BE RUNというレースを走ってきた「意味」についての考察と覚書き 〜レースレポートを題材にして〜

Overture

51km地点、第2エイド直前。この時点で3位、後ろを振り向けば4位の選手がいた。途中まで、あわよくば入賞を思い描いていたが、手元からスルリとこぼれ落ちそうな瞬間だった。

「36km過ぎて緩やかな斜面〜フラットなセクションに入ったら、尻上がりにペースを上げていく。」その戦略は、前半の急登・激下りセクションで見事に破壊された脚にはキツいオーダーだった。潰れたなと自覚してから、もう90分も経過している。ここから回復することはもうないだろう。

第2エイドに入った瞬間、一瞬スローモーションがかかる。青色のゼッケンの選手だ(BE RUNは80km以外に、20kmや40kmの部があり、部門毎にゼッケンの色が異なる)・・・2位の選手!?随分先行していたはずなのに。その選手を一瞥し、イチローさんのいるサポートエリアへ。手早く補給をする。

たかが残り28kmだぞ。余裕ぶっこいた補給しやがって。ナメんなよ。。。おれの闘志に再び火がついた・・・!全力で、2位の選手はチギる。むしろこのセクションから先頭をもう一度追いかける。潰れても構わない。それは実力として受け入れる。

覚悟と意志を決めて、エイドステーションを飛び出すことにした。

Why do you Run

なぜこのレースを選んだのか。その「理由」については先日投稿した。

だけど、このレースを走る「意味」は何だろう?

そもそも、わざわざフランスの(それもアルプスの玄関口の里山の)山道を、1週間も会社を休み、ちまちま貯金した十数万円近くのお金を投じて、走りに来ることに何か「意味」はあるのだろうか??

最近、ネットやメディアはよりパーソナライズ化され、日常生活の文脈の中で容易に、こうあるべきだというストーリーを垂れ流し洗脳しているように感じることがある。例えば、Facebookのタイムラインは、(広告を含む)ランニングに関する、似たような投稿やシェアばかりになった。「がんばって練習してレースに行ってダメな結果でも仲間に会えたし自然も素晴らしくこのスポーツは楽しいからめげずに次も頑張っていくのがいいよね!」この繰り返しはもう読み飽きた。このフォーマットを作ったのは誰なんだ。

自覚をすることなく、どこかの誰かの描いたフォーマットに乗っかって、何かをやっていやしないだろうか。ウルトラトレイルに限って言えば、みんな行っているからUTMBに行くという話になっていないだろうか。トレランをしたら非日常を感じられてココロが解放されるというようなストーリーを求めて、友達に誘われるがまま、山に行ってないだろうか。ツアーやキャンプやコミュニティに参加して(または立ち上げる側になって)、半ば強制的に「キラキラ楽しいトレイルランニング」を演じる一部の人として、消費されてしまっていないだろうか。

仕事や家庭など日常に忙殺されて、日々の生活や人生に何かの意味を見出したくて、その結果が誰かの作ったフォーマットをなぞっているだけだったら、ゾッとする。そんな人生や冒険やランニングに何の「意味」があるんだろうか。

Alone

日本人初参加。出場したのも自分だけだった。

レース当日、予定通り2時に起きる。朝食を食べる。テーピングを貼る。装備を確認する。行動計画を見直す。イチローさんと合流する。トイレを済ます。アップをする。スタート地点に整列する。予定通りの一連の流れを淡々とこなす。

スタートの合図があった。80kmはソロの部とリレーの部があり、同時にスタートする。5名くらいが第1集団で抜け出す。リレーの部とおそらくソロの部で誰か混じっているのだろう。

トップは気にせず自分のペースで淡々と進むだけ。設定していた心拍数とRPE(主観的運動強度)を維持して。第2集団の先頭でトレイルに入る。

6km地点。一つ目の急登まで後ろに誰かいたけど、下りに入ったら差がついた。スキー効果なのか思ったより下れるようになってるのかな。

17km地点。二つ目の急登を登りきれば、第1エイド。途中でモンブランらしきものも見えた。景観は想像以上にいい!雰囲気は八ヶ岳に似ている。トレイルも一部田んぼのようなセクションをのぞけば走りやすく特に難しいところはない。

ただ、冬場は登りのトレーニングを控えていたのが堪えて、思ったよりペースがあがらない。ただまぁこれも予想の範疇。心拍数もRPEも予定通りだ。

20km地点。第1エイドで、イチローさんと合流。トップと9分差。まぁ悪くないかな。

第1エイドを出発してすぐ、その後も林道の途中でコースロストをしてしまう。マーキングがオレンジで、アイウェアからの視認と同化してしまった模様。いずれもリレーで並走する兄ちゃんの掛け声で助けられた。

26km地点。45分下るとウォーターエイドがある。イチローさんも予定通りかけつけてくれた。トップと11分差。5分ロストした割に差が開いてない?次の登りをクリアーすれば、狙い通りペースをじわ上げするつもりで追走を開始したい!

36km地点。さっきの気合いも束の間、3つ目の登りを登る途中で突然スタミナ切れ。心拍数とRPEを維持できない。「げ、潰れた」という感じ。

しばらく走ると後続からきた3位の選手に抜かれる。そこまで快調なペースでもなさそうだけど、こちらは全然ペースアップができず対応不能。

45km地点。できる限りのペースで走るが、このままだとおそらく3位も厳しく、誰かに抜かれちまうだろうなと思い始めていた(冒頭に戻る)。

Intense

このレースに出場する事に、特別な意味なんて求めていなかった。

あったのは、立てた目標は達成してゴールしたい、という意志だけだった。その想いは、走っている中で膨らんだり縮んだりしたけど、ラスト28kmでスパートをかけてからは、強烈なものになった。

今回の目標はMAXで2位の入賞。有力選手リスト上、2番手だったのは事前に知っており、1番手のGay Anthonyは別格。そして、彼とはどれだけの差を詰めてゴールできるのか、というのが現実的な落とし所。もちろん、鼻息荒くして優勝を狙う!とカッコつけてみたいところだけど、おれは御伽話の世界に住んでる人間じゃない。

53km地点。急なペースアップと気温の上昇で、左のハムストが攣り始める。ナトリウム摂取のためにジェルを一気に3つとる。今度はインシュリンショックの関係か左手が痺れ始める。だがそんなの関係ねぇ!

55km地点。まだ後ろにぴったり3位の選手が追いついてくる。振り返らない。気配だけを感じる。この瞬間、この瞬間のために、冬場平坦な道のりを淡々と走っていたんだろうと思い始めた。不思議と当時の心拍数とRPEが戻ってきた。

60km地点。第3エイド。おそらく後続は引き離したと確信して到着。トップとの差はほぼ変わらず。やっぱ世界レベルはすげぇや。

残り18kmは、これまでやってきた峠走を思い出して駆け抜ける。峠走はここ最近ずっと封印しているけど、走り方の感覚はカラダが覚えてるはず。信じた通り、ある程度走りきれた。

72km地点。あとはほぼ平坦なロードを走るだけになったのに、ここにきて左のハムストが完全に攣る。うぐっとなって止まる。レースで完全に攣ったのは始めてだ。最近トレラン始めた若い子の足が攣るっている悩みに対して、偉そうに攣ったことないからわかんねぇやって言ってたのを思い出す。因果応報だな、これは。反省。後から分析して解決しよう。

75km地点。ロード長いだろ!絶対ITRAのスコアのためだろ!!っていうロードをひーこら走る。20kmとか40kmの部の人たちと同じようなペースになってしまった。

78km。ゴール。何とか2位で帰ってこれた。

I Live for That Energy

今、写真を振り返ってみると、どれも良い顔をしてるなと思う。自分で言うのはキモいとは思うのだけれど。素直にそう思う。

昨シーズンが終わり、これまで信じてきた色々な練習を封印して、全く新しい環境・練習内容を構築してきた。

レース選びも、今年はまっさらな気持ちで自由に自分で調べて、勝手に決めた。スポンサー?もちろん完全に自腹。

これまでやってきたことを分析して、課題を見つけて、対策を立てて、こうしようと決めて、実行して、軌道修正して、この繰り返し。意味は求めず、意志があるだけ。

こうした作業や結果の後に、こういう顔もできるんだ、と知れたことが、今回の遠征を通じた最大の発見だった。ウルトラトレイルと向き合うことは、自分自身が何者か・その強み弱みを知り、再定義・再構築・再発見していく旅でもあると思う。

まだ2017シーズンは始まったばかり。次の本命レースは未定。課題は多い。一つ一つやっつけていこう。

【参考】レースのデータ公開

レースレポート用に作成した一部を抜粋してレースのデータを公開します。ご興味あればご覧ください。

(有料部分は、生データや実録、ちょっとしたTIPS・秘密のようなものを書いてます。今回は再現の効かないレースデータなので価格は高いです。ここまでの内容で気に入って頂けたら「スキ」ボタンを押して頂けると執筆の励みになります。)

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