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【2019年11月13日・未来のBUTAI#3】 『起業するなら知っておきたい、理想的な資金調達』

浅草橋のインキュベーション&コワーキングスペース『BUTAI(ぶたい)』では、イノベーター同士が出会える場を提供すべく毎週水曜日の夜にイベントを行っています。

第3回目は「起業するなら知っておきたい、理想的な資金調達」をテーマに、11月13日19時30分よりイベントを開催しました。

今回は、エンジェル投資家として日本やシリコンバレー・東南アジアのベンチャーやVCに出資されているMKマネジメント代表取締役社長 三木 寛文氏と、当社bajjiからはCEOの小林 慎和がディスカッションを行いました。今回はその様子をお届けします。

まずは、三木氏の講演から。今回は三木氏が行うサポートの中からファイナンス面についてを中心にお話しいただきました。

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ベンチャーの企業ステージを理解する

まずはベンチャー企業の企業ステージについて。
プロダクトができる前のステージであるシード、プロダクトができて数字が少しついてきたアーリー、そして数字がかなり上がってきたので思い切って億単位の調達がしたいということになればシリーズA、B、C……とステージが上がっていきます。
それぞれのステージの中でも、今回はシードとアーリーのステージに関するお話でした。

三木 寛文氏(以下、三木):「シード期のおすすめは、できるだけ自己資本で、まずは1人で立ち上げていただくことです。3人で立ち上げて、3分の1ずつ株式を持って出資していくというのはよくありますが、できるだけ資本は最初1人で持つべき、というのが僕の考えですね。Googleは5人で5分の1ずつ株式を持っているので、必ずしもそうすべきというわけではありませんが……。しかし、やはり日本の会社法によると3分の2を持っているとすべての権限を得られますし、3分の1持っていると(※ライター補足:株主総会の特別議決に対する単独の)拒否権を持てますので、最初は単独で立ち上げて、そこに仲間を呼ぶという形がいいのではないかと思います。その後、時価総額を上げて資金調達をしていく、という形になります」


資金調達の方法と創業時に起きる問題&解決方法

他の調達方法としては、創業者支援融資や政府・自治体による助成金などを活用していくほうが、歴史は長く、ぜひやってほしいとのこと。助成金はきちんと申請すれば受けられるものであり、融資はお金を返却すれば良いものです。資本政策は、一番初めが重要で、取り返しがつかないため、ぜひ覚えておいて欲しい、という話をされていました。
また、すでに複数人で会社立ち上げ、株式を持ってしまっている人に対しては、以下のようなアドバイスもありました。

三木:「たとえば3人で3分の1ずつ持った場合、創業者間契約を締結しておきましょう。そうでないと、VCなどは出資してくれません。契約に必ず書くポイントとしては、誰かが辞めたら生株の返還や、ベスティング(ストックオプションの利用制限)などですね。できれば、創業者1人が8~9割のシェアを持って欲しいです。あと、経費の使い方や意思決定のルールを決めておくことも重要です。たとえば、大企業でコンサルにいた方などは、毎日のようにタクシー使う方もいますから(笑)。経費の使い方、意思決定のルール、誰が決定するのかを、きちんと決めておいて欲しいですね。『友達だから』というのが一番怪しいのです。友達と会社を立ち上げたとしても、その瞬間から戦友に切り替わるので、友達という関係は切り替えなければならないですね」

そんな三木氏がおすすめしていたファイナンスの参考書は、こちらです。
・起業のファイナンス
・起業のエクイティ・ファイナンス
馬田隆明さんのスライド

一度ざっと全体を読んで、後々まで辞書として使って欲しい、という用途を提案されていました。

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アーリー期の問題点とベンチャー系イベントについて

そして、続いてはシード期から会社が少し成長して、アーリー期へ移ったときのお話。

三木「アーリーになると、はじめてVCと向き合うことになります。その時に一番知ってほしいのは、そもそもVCはどういう人達なのか、ということ。簡単に言うと、VCは、個人や法人、銀行などから出資を受け、それらに10年でお金を返すというものです。基本的には10年、プラス2年が最長期限なので、開始してから何年経っているのかを確認することは、強くおすすめします。ファンドが組成されて5年目だったらあと5年でお金返せと言われますから」

そして話は、ベンチャーの経営者などが参加するイベントの話へ。

三木「ベンチャーのイベントって参加するべきですか?とよく聞かれます。ベンチャーに重要なのは資金調達と採用。この2つにつなげるために、イベントに参加して認知を上げるのは大事ですね。ただ、ビジネスモデルを模倣されてしまうケースもあるので注意してください」


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創業メンバーの選び方

さて、ここからは三木氏の先程の講演をもとにした、小林とのディスカッションです。まずは、三木氏が最初に話した創業メンバーの組織作りの話から。

小林「創業チームをどう作るか、というところはよく問題が起きるポイントですね。僕自身、よく20代、30代の創業者と会うこともあるんですが、ケンカ別れしているケースを多く見ます」

三木「僕は、一緒に働いたことのある同僚か、親友で探すのをおすすめします。1回でうまくいくことは、まぁありえないです。やっていく中で、1~2回事業内容を変えていくと、付き合いの少ない人たちは、『社長のことを信用できなくなりました』と離れていくんですよね。それが、同僚や親友であれば、『お前がやるならついていくよ』と言ってくれる。そういう人とやるべきだと思います」

小林「もし失敗したとしても、それですべてが終わりなのでない。そこから頑張って成功している人もいるので、それで終わりではないということを伝えたいですね」

三木「そうですね。失敗した経緯や、それにどう対処したかはきちんと聞いています。それでもやはり、私の経験だと、半分くらいの会社で創業メンバーは途中で辞めて行ったりしますね」

小林「親友や同僚と会社を立ち上げて、2~5人とかで始めると思うんですが、そこに新規の人を入れる場合、どんな人が良いのでしょうか?」

三木「たとえば、一週間くらい一緒に寝泊まりしても問題ない人ですね。できれば同じ職種ではない人が良いと思います。たとえば社長が営業なら、エンジニアやデザイナーを取ったほうがいい、というのはありますね」

やはり創業時は人数規模が小さく大変な時期であることから、かなり人的な問題が多く発生するようです。そこから、三木氏が投資する側となった時のお話へ。

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ロジック派か直感派か

小林「投資はロジック派ですか? 直感派ですか?」

三木「ロジックと直感の組み合わせですね。そして8割は創業者を見て、残りの2割で「経営チーム」と「市場選択」を見ます。なぜ8割は創業者を見るかというと、ベンチャーはどんどん状況が変わっていくので、その途中で心が折れないか、というのを見ています。社員にも取引先にも裏切られるということもあるので、そんな中でもサバイバル能力があるか。
また経営者は、自分が作ったビジョンの中に、自分より優秀な人を巻き込む必要があるので、その能力があるかどうかというところも見ています。本気でサポートを検討する場合は、幼少期のことからご両親のこと、部活のこと、今の生活についても聞きます。
チームのメンバーも、さっき言ったように、メンバーの職種がわかれているか、ベンチャー経験はあるか、ベンチャー経験がなくてもプロダクトを作れるかどうか」

小林「最短、何秒で投資を決めましたか?」

三木「会った瞬間……とまでは言いませんが、プレゼンを受けている最中に、投資をしたいからどうやって投資の話に持っていこうかなと考えていることはあります」

小林「(投資するところと、しないところの)違いはなんですか?」

三木「うーん……それは直感かもしれません(笑)。年間400~500件プレゼンを聞いているうち、(投資したいと思うのは)30件くらいとは思うんですが、タイミングもあるんです。社長も事業も好きだけど、バリュエーションが上がりすぎて、このタイミングで投資するのは違うかなというのはあります」


三木氏の投資家としての立ち位置

そして、三木氏自身の投資家としての立場を聞かれ……。

三木「僕は結構、中に入るタイプです。求められたら、会社の創業期のメンバーだとベンチャー合宿のプログラムを作ったり。会社のメンバー、役員やメンバーとのコミュニケーションも取るし、仲裁に入ることもあります」

小林「メンバーをまとめられることが多いんですか?」

三木「結構まとめることも多いんですが、まとめないほうがいいパターンもあります」

小林「あえて流すケースですよね」

三木「結構多いのですが、一人で会社を作って、何人かいい人を入れていったあとに、役員の入れ替えが起きることがあるんですよね。その時に創業メンバーで、すごくやる気はあるけど能力が追いつかないから、このまま役員にしておくのは難しいなという人は、もう早めに(去ってもらう)……」

小林「やらないといけないことですが、辛いですよね」

三木「そうですね。ただそういう時、『あなたの目指す会社は甲子園を目指すんですか? それとも地方大会までで仲間と盛り上がれればいいんですか?』と聞くんです。『甲子園を目指したいんです』というチームであれば、全国を回ってメンバーを集めるじゃないですか。故障していて甲子園までに間に合わないというメンバーは外しますよね。そういうことをやらなきゃ、世の中変えられないと思うんで。そう思っている人なら、きちんとそういうことをしていかなきゃ、という話はしています」

小林「なるほど。では、企業の成長ステージの話で、企業側の立場に立つと、何があれば投資してもらえるんですか?」

三木「シードは気合ですね。ガッツが強かったり。投資家に対して思いをしっかり伝えられると良いと思います。シリーズA、Bとなってくると、具体的な数字を見せることができて、この資金をどういうふうに活用したらどこまで上がれるか、ということを説明するのがいいかなと思います」

今後の日本にあったやり方・領域

小林「では最後に、注目している領域は?」

三木「そうですね、いくつかありまして……ちょっとIT系と離れるのですが、医療(ゲノム創薬)、素材繊維、宇宙といったところは、日本がやらなきゃいけないところだと思っています。AIも自動運転も、IT系は、ほぼほぼ日本は負けるなというのがあって。
日本が優勢でいられる分野は、世界でいちはやく高齢化社会を迎える中で、臨床実験ができる医療やヘルステックなど。中でも日本がすごいのは、医療機器と創薬の分野、それをAIと組み合わせながらやっていくというところは、面白いのではないかと。
今、経産省系のNEDOや未踏のアドバイザーをやっているのですが、国としても、そういう領域を支援していくことになっています。日本の得意なものづくり領域なので、日本にあっているかなと思います」


最後に

三木氏と小林の対談ののち、会場のみなさんを巻き込んだ質問コーナー、そして立食式で三木氏を含めた歓談タイムを過ごしました。

投資家としても、企業の相談役としても活躍されている三木氏ならではのお話をたくさん聞くことができました。これから起業を考えている方にとって、参考になるものであれば嬉しいです。

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イベントに参加してくださった皆様、ありがとうございました!

BUTAIでのイベントは12月分まで開催が確定しており、是非多くの方に足を運んでいただきたいと思っています。

▼11月27日開催

▼12月4日開催

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