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目標達成のために、目標を公言することは有効か?

目標の達成確率を高めるために、どのように行動し発言していくべきか、先日とあるツイートが目に飛び込んできて、考えるきっかけになった。

吉原くんのツイッターでは復帰・優勝戦と公言して、その大会まであと●日あるというような内容だった。これに対して、自分は脊髄反射的に以下のようなツイートをした。

そして、田中さんからも同様の意見だというリツイートをもらった。

これまでの成功体験の経験則から、自分の場合は、目標を公言したり紙に書いて貼っておいたり、成功した場合のイメージを膨らませたりすると、だいたいの場合、散々な結果になってしまうパターンが多い、ということから上記のような発言をしたのだ。

ところで、科学的には成功確率を高めるためにはどのような行動や発言をした方がいいのだろうか?これについて、たまたま読んでいた『その科学が成功を決める』という本の中に大いに参考になる部分があった。

この本は様々な自己啓発法が本当に有効か科学的に検証するというもので、まさに第三章(実験Ⅲ)の「イメージトレーニングは逆効果」の部分が参考になったので、一部を引用しよう。

ペンシルヴェニア大学のガブリエーレ・エッティンゲンとトマス・ワッデンは、減量プログラムに参加する肥満体の女性グループを観察した。プログラムの中で女性たちは、様々な食事の場面を思い描くように頼まれた。友人の家で、美味しそうなピザが出された場面などだ。参加者の想像は非常にプラスなイメージ(例えば「私はちゃんと自制して、ケーキやアイスクリームには手を出さない」)から、非常にマイナスなイメージ(「私はすぐに飛びついて、自分の分ばかりほかの人の分まで食べてしまう」)にまで分かれた。女性たちを一年追跡調査した結果、マイナスのイメージをもった女性のほうが、プラスのイメージをもった女性より平均11.8キロの減量に成功していた。
エッティンゲンは数々の実験で、ほかの状況でも同じ結果が示されることを証明した。その一つが、クラスメートにひそかな恋心を抱く学生たちに、様々な場面を想定してなにが起きるか想像してもらう実験だった。たとえば誰もいない教室で座っていたときに、ドアが開いてお目当ての相手が入ってくるという画面。ここでも、想像の内容はプラスとマイナスで評価された。ハーレクイン・ロマンスの愛読者も赤面しそうな筋書き(「私達の目があい、お互いにこの恋は生涯一度のものだとわかる」)から、もっとそっけない筋書き(「二人とも相手がいなくて自由の身、彼はにっこりして「やあ」と私に声をかける。すると私はなぜだかわからないけれど、もうボーイフレンドがいるのと口走る」)まで。そして5ヶ月後に実際のなりゆきを調べると、プラスのイメージを描いた学生のほうが、相手に恋心を打ち明けてもおらず、成果は上がっていなかった。
まさにおなじことが、仕事上の成功にも言える。エッティンゲンは最終学年の学生に、大学を卒業したあと理想の職場で働く自分の姿をどれくらいの頻度で想像するか書いてもらった。二年後の追跡調査の結果では、成功した自分を思い描くことが多いと答えた学生は、求人への応募回数も会社から声をかけられた回数も少なく、クラスメートにくらべてかなり給料が低かった。
自分の成功を想像することが、なぜ悪い結果につながるのだろう。研究者たちの見解では、素晴らしい人生を思い描いてばかりいると、途中で遭遇する挫折に対して準備ができてないからだという。あるいは現実逃避に浸って、目標達成に必要な努力をないがしろにするためかもしれない。いずれにせよ、研究結果から読み取れることは明白だーー完璧な世界を夢見ても、気分はよくなるだろうが、夢を現実に変える力にはらなない。

このようにプラスのイメージを持つことは、目標達成にはマイナスに働くというのが筆者の調査結果だった。さらに、では具体的にどのような行動を取ると成功確率が高まるのか、これも科学的な実験を参照に行うべき指針が本書にはまとまっており、これらを個人的に下記の通り簡単にまとめてみた。

●Doリスト
段階に分けた着実な計画を立てる
自分の目標について人に話す
成功した場合に起きるいいことを考える
目標に向かって前進できたら自分にごほうびを出す
進み具合について記録(日記やチャート)をつける

●Don'tリスト
成功した人物を思い浮かべてやる気を起こす
失敗した場合に起きる嫌なことを考える
マイナスになること頭から締め出す
意思の力に頼る
成功者になったすばらしい自分の姿を想像する

・小さな目標を立てる
 →私達の調査で目標達成に成功した参加者は、計画を立てていた。作家のジグ・ジグラーに、有名な言葉がある。「あてもなくさまよっていたら、ある日突然エベレストの山頂にいたなどということは、ありえない。」

・目標について人に話す
 →成功した参加者は失敗した人たちより、自分の目標を友人、家族、同僚などに話すことが多かった。誰にも話さないほうが、失敗したときに恥をかかずにすむ。だが同時にそれまでの習慣や日常から抜け出せないため、人生を変えにくい。そのことは心理学の実験でも裏付けられている。人は自分の約束や考えを公表すると、それらを守り通そうとする傾向が強いのだ。

・目標を達成したときのプラス面を考える。
 →完璧な自分を夢想することとは違う。目標を達成したとき、人生にどんないいことが起きるかを客観的に数え上げるのだ。

・自分に褒美を出す、日記をつける
 →成功した人は、小さな目標が達成されるたびに自分に褒美をだすことを、計画の中に取り入れていた 
 →成功した人たちは、自分の立てた計画、進み具合、プラスになったことがらや自分への褒美を完結に書き留めていた

・先延ばしグセを克服する方法
 →「ほんの数分」手をつけてみるよう説得されてやりはじめた場合は、最後までやり通すことが多い。この「ほんの数分」の原則が、先延ばし傾向の克服に有効なことは研究でも証明されている。

さて、上記の内容を鑑みて、吉原くんのツイートのアプローチは彼の目標成功にあたって有効なのか検証してみよう。

まず、「復帰戦・優勝まで」という点で、「自分の目標について人に話し」ている。また「まで23日」や練習の記録、体重など「進み具合について記録」もしている。「もっともっともっといけそう」「ベスト更新」という発言からはそれ自体が「目標に向かって前進できたら自分にごほう」にもなっていそうだ。このツイートだけではわからないが当然練習も段階にわけた計画もしているだろうし、そういう意味では、成功確率が高まりそうな内容となっていると言っていいだろう。前述したDon'tリストにあるような内容も入ってなさそうに見受けられるのもいい感じだ。

そういうわけで、吉原くん自体のツイートは成功確率が高まりそうな内容となっており、科学的な論拠からしてもよいのではないかと言ってよさそうだ。

では、なぜ私(共犯者として田中さんも笑)は、こういうアプローチは合わないと思ってしまったのだろうか。少し思い当たるのは、個人的に(特にスポーツに関しては)少々高めの目標を設定してしまいがちな傾向にあることが影響している可能性があるのではないか。例えば、掲げた目標を信じ込もうとして、そうなった場合の自分を想像してみようとしてみたり、逆にそうならなかった場合に奮起させるために失敗した場合を思ってみようとしたり。あと無理やり達成しようと練習するのを意思(根性)で何とかしようとしてみたり。

そういう意味では目標を公言したりすることには何ら問題はなく(それ自体はプラスに作用するということだし)、目標を捉える心のありようの問題なのかもしれない。目標をきちんと現実に達成できるものとして認識し(そもそも目標は高すぎず低すぎず多少ストレッチして達成できる程度がいいのだろう)、周囲に語りかけ腰を据えて確実に目の前の課題を倒して達成していくということができるのが理想なのだろう。

吉原くんにはぜひ目標達成できるようがんばってほしいし、オショーさんもこのアプローチを踏襲して飛躍できるよう祈ってます。

自分はちょっと反省しないといけないなあ……こういうアプローチができるように精進します。学びの多いツイートでした。ありがとうございます。

※追記(4/9) ○○まで何日、Road to ○○がうまくいかない問題、ではどうするといいのかという点について別の書籍が参考になったので追記しておきます。


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