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螺旋階段をのぼる"D2C" vol.1

D2Cって?

D2C : Direct-to-Consumerがまだまだ流行り。直訳のままだと顧客への直接販売であり、特別その新しさもなく、その要諦を間違ってしまいそう。あえていうと、デジタルを主戦場としながら、、ってのを含めてD2Cなのかな。でもでも、実際、それって?と思うものもあったり。せっかくなので、わざわざD2C!と謳うくらいならそのポイントは何か自分なりに考えてみたい。

よくD2Cは、直接的な顧客接点から①データを活かした運営をする②提供商品に即した顧客体験を提供する、ことが鍵であるように言われています。それも、あらためての話でもなく、もう少し深掘りが必要そう。仮にそのデータ分析や顧客体験だとしても、これまでとの違いが大切じゃないかと。そして、D2Cという言葉では含みきれていない意味もあるようにも思える。

こういった一見わかりにくいけど盛り上がっているような状況を思うと、きっとD2Cは、螺旋的発展の最中にあり適切に表現されないまま進化をさらに遂げて、この言葉は死語になっていくのだろう…とも思っていたりもします。螺旋階段は原点に回帰するわけで、そのアナロジーとして”製造小売について”(vol.1)と”DCブランドについて”(vol.2)、最後に”デジタル側面の現状”(vol.3)から思うところを…。

製造小売 : 情報を得たいのか、情報(体験)を与えたいのか

アナロジーとして、直接的な顧客接点を活かそうと90年代半ばあたりから台頭した製造小売(SPA)があげられる。製造から顧客に届く小売までを一貫して行うというもの。メーカーは製造だけをして小売に卸し、小売はメーカーから仕入れて売っていたのが主だったそんな時代に登場した。

代表的なのは、GAPであり、国内だと無印良品やUNIQLOがその成功事例として引き合いに出される。小売に製造を統合することで、顧客ニーズを商品に”素早く反映”させ販売効率をあげる。もうちょっと言うと”売れそうな”商品に着目しスピーディーに生産調整を行うことを実現した。それを短いサイクルで徹底的に繰り返し再生産し、巨大化していった。加え、メーカーサイド・小売サイド両面の利幅も得ていく。そんなユニクロは今、オフラインもオンラインもまとめ、”情報製造小売業”を掲げ、AIとともにそのサプライチェーンもパーソナライズも、更に加速化させようとしている。

他方、こういった製造小売がもてはやされる前からその形態自体はすでにあった。ある地域に根付くパン屋さんとか、お惣菜屋さん、豆腐屋さんなど。こういったお店も小さな製造小売である。たいていの場合、安くはない価格で利幅も出し小さくても成立させる。顧客と距離は近いといっても、どちらかというと自分のこだわり持った商品を提供していることが多い、迎合した商品はむしろ少ないような。昔住んでいたマンションの隣に豆腐屋があって、結構な深夜に帰宅するときには、もう仕込みをする姿を見かけ、通りすがるときには挨拶し、寄った時には詳しくお豆腐のことを教えてもらったりした。なつかしい…。その態度やこだわりに触れ、気づくとそのお豆腐が好みであり信頼も覚えていた。(今、Google検索してみたら明治40年創業、すでに創業112年目…!)

直接的な顧客接点をもつ製造小売といえど、上にあげた2つは全く異なる方向性だったり目的になっているように思える。
情報を取得することを目的とする製造小売か、意図はともかく情報(体験)を渡すことを主とする製造小売か
・売れそうな商品を無駄なくいかに安くだすための製造小売か、こだわりある商品を高く(適正に)だすための製造小売か
商圏をできるだけ大きくしていくことを目的とするか、限られた商圏の中で継続することを目的としているか
などなど、あえて言うと。

そして、後者のスタイルでありながら世界展開を行ったのがAppleだったのかなと思う。Windowsとの競争的な環境下の影響もあったと思うけど、一貫した”優れた体験”を提供すべくApple Storeは18年前に登場し、今は世界に500店舗以上ある。販売だけでなくサポートも同じくらい力を入れるそのお店は、世界各地で、地域社会への貢献・地域のコミュニティスペースを目指している。

D2Cはどちらの製造小売なのかという話でもないし、D2Cはこうあるべきという話でもそもそもないかもしれない。ただ、顧客接点を重視するといっても、一見、二項対立するようなものを含みかねないからこそ、その”D”の重きはなんなのかを明らかにするべきであると思う。もちろん、アップルのようにハイブリッドするとしてもそこに自覚的であることが大切じゃないかと。


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