見出し画像

名刺の裏に刷っている詰将棋の解説 スマホ詰パラNo.19076

問題図

17手詰

ゲーム業界、翻訳業界の皆様にお渡ししている名刺に、この作品を刷っています。成桂は「圭」と表記されることもあるので、自分の名前にゆかりのある詰将棋ということでこれを自己紹介代わりの一局としています。17手詰ですが、手数の割には易しい部類に入ります。解けたよって連絡をくださる人が今のところいないので、こちらで解説していこうと思います。

解答

作意

▲3四玉 △3三歩合① ▲同飛不成② △1二玉 ▲2三角不成 △1三玉
▲1四歩 △同成桂 ▲同角成 △1二玉(途中図)▲1三馬 △同桂
▲2四桂 △2一玉 ▲3一飛成④ △同玉 ▲3二金 まで17手詰。

解説

初手▲3四玉はこれしかないところ。逆王手の合駒を取って攻方は歩を手にしますが、平凡に攻めると打歩詰という禁じ手に陥ってしまいます。打歩詰は「持ち駒の歩を使って相手の玉を詰みの状態にすること」で、将棋の禁じ手の一つです。その局面を回避するためにどう工夫するかが、本局の考えどころです。

それでは順番にポイントを見ていきましょう。
①で△6三金は▲2三角成まで簡単。△1二玉と下がるのは▲6二飛成でボロっと金を取り、△2二桂合や△3二香合の逆王手で手数は伸びますが、いずれも▲同竜△同金▲2三金以下物量で押していけば早く詰みます。

金を取らせてはいけないので、玉方は△3三歩合の逆王手で飛車の位置をずらしてきます。対して②▲同飛成は△1二玉▲2三角成△1一玉(失敗図)で打歩詰に陥ってしまいます。

失敗図

失敗図の何がいけないのか考えてみてください。2二の地点に利きがあるために▲1二歩が打歩詰になってしまっていますよね。つまり大駒二枚を不成で使えばよいのです。格言にも「打歩には不成」とあります。失敗図で竜と馬が成っていなければ、1一に逃げ込まれたとき▲1二歩△2二玉▲3一飛成で詰ますことができます。

これを踏まえて▲3三同飛不成△1二玉▲2三角不成と攻めると、玉方は△1三玉とかわしてきます。そこで▲1四歩と捨てて、歩と成桂を交換しにいきます。△同成桂▲同角成に△同玉は▲2三飛成△1五玉▲2五竜まで捕まっているので、△1二玉とかわします(途中図)。

途中図

途中図で決め手を放って収束に入ります。
▲1三馬!
馬を△同桂と取らせて守りを弱体化させ、桂を打って飛車を切って頭金までの詰め上がりとなります。

詰め上がり図

詰め上がりが対子三組になっているのが作者のお気に入りポイントです。本局は大駒二枚不成による打歩詰回避がテーマでしたが、主役の飛車と角を二枚とも捨てることができたので、テーマにぴったりの収束につなげられたと思います。

△2一玉のところで△2二玉には▲2三飛成△1一玉▲1二竜としても詰んでいて、これを答えても正解です。変化同手数、略して「変同」と呼ばれるキズなのですが、そういうのは大らかに許容して楽しめばいいんじゃない?というのが僕の基本的な作図態度です。

なお、収束にはちょっとした罠が仕込んであって、④のところで▲2三飛成としてしまうと△2二桂合の逆王手で失敗します(失敗図)。

失敗図

まあ頭金の詰み筋が見えているので、あまり引っ掛かりはしないと思いますが、こういった逆王手の逃れ筋は双玉詰将棋の醍醐味です。

本局はスマホ詰パラ賞2022年下半期の97位に入賞しました。

詰将棋を気に入ってくださったときなど、こちらの「サポート」から投げ銭できます。我々詰将棋作家は無償で詰パラに作品を提供しています。皆様からのおひねりがモチベ維持につながります。