見出し画像

カリスマ経営の功罪

”本気で100年企業を目指すんだったら、経営者が交代するくらいで業績が落ちてちゃダメなんですよ”

と、尊敬する経営者のKさんがぼくに穏やかに話してくれたのは今から4年まえ。必ずしも美容業界だけの話ではなく、様々な業界でカリスマ経営だったからこそ大きく成長し、カリスマ経営だったからこそ経営者交代に耐えられず転換点にいる企業がたくさん現れているような気がする。


1.ぼくが考えるカリスマ経営の定義

 ①かなり小さなことまで殆ど全ての経営判断が経営者のトップダウンで決定される。

 ”岸本さん、ぼくは社長だけど毎朝一番に出社して掃除するんです。みんなの出勤してくるときの表情が分かるから…”こんなことを仰る社長もいました。概して経営者には細部にこだわる人が多いのも事実。そして、改めて”細部に神は宿る”とも思えます。

 ②経営者がとても魅力的であり、たとえ従業員にとってマイナスの判断ですら、その人格的魅力で従業員が受け入れる土壌がある。

 こんなことがありました…

 コンサルタント時代、突然の携帯電話への着信。出てみると有名外食企業の会長から直電。”いやぁ、今テレビの取材中なんですけど、それよりも岸本さんのお電話の方が大事なので、トイレこもって電話してます。”

 一瞬にして大ファンになりました。こんなにぼくのことを大事に思ってくれている…カリスマ経営者にはこんな人を虜にする行動が備わっていることが多いように思います。

 ③その企業の現在の繁栄が、過去の経営者の判断によるところが大きい。

 ④結果として、経営者の交代が難しい

  従業員は経営者の経営判断一つ一つを見て、”自分が働くべき場所かどうか?”を見極めています。ただ、カリスマと呼ばれる経営者に対しては別格で、経営判断ではなく”〇〇さんのことを盲目的に信じる”になっている場合が多く、決して他の人物では代替が効かない。だからこそのカリスマともいえる訳です。


2.カリスマ経営のこれから

 20年間の経営コンサルタント期間、恐らく300社を超える会社のお手伝いをしてきたが、その80%以上は中小企業であり、経営者によるトップダウンだった。

 だから意思決定がとても速いし、業績が伸びるときは一瞬で伸びる。年商3000万円から年商3億円まで伸びるのに、たった2年…などということはざらにある。正直急成長するのに会議はいらないし、意思決定は早ければ早いほど良い、というのは常識ともいえる。

 ただ今ほど企業がその存在価値を問われている時期はないように思う。売上や利益だけが大切なはずがない。でなければ、テスラの株価とトヨタの株価の関係が説明がつかない。つまり、企業としての成長はあくまで手段であり、もっとサスティナブルな存在意義が必要なはず。その意味でカリスマ経営者にとって最も重要な課題は経営者が替わっても存続する存在価値だと思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?