見出し画像

鳥になりたい

「鳥になりたい」という人がいる。
気持ちはよくわかる。
思いっきり羽を広げて大空を飛んでみたい。
そういうことだろう。

でも、「鳥になりたい」というのは、人間の記憶を失って本当に鳥として生きていきたいのか、それとも人間の脳を持ったまま姿だけ鳥になりたいというのか、どっちだろう。

もちろん後者ですよね。

でないと空を飛んだ時の感動なんてありはしない。

じゃあ鳥になったら、人間は本当に幸せなのだろうか?

小鳥は常に群れて暮らしている。何故なら天敵が多いからだ。身を守るために群れで行動している。だから常に忙しそうにしている。
もう少し大きめの鳥でも、大概は常に食べ物を物色して摘んでいる。
鳥は飛ぶためにとても軽量な身体を持っている。だから身体の中に長い間食べたものを持っていては重たくなるのだ。
人間のように食べたものを何時間も身体の中に持ってゆっくりとエネルギーに変えるなどということはできないのだ。
だからほんの少しでも食べない時間があると死んでしまう。
その日暮らしというと大袈裟だが、常に今食べるものを今調達するというスタイルなので常に食糧危機への不安が尽きないだろう。
また大型の鳥は捕食者としては頂点にあるから比較的ゆったりと生きているだろう。でも身体が大きい分獲物も大きく、捕まえるのにも多大な労力がいるだろう。

このように鳥は飛んでいるだけではなく、過酷な生活を強いられているのだ。
地震が来たら飛べばいいだけだろう?と思うかもしれない。
でも嵐の時は人間のように家の中に身を潜めるところなど無いのだ。

人間は何故何時間も食べていなくても活動できるのか?人間に近い猿の仲間でも割といつもなにかモグモグと食べている。
その理由は、人間は火を使うようになり、進化したからだというのだ。
生肉は体内では腐るから長い間持っていることができないから、早く消化してしまわないといけない。しかし脳が進化し火を使うことを発見した人間は、その危険性が減ったため消化吸収に時間をかけることができるようになった。そのために「空いた時間」ができ、クリエイティブなことに使う時間を持てるようになった。そして「生きるだけの人生」から「楽しむことができる人生」へと進化した。

しかして人間は他の全ての肉食、雑食生物と違い、唯一生の肉が食えなくなった。その代わりに楽しむ人生を手に入れたのだ。

もう一度訊こう。果たしてあなたは人間の脳を持ったまま鳥になりたいか?生きるためだけに生きている鳥になりたいか?
人間の脳を持たずにして鳥に生まれたらそれはそれで運命だ。しかし人間の脳を持った鳥は、食べるだけ生き延びるだけに一日中の労力を費やして生きていかねばならないのだ。そんな辛い思いをするくらいなら私は鳥にはなりたくない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?