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Action Stage「エリオス ライジングヒーローズ」-THE WEST-  感想

2024年3月23日、24日、京都劇場で上演されたAction Stage「エリオス ライジングヒーローズ」-THE WEST- のマチネソワレ全4公演を観劇してきた。
いわゆる女性向けソーシャルゲームの舞台化、2.5次元というジャンルで、推し俳優が出ていることと、ゲームのユーザーでもあるので張り切ってチケットを取ったわけである。

50年前、宇宙から飛来したエネルギー源「サブスタンス」とそれを巡る「ヒーロー」と敵である「イクリプス」の物語。
エリステとしては第二弾、原作ゲームでは第一部第二章に当たるストーリーで、今後の展開に関わる重要なエピソードの盛り込まれたシナリオだ。東西南北に分かれた地域とチーム、そこに配属された新人ルーキー先輩メンターが織りなす物語、今回は「WEST」とある通り、ウェストセクターに所属する彼らが中心となる。

勿論第一弾を観に行っていたわたしは、無事に第二弾が上演されることを楽しみにしていた。と、同時に改めて原作に当たる第一部第二章を読み直して少しだけ不安になった。
この第二章は、前述したように第一部のキーになるシナリオである。しかし、第一章に比べて物語としての動きが極端に少ないのだ。
一つには、本来各セクターにはメンター二名ルーキー二名の四人体制となるがある事情から、ウエストにはメンターが酒浸りのキース一名しかいない。また、ルーキーの一人、フェイスもお世辞にもヒーローとしてのやる気がなく、残った最後の一人、ジュニアが持て余した全力をきっかけに、あるいは原因として二章の物語は動いていく。
勿論、二章にも見どころはある。なぜ、ウエストにはメンターが一人しかいないのか、なぜ、キースはこうもやる気をなくしてしまったのか。偉大な兄を、父を持つルーキーたちの葛藤。彼らが最後には少しばかりの成長を見せるカタルシスもある。だが、ヒーローとして敵であるイクリプスと戦うシーンが第一章に比べて少なく、メイン三人のうちの二人がどちらかと言えばダウナーなために緩急の少ないシナリオでもあった。
そのため、「キャストにはちゃんとイクリプスもいるけど、ゲーム内だと本当に数えるくらいしか出番がないが…?」と、勝手ながら心配をしてしまっていた。

で、いざ期待と不安を抱いた京都初日。
さて、感想は…と聞かれたら、

めっちゃよかった!!!!!!!(※ファン目線)

この一言に尽きたし、アイドルゲームでもないのになぜかある二部のライブパートは楽しすぎてめちゃくちゃペンライトを振ってきた。ほんまに何であるんや、ライブパート…。

肝心のストーリーについては、序盤はゲームとほぼ同じセリフと展開で進んでいく。
一部、登場キャラクターを入れ替えたりはあっても、基本的には変わらない。ジュニアが研修早々にやる気のないメンバーに痺れを切らして「チーム替えをしろ~!」と不満たらたら。ゲームでは一旦、その要求が受け入れられて他セクターへ移籍することになる…のだけれど、今回の舞台にはそのセクターは登場しない。
どうするのだろう、と思った流れについては、結論として移籍のシーンはすべて割愛されていた。それに伴い、イクリプスによるタワー襲撃も割愛された。代わりに、成果を挙げれば特例で移籍も認められるかもしれない、と功を焦ったジュニアがヒーロー仲間のビリーによる情報から「ゼロ」と呼ばれる特別なイクリプスを追って単独行動…大怪我を負ってしまう。という具合に、原作の流れに話が戻ってくる。

個人的には、この改変がすごくよかったな~、と感じた。
ゲームでも当然、様々な思惑ややり取りを経てジュニアの移籍が認められるわけだけれど、基本的に「3年間はチームの移籍はしない」というルールがある。加えて、メンターリーダーであるブラッドがジュニアに向けた、「他人に不満や責任を押し付けるだけでなく、自分で現状を変えようと思わないのか」というセリフがある。
なのに移籍を許しちゃうんだ、というところが舞台ではジュニアが何とかキースの訓練ともいえない訓練をこなそうとしたり、自分なりに考えて(キース曰く、おこちゃまの発想ではあったが)ヒーローとしての実力を示そうとその、長所でもあり欠点でもある怖いもの知らずの全力投球で初めての、いささか大きすぎる挫折を知ることに繋がる。
フェイスはフェイスで、自分がクールぶって他人事の振りをしている間にチームメイトが大怪我をしてしまう。もしかしたら防げたかもしれない事件を見逃してしまったかもしれない、と彼なりにヒーローであることに向き合おうとするようになる。
それからラストの「俺はお前たちのメンターだから」というキースのセリフもそう。
それぞれ向いている方向はばらばらでも、少なくともウエストセクターという箱そのものが壊れず、最初から最後まで同じチームのメンバーなんだという事実があった。だからこそ、舞台の尺や登場キャストを減らすための事情もあったのだろうけれど、各々のセリフや行動が、ゲーム以上に説得力を持ってすとん、と腑に落ちた気がした。

今回、キースやブラッドのアカデミー時代の回想がところどころに挟まった。その回想が生きてくるのが終盤、ゼロとキースの元にジュニアとフェイスが駆け付けた時だ。
このゼロはユーザーなら既知の通り、4年前に殉職したとされるキースたちの同期のディノだ。
記憶をなくし、イクリプスの手先となった彼がかつて繰り返し、親友たちにジュースを投げて寄越した。キースの言葉を信じると言った。3人で思い出を作りたいと言った。ジュニアとフェイスの言葉が、行動が、図らずもかつてのディノをゼロへと想起させる。
もう、このシーンが本当に好きで好きでたまらなかった。
キースが大事にしているもの、ディノが忘れてもなお忘れていないもの、ジュニアとフェイスが自分たちの抱えていた葛藤や悩み、鬱屈した感情と向き合って前よりも少しだけ受け入れた。そういう、ここまでの流れの集大成が見えるようで一番お気に入りのシーンだ。

物語は、ゼロがディノであることが明かされて終わる。
そして15分の休憩の後は、お待ちかねのライブパートだ。
そう、なぜだかエリステにはライブパートがある。ミュージカルでもないのにヒーローたちが舞台オリジナルの楽曲を歌い踊り、小芝居を挟み、客席はペンライトを振る。
キャストがキャラクターを忘れることなく、だけど本編とは違ってのびのびとふざけたり客席をいじったりいじられたり。きっと裏でもすごく仲のいい座組なんだろうなぁというのが感じられて、見ているこちらもずっとにこにことしていられてとても幸せな気持ちにしてもらった。

そしてそして、

続編決定おめでとうございます!!!

またこの幸せな時間を噛みしめるために、今日から頑張って得とお金を貯めておきます。
一晩たってもまだふわふわした心地で、心と推しに誓いながらこの記事を書いている。

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