところがホント、根気強いというか、しつこいというか……。きょうだいゲンカの火種にせっせと息をふきかけ、薪をくべてるような気もしなくもないけど、これぐらいはっきり伝えていくほうがイメージしやすくなるのかも。

義姉からは「床暖房の件でメーカーからメールがあったので転送します」と返信が来た。その後ずらずらっとメールの文面が貼り付けられたものが送られてきて、その日のやりとりは終了。まさかの“華麗にスルー”が発動!? 憮然とする夫を見ながら、笑いがこみあげてくる。

さて、この問題はどこにどう決着するのか。デイの回数を増やせるか問題はちっと解決していないけど、話がとっちらかってきたおかげで、むしろ面白くなってきた。

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