見出し画像

落合と呼ばれた男

ソフトボール大会はベンチスタートだった。何試合したのかは記憶にないが、チームは順調に勝ち進み、なんと決勝に駒を進めた。その決勝戦で私は実戦デビューを果たすことになる。
ワンアウト1塁の場面、代打で登場した私は、フラフラとした打球をセンターの方へ打ち上げた。センターとセカンドがお見合いをして打球がグラウンドに跳ねた。ヒットだ!1塁ベースに向かいながら、人生初打席初ヒットだ、と心の中でほくそ笑んだ。ところが、である。センターが捕ると思ったのか1塁ランナーがスタートを切っておらず、センターからセカンドベースにボールが送られてフォースアウトとなった。私の人生初ヒットは幻となり、記録はセンターゴロになった。
その後守備についた私は守備機会がなかったが、第2打席がまわってきた。今度は打ち上げないぞ、と心に誓って打席に入った。打った打球はセンター寄りのセカンドゴロで、微妙なコースだったがなんとかボールがセンターに抜け、正真正銘の初ヒットとなった。ベンチからは落合コールが響いた。私は1塁ベースで何食わぬ顔をしていたが、心の中では熱いものがこみあげていた。嬉しかった。
結局チームは敗れたが、大会は堂々の準優勝となり、閉会後はみんなで定食屋にいきお昼ごはんをいただいた。この時父と一緒に食べた肉うどんの味は私は一生忘れないだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?