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人生は他人のためにある???


「こんちは〜」

「あぁ、いらっしゃ〜い」

「新しい人、入ったの?」

「えぇ。別にCafeなんてこの新社会人の時期に
人入れなくたっていいんですけどね」

「へぇ〜良かったじゃない。明るくなるよ、きっと」

「そうですね。でもね、この季節になると思うんですけど、
どんな職業を選択するか?って難しいですよね。
僕もこれで良かったのかなって考える時があります」

「Cafeの仕事、何か問題でもあるの?」

「全然そうじゃないんです。大好きな仕事ですから(笑)
ただ、他の道、他の職業を選んでいたらどうなっていたんだろう?
って考えることありませんか?」

「確かにね。
若い頃にさ、習い教えられることとして、
人間には無限の可能性があるなんて教わるじゃない?
選択肢は無限にあるんだと」

「えぇ、えぇ、そうですね。未来は明るい!って (笑)」

「でもさ、それってある意味嘘だよね。
人間にはたくさんの可能性があるってこと以外はさ」

「そう思います。
好み、というか、仕事選ぶ年齢なると、
もう趣味嗜好ってある程度固まっていますからね。
とんでもないことは選択肢から外れる」

「そうなんだよ。ある方向性みたいなものは出来てるんだ。
それにね、人は勘違いしていることがある」

「何ですか?」

「この人生ってやつは『出来る事をやる為にあるんであって、
やりたい事をやる為に人生があるのではない』ってことさ」

「どういうことですか??? 
やりたい事をやってはダメだってことですか?」

「夢や希望って言葉はとても美しいよ、素晴らしい。
でもさ、やりたい事をこの人生でやって成功するには
時間が短すぎるんだよ。そうは思わないか?」
「どんなことでもいい。
絵を描くことでも、楽器を弾くことでも、スポーツでもね。
これらを一から始めてある程度のレベルに達するのには、
とても時間がかかるんだ。スポーツでも芸能でも
若いうちに世に出てこないといけないわけじゃない?
それまでにあることを極めるっていうのはとても難しい話なんだ」

「う〜〜ん、そうかもしれません。。」

「どんなことでもあることに秀でている人っていうのは、
始めから出来た人なんだ。つまり出来る事をやった人なんだ」

「才能って事ですか?」

「前世があってそれの続きを今世でやってるのが才能だ、
だからこそ最初から上手なんだ、なんて話は置いておいて、
なぜならそんなことはいくら考えても
証明することなんて不可能だからね。
人間にはなぜかあらかじめ出来る事があるんだ、何かしらね。
それは例えば仕事や収入には直接繋がらない事だとしてもさ」
「強烈に好きだっていう意識もないし、当たり前に、
ごく普通に出来るから、それを自分の才能だとも思わない。
自分にとってそれは呼吸のように自然だから、
特別だ事だとは思わないんだよ」

「なるほど、なるほど。
考えてみれば今の僕のCafeの仕事ってまさにそうかもしれません」

「出来る事って言っても、それを磨き、
高めることは絶対にあると思うんだ。
だからなおさらその技術は洗練されていく」

「磨き上げられてこそ、人に抜きん出るわけですね」

「あぁ。この世界に生きるものはみな、
他の生きるもののためになっているんだ。
他の生きるものは、またこの自分のためにもなっている。
相互なんだよ。自分に出来る事をやることで、
他の生きるもののために貢献することが出来る。
でも、やりたいことは本当に自分のためだけになってしまう。
成功もしないからさ」

「他人のため。僕の出来ることをやっていることで、
例えば今は来てくれるお客さんの一時のくつろぎや
食欲を満たすことが出来ている、そういうことですよね!」

「その通り。
人はやりたいことがわからないってそれを探すけど見つからない。
見つからないのはそれをしなくていいからなんだ。
そうではなくて、自分が出来る事を見直してみる。
きっと何かあるはずなんだ。どんなに小さなことでもね。
それは自分にとってごく自然で、一日中でもやっていられること。
それを仕事の域に高めたり、工夫することを考えるんだ」

「そう考えるとこの人生の見方ってずいぶん変わるかもしれませんね」

「うん。ぜひ自分って存在を大切に、
そして何より決して過小評価しないでほしいものだね」

     「はい。コーヒー入りましたよ」

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