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韓国人選手Meteorが大切な仲間とファンに誓う日本代表としての活躍 「NORTHEPTIONという名を世界に知らしめたい」

Meteorには今、切実な願いがある。

「NORTHEPTIONのメンバーはみんな強いことを、知って欲しいんです」

『VALORANT』の公式大会「VALORANT Champions Tour(VCT)」で、国内予選を勝ち抜き世界大会「Masters Copenhagen」へと出場するNORTHEPTION。そのチームを牽引する存在のMeteorだが、チームメイトがサポートしてくれるからこそ自分が輝けることを理解している。彼らの頑張りをそばで見守ってきたMeteorにとって「NORTHEPTIONはMeteorのワンマンチームだ」という声は、強く否定しなければならないものだ。

チームメンバーのSNSにはお互いの写真や一緒に食べたラーメンの写真が並ぶ。国内大会「2022 VCT Japan Stage 2」で勝利を喜び合う姿など、メンバーの仲の良さがうかがえるシーンは枚挙にいとまがない。しかし、今のNORTHEPTIONの姿は課題をひとつずつクリアして築き上げたものだ。

Meteorがチームに加入した当初は選手同士の意見衝突が頻繁に起こり、自分ひとりの力ではどうすることもできないほど深刻な状況だった。

選手同士の衝突を乗り越えて手に入れた最高の仲間

NORTHEPTIONに加入する前は、韓国のプロゲーミングチームTNL Esports所属として活動していたMeteor。しかし2022年1月にチームが解散となり活動の場を失ったタイミングで「日本のチームでやってみない?」と声をかけてくれたのが、コンペティティブで何度もマッチングして仲良くなったJoxJoだった。

韓国のチームAPE Princeから既にNORTHEPTIONへの移籍が決まっていたJoxJoに誘われる形で、2022年2月にチームに合流したMeteor。ところが、最初は言葉の壁もあって意思の疎通が上手くいかない日々が続いた。韓国人選手と日本人選手の間でプレイスタイルがまったく合わず、何度も言い争いに発展してしまった。このままでは良くないと感じたMeteorは、アマチュア時代に自分を見い出しプロチームに引き抜いて育成してくれたbailコーチに助けを求めた。

「bailコーチはお父さんのような存在です」

アマチュア時代、自分の実力に疑問を抱き始めたMeteorがプロへの道を諦めて軍入隊を検討し始めたときに「これほどの実力のある人間が軍隊に行くなんて絶対にダメだ!」と真っ先に止めてくれたのが、bailコーチだった。10代のプロゲーマーがひしめく韓国において、満21歳という年齢でプロゲーマーになるのは決して容易な決断ではない。選手として活動していく自信をくれたbailコーチに、Meteorは絶対の信頼を置いている。

bailコーチがNORTHEPTIONに合流し「一旦、私の言う通りに練習してみなさい」と指導を始めると、状況は好転した。選手同士で話し合って解決しなかった問題もコーチが間に入ることで解決し、細かな意思疎通にはマネージャーが通訳として力になってくれた。気付けば選手同士のいざこざはなくなっていき、自然と打ち解けることができた。こうして「仲の良いNORTHEPTION」が誕生した。

顔を合わせて培ったゲームを超えた友情

昨年からメンバー総入れ替えとなった新生NORTHEPTIONだったが、半年足らずの短期間で見事に躍進を遂げた。5月中旬から始まった「VCT Japan Stage 2」ではWeek1でMain Eventを突破し、さらにPlayoffsでは強豪Crazy Raccoonを倒してオフラインで開催されるPlayoff Finalsにまでコマを進めることに成功した。この結果を受け、韓国在住のMeteorはJoxJo、 bailコーチとともに日本へとやってきた。

「実際に会ってみてもゲーム内の性格そのままでした」

NORTHEPTIONの本拠地である北海道に到着し、初めて日本のチームメイトたちと顔を合わせた印象を、Meteorはそう振り返る。練習のスケジュールが忙しく遊びに行ったり観光したりはできなかったが、一緒に外食を重ねるだけでもその仲は更に深まっていった。

「もし、みんなで遊びに行ける機会があったら、キャンプ場に行ってキャンプファイヤーを囲みながら缶ビールを片手にあれこれ語り合いたいです」

お調子者でいつも楽しい雰囲気をつくってくれるDerialy、真面目に語り合ったり羽目を外してふざけ合ったりといつでも話しやすいxnfri、やるときはやって遊ぶときは遊ぶオンオフの切り替えが上手いBlackWiz。同じチームになって更に親しくなったJoxJoに、父親のような存在のbailコーチ。

NORTHEPTION のメンバーはMeteorにとって、公私ともに最高の仲間となった。

観客を前に感じたプロの醍醐味と、日本のファンへの想い

Meteorは韓国でオフライン大会の経験はあるものの、コロナ禍の影響で無観客での経験しかない。今回の「VCT Stage 2 Japan Playoff Finals」が初めての有観客、しかもいきなり1万3千人もの前で試合をすることになったのである。最初の試合こそ緊張もあって敗北を喫したが、緊張が解けてからはチームが本来の実力を存分に発揮した。見事に優勝を果たした大会の感動をMeteorはこう振り返る。

「こんなに大勢のファンの皆さんが応援してくれているんだなということが実感できたし、この感情を味わうためにプロゲーマーになったんだ、とさえ感じました」

大会を通じてMeteorが得たものは多い。有観客のオフライン会場に慣れ、試合を通じてチームの実力を伸ばすこともできた。優勝できたことで自分の実力にも自信がつき、世界大会に向けてこれからさらに頑張ろうというモチベーションアップにもつながった。

実は、優勝インタビューに備えてMeteorは事前に日本語のコメントを用意していた。日本のファンの前で、どうしても日本語で喋りたかったのだ。結局、本番では緊張と興奮で頭が真っ白になり考えてきた内容は全部吹き飛んでしまったが「今ドキドキしていて話ができないです」と、何とか日本語で答えることはできた。

チームに所属して数ヵ月ながら、Meteorは積極的に日本語の習得にチャレンジしている。勉強を始めた最初のきっかけこそ「ゲーム面でチームメイトたちと詳細なコミュニケーションをとるため」だったが、日本のファンが増えるにしたがってファンとのコミュニケーションのためにも勉強が必要だと感じたからである。

「日本代表として世界大会に行くのだから、応援してくださっている分、恩返しできるように努力したいです」

Meteorの誓い「仲間のために僕がキャリーする」

仲の良さが際立つNORTHEPTIONには、全員が力を合わせて頑張ろうという雰囲気がある。しかし、デュエリストという役割の特性上、試合中はMeteorがチームを引っ張っていかなければならないシーンも多い。

「僕が崩れたらチームも同時に崩れてしまうような気がして、たとえ辛くてメンタルが崩れそうになっても、それを表に出さないようにしています。プレッシャーは正直かなりあるんですけど、メンバーが僕を信じてくれているので、頑張りたいという気持ちも強いです」

プレッシャーと戦い続ける苦悩を、Meteorは絞り出すようにそう表現した。オフライン環境でプレイできることで、団結する気持ちが高まり、より一生懸命プレイに取り組むきっかけにもなっている。

チームの志気を高めてくれるムードメーカーDerialy、黙々と自分の役目を果たすxnfri、チームリーダーとして弱みを見せず頑張ってくれているBlackWiz、IGLとして通訳もこなしてくれるJoxJo。そんな彼らの頑張りに応えるためにも「僕がキャリーしないとですね」と、Meteorは自ら誓いを立てた。

「日本にはZETA DIVISIONだけじゃなくほかにも強いチームがあること、NORTHEPTIONという名を世界に知らしめたいです。そしてMeteorという選手はこんなに上手いんだというところを見せたいです」

Meteorはまもなく世界に挑戦する。かけがえのない「仲間」たちとともに――。

(取材・文 スイニャン)


NORTHEPTIONが日本代表として出場する国際大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage 2 - Masters Copenhagen」は、7月10日(日本時間)からTwitchYouTubeにて配信予定。

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