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2020年、WHOがマスクを推奨した理由~それはワクチンへと繋がっていく(前編)

「ファクターX」論争

覚えていますか、2020年。確かにアジア人は最初からマスクが好きで、欧米人はマスクに懐疑的でした。でもこの日本でも2020年はまだマスクに関してそれほど厳しくなかったでしょ?
私は会社でもマスクをしていなかったし、「1mの距離があれば」「15分以内なら」大丈夫という認識の人も大勢いました。暑い日はマスクを外してる人も時々見かけたんですよ。それが徐々に変化していったんです。

「コロナ専門家有志の会」noteより  https://note.stopcovid19.jp/n/n7bef9991fb56

そのころ、アジアでは新型コロナの感染者が少ないのはなぜかと言う話が時折持ち上がっていました。ほら、山中教授なんかが「ファクターXを探せ」と嬉しそうに言ってましたよね。
ファクターXについては「BCG説」「交差免疫説」「マスクの習慣説」「日本人の衛生観念説」などが上がっていて、マスクの習慣説や衛生観念説はことさら日本人の自尊心をくすぐったものです。でも、ベトナムやカンボジアがコロナ死者ゼロ状態だったので、衛生観念説はフェードアウト。そしてBCG仮説はかなり有力だと思われたのですが、なぜか学会とメディアからは否定的な声があがり、イスラエルからの論文で声を押さえつけられた感じです。そもそも日本人のほとんどがBCGを打ってますので、比較実験ができないというのも意気消沈の理由でしょうか。このBCG仮説が後にきちんと証明されるんですけども、それは2年後のお話。

さて交差免疫説もかなり有力に思われました。4月には有力医学誌Cellに交差免疫に関する論文が載ったりもしてね。

SARS-CoV-2に対する免疫応答の標的候補を予測する配列相同性およびバイオインフォマティクスアプローチ


ちょっと内容が難しくて私もよくわからなかったのですけども、アゴラでの池田先生による解説によると「これは過去に東アジアに拡散したコロナウイルス(風邪の3割ぐらい)に対する抗体が新型コロナにきいたという説」らしいです。これはかなり説得力ありますね。

アゴラ「新型コロナに感染しにくい日本人は「民度」が高いのか」より
https://agora-web.jp/archives/2046452.html

CDCとWHOの手のひら返しとメタ解析

一方そのころ、マスクは「不要」と言い続けてきたアメリカのCDCは一転「マスクを推奨」と言い始めます。しかし時の大統領トランプ氏は「私はしない」と言っていましたから、あまり説得力はなかったらしいけれど。

さて、日本に話題に戻ります。ステイホームに震えた後、意外と感染者も死亡者も少なく済んだ日本。延ばしに延ばした緊急事態宣言も5月25日に全面解除となったことだし、そろそろコロナから解放されてもいいのでは? マスク? そんなの効きやしないよ。いやいや気休めでもつけときゃ経済活動再開できるのなら安いもんだよ。これ以上の家から出られないのはたまったもんじゃないよ。いやでもWHOはまだ不要だと言ってるよ…

なんて言葉が飛び交う6月10日、WHOは急にこんなことを言い出します。
「感染が広がっている地域の公共の場でのマスク着用を推奨する」

言うてもね。「マスク着用は総合的予防対策の一環であり、それ自体でコロナを防ぎうるものではありません」との文言つき。なんで急に?とザワついたころ、天下のLancetからこんな論文が発表されるのです。

SARS-CoV-2 と COVID-19 の人から人への感染を防ぐための物理的距離、フェイス マスク、目の保護: システマティックレビューとメタアナリシス
Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis

6大陸・16ヵ国で行われた172件の観察研究など患者総数2万5,697例を含むデータです。うっひょう、凄い! この論文が出て世界中がマスクをし始めるのです。だってマスクをするだけで85%感染リスクが減るっていうんですから。

https://www.shop.shionogi-hc.co.jp/Reading/info-multi-defense_20211008.html

しかもシステマティックレビューとメタアナリシスと言えば、エビデンスレベルとしてはRCT(ランダム化比較実験)より上だっていうじゃない。もうRCTで有意差がなくてもそれより上の証拠があるんだから有効に決まってるじゃない! それこそが科学!!

https://cocokura.ncnp.go.jp/evidence/

システマティックレビュー&メタアナリシスには種類がある

ここでちょっと待たなくてはいけませんよ。まずは用語を調べてみましょう。
システマティックレビュー:
ランダム化比較試験(RCT)などの質の高い複数の臨床研究を,複数の専門家や研究者が作成者となって,一定の基準と一定の方法に基づいてとりまとめた総説のこと
メタアナリシス:
統計的手法を用いてランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に結合させる総説論文
参考にしたのはこちら

だからこそエビデンスレベル最上位なんですね。
しかしながら、この論文にはクレームがついています。「フェイスマスクで80%のリスク低減を主張したこのメタ研究には、いくつかの点で重大な欠陥があり、撤回されるべきものである」と。かなり丁寧にこの論文の欠点が書き連ねられていますが、最大のポイントは5番目に書かれています。

「Lancetのメタ研究の著者は、すべての研究が観察研究であり、ランダム化比較試験(RCT)ではないため、フェイスマスクに関する証拠の確実性は「低い」ことを認めている。WHO自身も、フェイスマスクの政策指針の更新が、新しい証拠ではなく、「政治的ロビー活動」に基づいていることを認めている」
 
つまりこの論文はRCTがひとつも使われていないシステマティックレビューでありメタアナリシス。つまりRCT論文単体よりエビデンスレベルが低いのです。

特定非営利活動法人サルタック公式ブログよりhttps://sarthakshiksha.hatenablog.com/entry/2017/12/23/170000

この論文にはスポンサーがいた。

そして論文には利益造反がないかを書く場所があります。論文が誰かの資金提供を受けて、その組織に有利な結果を出していないかをチェックするためです。先ほどのクレームにも書いてありましたね。この論文の資金提供者は誰でしょうか。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31142-9/fulltext

はい、他ならぬWHOです。

WHOはなぜマスクを推奨しなければいけなかったのか?

CDCとWHOの推奨を受けて、世界はマスクを義務付けていきます。

2020年4月~10月の間に、世界はマスクを義務付けていった。

マスクをしなかったスウェーデンでもインフルエンザが激減したと言っても、ゼロコロナのベトナムやカンボジアでインフルエンザが流行っていると言っても、もう誰も聞く耳は持ちません。
だってWHOが、そしてLancetが、「マスク推奨」と言ってるんですから。

「やっぱりアジアの感染者が少ないのは、やはりマスクのおかげだった!」
BCG仮説も交差免疫説もどこかに忘れられてしまったみたい。

でもここで疑問が湧きます。
WHOは本当はマスクの効果に疑いを持っていたはずです。なぜならわざわざ金を出してRCTを含まないシステマティックレビューを書かせたのですから。もし本当に有効性を知りたいのなら、エビデンスレベルの高いRCTを複数含む論文を書かせたはずです。

今までさんざん「マスクには効果がない」と言い続けてきたWHOがなぜ?
みんながマスクをすることでパンデミックを演出できるから?。
確かにそれもあるかもしれません。

私は後日「アジア人がコロナに感染しにくいのはマスクのおかげ」だと思い込ませることそれ自体が目的だったのだと考えるようになります。

その理由は後編で。

 

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