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心の穴を埋める買い物

最近欲しい物があり、それがなかなかに高価な物なので、
どうしてそれが欲しいのかをかなり掘り下げて考えている。

その中で、過去の私はいつも心の穴を埋めるために買い物していて、
自分ではない誰かになるために物を手に入れていたことを思い返した。

私は昔から物が好きだった。
服もカバンも帽子も好きだし、
メイク道具にポーチ、インテリア雑貨や家具家電なども好きで、
物といってもジャンルは様々だ。

その中でも特に、服やカバンなど、身につける物が好きだ。
カバンの中に入れて持ち運べるポーチなども大好きで、たくさん持っている。
自分の近くに置いておける物が特に好きなようだ。
今思うと自分の自信のなさの表れのような気もする。

物を集めていく中で、たくさんの失敗も経験してきた。

20代の頃は、とにかくたくさんの数の服やカバンを持っていて、
部屋のクローゼットはいつもぐちゃぐちゃだった。

若い頃はお金がなかったので、
セールやプチプラ服を狙って購入することが多かった。
なんとなく安いから、流行っているからという理由で購入していたため、
一つ一つの服に愛着を感じることは滅多になかったし、
ワンシーズンも立たないうちにその服には魅力を感じなくなり、
クローゼットの奥に埋もれていった。

たくさんの服があるのに、いつも「着る服がない」と嘆いては、
また別の服を買うという負のループに陥っていた。

20代後半になり、実家を出てからは、
気持ちも新たに、持つ服やカバンの数はグッと減った。

しかしこの頃、仕事やプライベートでかなりのストレスを抱えて
メンタル不調に陥ってしまうほどで、
自分への自信を無くしてしまった時期があった。

自信をなくすと同時に、自分以外の人はとても輝いて見えた。
特にインスタでオシャレな人を見つけては、
食い入るようにその人の写真を見つめて憧れた。

やがて、その人と同じ物が欲しいと思うようになり、多少高価な物でも無理をして買うようになった。

ただ、当然だが同じ物を持ってもその人のようになれるわけもなく、
買った直後には高揚感が得られたものの、
しばらくすると逆にその人達との差に打ちのめされ、
さらに自信をなくしてまた別の物を購入するという、
もっとひどい負のループに陥った。

何を買っても満たされない思いだった。
クリスマスだからと大奮発して買ったセリーヌのラゲージも、
よし今から買いに行こうと勢いで買ったマルニのトランクバックも、
どんなに高価なものでも、大切に思うことができない。
買った直後の高揚感もすぐに薄れて、また心にぽっかり穴が空く。
その穴をまた別の物で埋めたくなる。

好きなはずの買い物に苦しめられた日々だった。

このままではいけないと、
自分の心についてじっくり考え、
自分を知る長い旅に出た。
その中で心というもののおもしろさ、奥深さを知り、
それを扱うことを自分の生業にしたいと思った。
精神保健福祉士の資格を取り、
カウンセラーとして働き始めたのは、
この経験が一つのきっかけでもあった。

そうしているうちに、身の丈にあった物を買うことや、
自分が本当に好きな物だけを持って、
長く大切に使うことに憧れるようになった。
持っているものの好きなところを自分の言葉ではっきりと語れて、
お気に入りのものに囲まれる生活がしたい。
輪郭のぼやけていた自分の好きを、はっきりさせたい。

買い物が好きという本質は変わらない。
憧れのあの人が持っているからという理由で買いたくなる気持ちは今でもある。
でも、それを手に入れたところで自分は自分のままであり、
憧れの存在になることはできないのだ。

手に入れた物はいつだって、その時の自分の心を表している。
だったら、自分が本当に好きかどうかを軸にして、物を手に入れたい。
吟味して手に入れたものは、自分の分身のようだ。
自分が好きだと感じる物を大切にすることで、
自分を大切にしているような気持ちになれる。

自分がずっと大切にできる物を手に入れたい。
どれだけ悩み考えて買ったとしても、やっぱり違ったと失敗することもある。
でも私は物が好きな人間として、
これからの人生をかけて、お気に入りの物に囲まれる生活を探究し続けたいと思う。



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