見出し画像

鏡を見すぎると

バレエのレッスン場、お稽古場に鏡は欠かせない。


必ず、有るものだ。


公民館なんかを借りてレッスンする場合には、もしかしたら無いかもしれない。壁の3分の1くらいとか、小さな鏡だけ、ってことも。


鏡は必要。バレエは人に見せる芸術であるからして、どのように見えるかはとても重要なのだ。


オバリーナは、レッスンに入る前にまず鏡で今日の容姿(髪のまとめ具合、メイク)、レッスン着コーディネイト等をチェックする。


更衣室に鏡があるかどうかは、微妙だ。

有っても小さいことが多いし、着替える人でごった返している場合は、

鏡の前で悠長にシニヨンを結ったりメイク直しをするのはたいそう迷惑である。

したがって、家でキチンとまとめてくるのが基本。


でも、お稽古場の空間の中で、さりげなくチェックしてみたくなる。

あくまでも、さりげなく。ピン、留め忘れたわ~と一本差すくらいは許されるが、あれこれ髪をいじくりまわすのは、先生がいらっしゃらなくてもベテランのオツボネリーナの顰蹙を買うことになるだろう。


レッスン着コーディネイトチェックもあくまでさりげなくさりげなく。

あ―この巻きスカにするんじゃなかった、テンション下がるわ~とか、

嫌なあの人と双子コーデになっちゃった! と気づいても、仕方ないと観念しよう。


さ、肝心のレッスン。


一番『あるある』なのは、鏡を常に見てしまうことだ。


バーレッスンが鏡を見れる位置ならば、時々チェックするのはいいと思う。


問題はセンターレッスン。

アラベスク。脚上がってるかしら? 膝が曲がってないかしら? 膝が下を向いてないかしら? はい、上がってないし、曲がってるし、下を向いてます。残念。チェックしたい気持ちはわかる。私もつい見てしまう。


でも、なるべく見ないように心がけよう。


常に鏡を見る癖がつくと何故問題なのかというと、本番の舞台には鏡が無いからだ。


レッスンはあくまで本番の舞台のためにある。鏡ばっかり見てる人がいざ舞台に上がるとどうなるのか? 脅かすわけじゃないが、恐ろしいことが起きる。


鏡は言わば閉ざされた壁だ。だが、本番の舞台では広く高く、奥行きのある客席、空間が広がっている。床だって違う。舞台上では、お稽古場と感覚が違い、ふらついたり、自分がどこにいるのか、どこに行ったらいいのか、わからなくなる。大勢で踊る場合は他の人との間隔、角度等も、鏡でなく感覚で把握しておかないと本番で踊れない。これは、ショシンリーナのまさに壁と言えるだろう。


レッスンでは、鏡でのチェックは最小限度にして、体の感覚と空間の把握に集中しよう。目で見る形にとらわれすぎて、自分の感覚がおろそかにならないように。


あ、『鏡あるある』がまだあった。振りが怪しい時に上手な人を鏡で見ながら真似て踊ることだ。これの欠点は、ワンテンポ遅れることと、その人が間違えると一緒に間違えてしまうことだ。しかも、上手な人は間違えても綺麗で余裕で傍から見ても分からないのに、自分はみっともなく目立ってしまうのが、とても残念なところだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?