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突然湧き上がった想い~トウシューズ再チャレンジへの道①

それは突然だった。

12月のある火曜日。午前中の大人クラスレッスンが終わった。
引き続きトウシューズレッスンを受ける人は、バレエシューズからトウシューズに履き替える。受けない人はそのまま帰る。
私は受けない人だ。

その日も、私は疲れた脚にラバーバンドを巻きながら、トウシューズに履き替えているレッスンメイトを眺めていた。


私は約5年前、もうトウシューズを履かない決断をした。
その理由は、古傷の左膝と外反母趾が痛むこと。
左膝は半月板損傷で関節鏡手術をしていて、右膝に比べてかなり弱い。
なので、左で踏み切るアッサンブレが苦手だ。どうにも歯がゆいが、身体が上がらない。外反母趾もかなり進んでいて足が変形している。どちらも普段の生活する上では全く問題ないのだが、トウシューズはちと厳しい。
とにかくあの固いトウシューズに足を押し込み、つま先で立つなんてことは人間業ではないのである。私の足の不具合が、トウシューズを履くことで悪化するかもしれない。その結果、バレエ人生が短くなることを危惧してのことだった。

もう若くない。痛い思いや無理しなくてもいいのではないか。身体の負担を軽く、ラクをして、バレエを楽しく続けたい。長く続けることの方が大事だよね。そう考えて、私はトウシューズから卒業した。「卒業」というほどトウシューズでガンガン踊ってもいないから「やり切った」感もない。別に悲しくも残念でもなかった。トウシューズを履かなくてもバレエはできるんだし。

「さようなら」

結構あっさりとトウシューズに別れを告げ、取ってあった数足もすべて捨ててしまった。そして、もう絶対にトウシューズを履くことはないと思っていた……。


でも、何故だろう。その日はトウシューズレッスンをする仲間がなんだか羨ましかった。

そして思ったのだ。私、あのトウシューズを止める決断をした5年前より、もしかして今の方が身体の状態が良いかも……? 左膝も外反母趾も、治ってはいないけど悪化もしていない。良くも悪くもなしの現状維持。

いや、悪くないって素晴らしいんじゃない? 

3年前にチベット体操を始めたことが大きいに違いない。5つのポーズを21回ずつ繰り返すチベット体操。毎日続けているから以前より筋力もついたし体幹がしっかりしてきた。心も落ち着くし直観も冴えるから良いことづくめ。広めたいと思って伝導師の資格も取った。

先生のご厚意で、私主宰のチベット体操教室を開かせてもらっている。それが火曜日。火曜日に自分のバレエレッスンを受けた後、今度は私がチベット体操の先生になる。だから時間的に私はトウシューズレッスンを受けている時間がない……と思っていたのだが、いや、待てよ? まあまあ余裕がある。うん、大丈夫だ。私、トウシューズレッスン受けられるんじゃない? 

「私、トウシューズ、また履けるかも!」

急にその気になってきた。
何の障害もない。私が決めるだけだ。
もちろん先生には相談しなくては。
でも先生は「ダメ」とはおっしゃらないだろう。


ワクワクしてきた! 真っ先に、バレ友のAちゃんに報告しなくっちゃ! きっと喜んでくれるはず!  

                      《続く》


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