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Re:信越五岳100マイルでペーサーがしてくれた7のこと

この記事について

須賀くんが書いてくれたブログの返信的な形で時系列に近い形で書いてみました。レーサーとペーサー双方の視点をそれぞれ見れて面白いんじゃないかと思ってまとめてみました。

日曜朝のあれこれ

2018年9月16日午前5時20分、鳴るはずの予定のない自分のスマホが鳴る。一瞬、出走せずにペーサー終了のイメージが脳裏に浮かぶ。

「すいません、マーライオンになりました。。。」

黒姫にフラフラしながら到着した時、須賀くんは17位(一時的に18位まで下がっていたらしい)。

100マイルを走ること4,5回。いずれも後半に不調をきたし満足の行く走りが出来たことがない須賀ちゃん。彼の事を知っている周囲の人たち、また本人自身も「またか」と思ったことだろう。

だが、今日は違う。いいや、今までとは違う結果を出さなければならない。なぜなら今日はオレがいるからだ。

黒姫エイドOUTは17位、目標は最低でもトップ10位内、ストレッチで6位以内。横であり得なく無いですか!?って須賀ちゃんが言ってるけど気にする必要はない。これから起こる事項に我々2人で対処していけば十分達成できるだろう。さぁ、今から反撃開始といこうか。

電話をもらった時

話は少し戻って当日の朝。さっきの電話のタイミングの話。正直、DNFの連絡かと思ったけど、どうやら予定より到着が遅れる、というのを律儀に連絡してくれたらしい。まずは状況と症状を確認。妙高と赤倉の間でクエン酸取りすぎて嘔吐した可能性あり、とかなり具体的な原因まで特定して報告してくれた。正直、内臓トラブル皆無の自分にとっては的確な打開策のノウハウは無し。結果的に、どうせ補給できない飲み物なら全部捨てて残り90分くらいで黒姫だろうからサクサク走ってこいと指示出し。赤倉リゾートは思ったより悪くない落ち方で通過したので脳内でベター・ワーストシナリオまで考えつつ宿を出発。

黒姫エイドにて

ツイッターでトップ選手の到着速報しつつ上位陣の選手の状態を確認。ちなみに原さんの補給が洗練されてて本当に参考になった。須賀くんは復調してれば10位くらいで来るかな?と思っていたものの、到着が遅れてる模様。黒姫INの箇所に椅子があったので、そこに座っていた見物のオジさんと談笑をしつつも、通過する選手の様子やエイドの過ごし方を確認。落ちそうな選手や元気そうな選手を目を凝らして見極める。あと事前にスタッフの方にペーサーはデポを取っていいのか聞いたら選手がきたらアシスタントエリアに運ぶのありとのことで荷物の場所は事前に確認した。ちなみに須賀くんのこのやり方は目立つのでおススメです。

そうこうしてたら、須賀くんついに到着。入ってきた瞬間に思ったより脚は死んでないし少し内臓も回復傾向にあるように思えた。まずデポ取りに行くか声かけたら、いるって言うので取りに行く。その間に一芝居打つことを考えつく。それというのは、ともかくギャーギャー騒いでそれに反応する余力があるかの確認。オレのこの手のノリは彼は慣れてると思うけど、それに反応できれば比較的余裕あり、できなければ余裕なしと判断しよう。で、早よ補給しろやとか頑張って騒いでるのにチンタラ補給してるから思わずオレも興奮しちゃって彼の補給を奪ってさっさと行くぞって言ったら、大会関係者の方にペーサーはランナーの荷物もっちゃダメですよ〜!って怒られてしまった。すいませんでした。ってなドタバタ劇してたら、なんか須賀くんも元気になった模様で最後は行くぞ〜って叫びながらエイドを出て行く感じになった。とりあえず最初の元気づけ作戦は成功?

黒姫エイド直後

エイドを出た直後は少し会話のトーンも落ち着かせて、いくつか確認する事項があった。

まずは現在の体調の確認。内臓トラブルは回復傾向とのこと。よしならばこのまま回復する可能性ある。クエン酸がダメが正解でこのままとらなければokだろう。

では次に補給が取れるかの確認。取れるものと取れないものをヒアリング。柿ピーとジェルはいける、あと寿司とかご飯はokとのこと。じゃそれを30分(のちに20分に修正)毎に摂るべしと指南。間隔はこちらで声かけしつつ行くことにした。補給が取れてれば潰れることはない。

そして次にペースを確認。並走したりしつつこんなもんでいいかい?みたいに確認しながら進む。心拍数ベースに須賀くんは考えてたようだけど、とりあえず会話が成り立つくらいのペースで、こちらもこんくらいっていう心拍を見ながら進む。

そして現在の順位とトップまでの差を全てスマホから獲得した情報で伝える。順位よりタイム差が問題なので、いまの順位は気にするな、このペースをまずはキープと。

オレはペテン師かつギャンブラー

と、ここまでの流れを数分で下ごしらえして、こっから、残りの距離で我々が何を目指すのか、須賀くんが信じもしないだろうプランを伝えることになる。

「こっから逆転を狙います。トップ10、あわよくばトップ6位まで行きます」
「ペースはこのままでOK、あとエイドは2分以内で出ること。補給のリズムは崩さない、立ち止まらない。これだけでさっきの目標はいけるから」

当然全くもって信じてもらえないような反応。それはそうだよね、いまの状況やこれまでの経験だと頑張って完走とかそんな感じだもんね。

というわけで、黒姫から笹ヶ峰までに自分がやらなければならないのは、これから起こる事をオレが次々予想してかつそれが的中し、須賀くんがいけるかもしれないという実感を持たせ、オレのプラン通りやれば、さっきの目標はあながちいけるんじゃないか、という希望を持たせかつオレが彼からの信頼を獲得することです。

「じゃあとりあえずこのペースで笹ヶ峰まで行こう。3人くらいは確実に抜けるから」
「あ〜なんか前に人がいる気配がするな〜〜」
「お。ほれ1人見えた」
「ね、どんどん抜いてけるでしょ!」
抜いたらハイタッチもして物理的にもテンション上げるような仕掛けもいれてみました。

多少リスクもあったけど笹ヶ峰までに、ベンチマークにしてた鬼塚さんとの差を15分縮めることができて、また順位も12位、11位の選手も目の前っていうレベルになり、90分前とは須賀くんの目つきも別人の如くになっていた。ちなみに気合が入り過ぎてエイド2分ルールどころか1分で出てしまいオレがオニギリとれなくて、その後にお腹空いたりハンガーノックにならないか割とギリギリラインで走るハメになったのは内緒です。

そしてついに、西登山道入口先の登りで原さんをパス!個人的には、こういうスター選手を後半抜けるというのは勢いづくので、まさにパチンコで言えば確変モード(やったことないですけど)!ちょっと飛ばし気味の不安もあったけど、こういう時は流れがきてる。ギャンブルに一つ勝った感じだった。

予想外の刺客(死角)

今回、一点だけ予想だにしてなかったのは、大橋林道エイドを出た直後に後ろからトモさん達がきたことだった。できれば流れに乗って一緒に行ければよかったけど、余りにペースが違いすぎたのと、ここまでギリギリ詰めてきた須賀くんの心が折れポッキリ折れてしまったことだった。色々ハッパをかけたけど、ボキッて折れた音が聞こえた気がしたので無理強いはできない感じだった。

抜かれた時のメンタル対策ってどうすればいいんだろうか。

ゴールまで

その後は何とか前を狙いつつペースは維持しながら淡々と進んでゴールまで。最後の林道で100kmの選手がきたときは100マイルの選手かと思ってヒヤヒヤした。

そんなこんなで見事に須賀くんの100マイル初入賞をアシストできたわけです。よかったよかった。

個人的には走力がしっかりしてれば、あとはレースマネジメントとメンタルコントロールで100マイルは難しい話でもないと思っていたので、その仮説を検証できたというのが大いに収穫。

しばらく100マイル完走できてないので改めて完走したいな〜とも思いましたね。

それにしても、結構ボロボロになりながら、本当に最後まで踏ん張ってお見事でした。こちらも気合をもらいました。須賀くん、ありがとう。

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