見出し画像

マシンガンズの羅生門と業の肯定

THE SECONDで3本目のネタが準備不足だったこともあり、準優勝に着地したマシンガンズ。25年やってきてなんでネタが3本ないんだ!と皆に散々言われて笑いにしているが、実際は他にネタがないなんてそんなわけはない。

お笑いライブをよく見に行っていた2013年から2016年頃、マシンガンズの漫才も何度か見たことがあり、その中でもすごく印象的なのが「羅生門」というネタだった。

このマシンガンズの「羅生門」とはどんなネタだったのか。それほど詳しく覚えているわけではない。ただ、過去にライブメモを残していたので、当時のお笑いライブを振り返りながら少しだけ書いてみる。


自分がそのネタを初めて見たのは、2013年の「ネタ9」というエルシャラカーニの清和さん主催のライブだった。当初は新ネタ3本を披露するライブで、後に新ネタ2本+作り変えネタ1本になった。


2013年11月21日 新宿ハイジア・V-1
「ネタ9 vol.11」

マシンガンズの「ノンフィクション」というネタも、かなりの哀愁と人間味が溢れていて面白かった記憶がある。生ーきてーく、生ーきーてーいくー、というあの世界観。

ハイヴスとかクラッシュとか、ネタ9で流れていた曲がやたらカッコ良かったのはおそらく清和さんの選曲。

当時、「羅生門」についての感想をこんなふうに書いていた。

西堀さんがとうとうと語り出すネタで、なんだこの話は……と思って聞いていると、やがて「羅生門だ!」と気づく。白黒の映像が浮かんだということは、黒澤明のあの映画のイメージに近かったのか。

詳しいところまでは思い出せないけど、話はアレンジされていて、西堀さんのしゃべりに滝沢さんがツッコむような、合いの手を入れるような形だった気がする。人間の業を感じた、俺の羅生門。妙に引き込まれて、妙に面白かった。


過去に、マシンガンズのテーマは「業の肯定だ」ともラジオで話していた。


2013年8月29日 ニッポン放送
「アルコ&ピースのオールナイトニッポン・Podcast」

西堀「なんかAMの方はガチだよね」
平子「人間味っていうかね。業を…人間の業をグッと、出しても許されるのがAMのような気もする」
西堀「俺から学んだなぁ、人間の業を」
酒井「はははは」
西堀「マシンガンズのテーマだから。業の肯定はね」
平子「業の肯定?」
西堀「人間ってやっぱ愚かじゃん。だけどそこも愛おしいじゃん」
平子「それを否定することなく肯定していきましょうと」
西堀「ごめんごめんなんか、放送されてないと思うと一気に気抜けて(笑)」

「アルコ&ピースのオールナイトニッポン・Podcast」2013/8/29


ネタがハマるハマらないの話から、「羅生門」についてこう話している。


2016年4月13日 ラジオ日本
マシンガンズ「ネガ⇒ポジ」

西堀「ウケるウケないってわかるじゃん、体感として。もちろんそれはわかるよ、こんだけやってれば。ハマるハマんないってのもあるの。なんかね、言ってることがスベってるわけじゃない気はするんだけど、ハマってないの」

滝沢「コンビによってもそうだし、ネタによってもそうなんだけど。前後で、けっこう(前のコンビの)影響受ける時ってあるよね」「例えば、“羅生門”っていうネタが我々あるんですけれども」
西堀「それだけ聞くとすげえけどな」
滝沢「すごいネタですけどね」「前半の2分ぐらい全く笑いがないネタ。これ、前のコンビがキャッキャしてると、意外と入りにくかったりするんだよね。かと思えばちょっと、何かを言えば笑うぐらいの空気が一番ハマったりするじゃん」
西堀「そうだね」

マシンガンズ「ネガ⇒ポジ」2016/4/13

前半の2分ぐらい全く笑いがない。確かにそういう感じのネタだった。独特の雰囲気でじわりじわりと引き込み、いつの間にか魅了され笑わされ、見る者に強烈な印象を残す。

これってもしかして、THE SECONDの決勝のギャロップの3本目に対抗できるネタだったんじゃないのか!!!!?

急にそう思い立って、同じように思っている人がいるのでは……と巷の感想を探ってみたら、やはりいる。マシンガンズの3本目に「羅生門」を期待していた人たちが少なからずいる。

THE SECONDの日、ヤーレンズの出井さんはまさにそれを感じさせるツイートしていた。

ですよね!!あの決勝で「羅生門」をやっていたら……と想像すると高ぶってしまう!!!!
ハマったらすごいことになるやつ!ハマったら優勝できるやつ!ハマったら見返せるやつ!
全然ハマらなかったかもしれないけど、それはそれでやりきったらカッコ良かった気もする。

結局、決勝に準備不足で挑んで見事に散ったマシンガンズもカッコ良かったので、ネタがないことすらネタにしていた生き様のような漫才も最高に面白かったので、もしもの話は程々にしておこうと思う。


ちなみにマシンガンズには「羅生門」の他に、「蜘蛛の糸」と「走れメロス」というネタもあった。

2014年のK-PROの年忘れライブでは「蜘蛛の糸」を披露。まさかのシリーズだった。


2014年12月30日 赤坂RED/THEATER
「年忘れ二日連続スペシャルネタLIVE~2日で50組!!~2日目」

メモの中に見つけた、トップリードが懐かしい。トップリードも賞レースではなかなか振るわなかったけど、ライブで見ると一際輝いていたコンビで、見る者を幸せにするような面白くて素敵なコントをたくさん見せてくれた。


2016年のオードリーのネタライブでは、マシンガンズは「走れメロス」を披露。西堀さんはドラマ「世界一難しい恋」に出演中で、久しぶりのお笑いの現場だったらしい。


2016年5月17日 草月ホール
「オードリーのネタライブ」

「マクメン」は、マシンガンズのおなじみのネタ「MAXめんどくせえ」の略。この頃は周りからマクメンを期待されることが多くて、本人はあまり乗り気じゃなかったのかもしれないけどよくやっていた。

2016年に「西武ドームで」なんてネタで言っているオードリーが、2024年に東京ドームでライブをやるというのも感慨深い。

ギースの「こんばんは森昌子です」が何なのか、全く思い出せない。お笑いライブのメモは謎解きの暗号のようだ。

冒頭のネタ9の感想に書かれていた、「エルシャラは猫とリスとポーグスと努力で形成されてる気がする」というのもかなり難解だ。

説明すると、当時のエルシャラのネタには猫とリスがよく出てきて、出囃子にポーグスの「If I Should Fall From Grace with God」(堕ちた天使)という曲が流れていて、清和さんはお笑いにストイックで努力キャラだった。


と、色々と振り返っていたら、またお笑いライブに行きたくなってきた。以前のようになかなか行ける余裕はないけど…

マシンガンズの「羅生門」「蜘蛛の糸」「走れメロス」の3部作が、またいつかどこかで見られる機会はあるだろうか。

THE SECONDが始まったことで、舞台でネタを磨き続けている芸人さんに新たな希望が見えただろうか。

捕まり終えている元芸人さんたちは、元気に暮らしているだろうか。


最後に爆笑問題の太田さんが語っていた、談志師匠の言葉を借りて。

お笑いは、人間の業の肯定だ。

笑いによって誰かを許し、笑いによって自分も許されている気がする。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?