少し話は戻るが、小学校5年生の時、私のクラスに転校生がやってきた。みるからに都会から来た感じの、勉強もスポーツも万能な美女だった。名前はクミコという。私はこういう王道系の美少女は好みではなかったが、訊けば名古屋から引っ越してきたドラゴンズファンだという。学校1の竜党を自負していた私に思いもよらないライバルが現れたのだった。
私は中日ドラゴンズの知識や現状分析をもって、クミコに戦いを挑んだが、ほとんど返す刀でやられてしまった。クミコからすれば、越してきた町にこんな熱狂的なドラゴンズファンがいることが嬉しかったのだろう。クミコも毎日のようにドラゴンズトークをしかけてきた。挙句におふるになったグッズや、月が変わってめくったカレンダーなどを持ってきてくれるようになった。私はもう降伏である。クミコと仲良くしていればドラゴンズファン度があがるのである。
そしてその1988年、逆転の竜と呼ばれた中日ドラゴンズは5年ぶりのリーグ優勝に輝いた。
ファンになって2年でリーグ優勝とは、私もつくづく運がよいものだ、とも思ったりした。ただ、この達成感があまりに強く、1989年以降、真剣にドラゴンズのシーズンを追いかけることはなくなっていった。