カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク　灰塵と化せ！！　冥界の賢者　七つの鍵を持て　開け地獄の門！！！　七鍵守護神ハーロ・イーン！！！！

今をときめく『脳直戦隊ゴリオスンジャー』！全てを気合いとゴリ押しで乗り越え、必殺技も思いつきで放つ！彼らの通った後には、ぺんぺん草すら生えない！
そんなゴリオスンジャーから、敵の事情とか今の状況とかお構いなしになんでもはっ倒す、ゴリオスピンクがやってきたぞ！彼女の最近の悩みは、適当に考えた口上で何故か巨大ドラゴンを召喚してしまうことだ！

チャオ！あたしゴリオスンジャーのゴリオスピンク！詠唱といえば必殺技、必殺といえば戦隊でしょ？え？なんか違う？あたしがそうと言ったらそうなのよ！安心して！戦隊ヒーローの一員として、なんかいい感じにレビューしたるわ！！！評価基準は、直感の良さよ！！！

魔法屋を営む女性。
商品の名前がわかりやすい事で知られている。
前職はフランス外人部隊、勇者パーティ魔術師、コンバータ魔法学園校長。
趣味はクッキーを焼くこと、魔王を倒すこと。
新しく生まれた魔王を一番最初に殲滅する権利を有している。

無詠唱で長いことやってきてたから『とあるシリーズ』の旧約時代の詠唱くらいしかわかりません。
……いい詠唱があったらポーズだけでも取り入れてみようと思います。

仮想研究施設、通称魔術学院の若きホープ。人格設定により少々気位が高いものの、魔力量と魔術の腕はピカイチ。一番良い素体と研究員からも評判。
今回はレビュータスクにて客観視の能力をテスト。

レビューって何よ。……ふうん、他人の詠唱を見て評価すればいいのね。いつもと逆だわ。
そうね、私に不格好な詠唱見せてきたらそいつの頭を爆発させるわ。それが評価よ。
万が一にも気に入るのがあれば私の魔術にも取り込もうかしら。
……魔術とは模倣とほんの少しのオリジナリティ、でしょ。毎日40回暗唱してるから覚えてるわよ。

通称「史研」のトップにして唯一の異能持ち獣人。
嫌いな物は馬鹿(頭が悪いヤツは嫌なので)と天才(自分の方が頭がいいので)。
その性格からか厄介者の集まりとされる史研の中でも特に嫌われており、解体者という二つ名には聖遺物や神秘を見境なく解析しようとする事への皮肉が込められている。

彼女の異能には謎が多い。
何故なら「異能を持っている」事しか知らない者が殆どであり、その力の詳細は史研のデータベースにすら残されていない。
まるで、そこだけポッカリ穴が空いているかのように。

どうやらかの世界設計図の新頁が発見されたらしくてねェ。
それを探すために抜け出してきたんだが……凡愚共が面白そうな催しをしてるじゃァないか。
完璧な専門家では無いが、私も混ぜてくれないかなァ。
なァに、興味があるだけさ。
……監視の目が厳しくて、中々外に出る機会が無いからねェ。

魔法世界の大学院に所属する魔導士過程ソーサラーコース3年の女学生。魔法理論の構成学のうち、特に呪文の詠唱における詠唱術式の構成、その理論的な意味の究明と術式の最適化を専門としている。
紫髪で知的な風貌をした品のよい美人だが、学問に熱中するあまり健康的とは言えない生活をしており、母親からは「アンタみたいなのは20代越えたら絶対結婚できないんだから早く料理のできる男を捕まえなよ！」と帰省するたびに言われている。

構成学科のベルフラワーと申します。本日は歴史的に貴重な、それも多世界の詠唱術式記録を拝見させてもらえるということで、この企画に参加させて頂きました。流石に気分が高揚しています。一体どんな式に出会えるのでしょうか……これはごく個人的なことですが、論文に使用できる詠唱式だと嬉しいですね。

プロトコル・オーヴァード、展開。
災級兵外装使用申請……承認。承認。承認。承認。
参番ロック：解除　伍番ロック：解除　拾番ロック：解除
聖遺物直結シーケンスまで5秒。…………3……2……1……成功。
電力充填率：100％　対オーバーヒート瞬間凍結措置：起動
システムオールグリーン―――起動『ヘヴンリイフレイム』

なんかロボット系のヤツね！こういうのはオタクのグリーンが好きそうだわ！なんかかっこいい雰囲気はあるけど、ちょっと分かりづらすぎよ！
うちの巨大ロボは大声出してボタン一個押せば動くから見習ってほしいわ！コスパの点でもこのくらいの点ね！！

カッコいい詠唱だし、どういう技を使うのか、みたいな臨場感もあるよ。
……ただ、ロックをかけすぎじゃない？
切り札はできるだけ取り出しやすい位置に置いておくのがいいと思うな。
ホラ、核のスイッチを携帯したことがある人ならわかるだろうけど、そういう切り札っていうのはロックをかけすぎちゃいけないんだよ。
その辺は減点かな〜。

優美さがないわねえ。正しく手続きが済んで術が使えればそれで良いのだけど……電子由来の術式ってどれもこうなのかしら。まあアーティファクトへの接続は出来るようだし、手続きも明快だし、効果も良さそうだし、あと何より術の名前が良いから点は高めにしてあげるわ。

兵器や武装と言った物はシークエンスをマニュアル化すれば資質のない者も使えるのが大きな利点だと思っていてね。
その点これは素晴らしいねェ、少々展開中の隙が大きい様に見えるが更に効率化出来そうな伸び代もある。
……それにしても、聖遺物か。
君、ちょーっと収容されてみないかい？

な、なるほど。初めから専門外の詠唱式、というよりは魔術領域外の詠唱……？興味深いですね。多分に憶測を含む見方にはなってしまいますが、見定めさせていただきます。
災級兵外装という兵器を起動する際の詠唱、もしくは圧縮された詠唱を起動するまでの手順を表した音声でしょうか。この文章自体に何か特殊な効果をもたらす韻律や属性は無いように感じます。やはり別途用意された詠唱を起動するための文章と言ったところですね。これは詠唱と呼べるのでしょうか？うーん、あまりに専門外すぎて解釈にも限界があります。申し訳ないですね。
聖遺物直結シークエンスにおける「聖遺物」に関しては少々の心得があります。太古にその発生が確認された「奇跡」をなぞるもの、その影響を受け「奇跡」の属性が付与された物体や奇跡を起こした聖人の遺骸そのものを指すと思われるのですが……えっと、これで全く別世界の「聖遺物」の話だったら恥ずかしいですね。始めは聖遺物に宿る力を引き出す「誘引型」の術式かと思ったのですが、後の文章で「電力」と呼ばれる魔術エネルギーのようなものを充填しているようなので、聖遺物は属性を左右するための触媒になっていると思われます。厳密には詠唱ではありませんが、言うなれば「触媒型」の、魔術で言えば杖の役割でしょうか。強大な力を保有することの多い聖遺物をそのように扱うのは珍しいですね。もしかすると「電力」というエネルギーは魔力ほど可塑性を持たないのでしょうか？
個人的には圧縮されている術式の方を閲覧させていただきたかったです……この世界の理論で思考している私が見て理解できる方式かは分かりませんが。しかし『ヘヴンリイフレイム』起動までの工程は整っていて美しいですね。門外漢の私が見ても分かるほど、非常に理論化されていると思います。個人的には、安全用の確認フィルターが複数仕掛けられているのがとても好ましい。どうしてか魔術家さんってストッパーを付けなかったり魔力が逆流した際の対策を手薄にしていたりするんですよね。自分だけは失敗することがないと過信していらっしゃるのか、ただアホなのかのどっちかだと思うのですけれど……あ、いや、関係のない話でしたね。

遠き霜のエレルよりウォーウィアの土へ
来る砂の共振を兼ね錆びたる銅の疎密を得よ
伝えよ　割り絶て
《断崖の鉄鋸歯顎》

簡潔なのは高評価だけど……え！？！？何この漢字！！読めないわ！お茶の間の良い子に優しくないじゃない！！
でも土属性っぽい雰囲気は伝わるわ！オタクのグリーンが好きそうね！でもあたしはピチピチギャルだからよくわからないわ！こんな感じの点ね！

いいね！複数の属性を使うなら、私も積極的に詠唱を取り入れるべきだと思うよ。
単一属性での切断が困難な『邪神龍』とかにはこういうのが一番いいんだよね〜。

いいじゃない。さっきと比べて断然魔術らしくって。砂っぽくて鉄臭そうで無骨なのが気に食わないけど……短い詠唱時間で発動できそうなのも良いわね。土のエレメントをわざわざ選んで使うのって好きじゃないけど、これに関しては術として有用そうだから許せるわね。もっとこういうのを持って来なさい。

これは……土着の魔術に見えるねェ。
魔術使い同士の戦いにおいて詠唱という物は大きな隙になり兼ねない、何故なら文言によって魔術形態や内容がバレるからねェ。
だからこう言ったマイナーな魔術を使うと優位を取りやすい、何が来るか分からないからさ。
それに……伝来魔術や民族魔術という物は外部に情報が出ないから未だに謎が多い。
警戒はされるだろう、最もその上で相手を削り取れる力がありそうだがね。

ふむ、これは文句なしに「誘引型」でしょう。その世界の語句である「エレル」「ウォーウィア」などについては未知ですが、推測するならばその名前を持った神や土地など、エネルギーを引き出すことのできる力場を持った存在だと思われます。「遠き霜の」や「の土」という言葉が付随しているところから、属性を持った存在であることも何となく分かりますね。後文の粒子の構成・振動などに深く関わる存在なのでしょう。となると効果対象を作り出した神や土地……大穴で「エレル→ウォーウィア」を繋ぐ神話上のファクターに振動があり、それになぞらえることで誘引エネルギーの損失を抑えている場合もあるでしょうか。
「来る砂の共振を兼ね錆びたる銅の疎密を得よ」の一文は誘引効果によって引き出したエネルギーにさらに属性を付与する工程だと思います。共振、疎密、砂といった言葉の連関を取ると、物質を構成している粒子の振動現象を引き起こすための術式だと思うのですが……物質に封じられた魔素へと振動を伝播させ、過剰な振動により結合素子を破り、内部から崩壊させるということでしょうか。なるほど……恐ろしいですね。素晴らしい破壊が期待できそうです。
《断崖の鉄鋸歯顎》と締めくくられているこの術式は、おそらく建築の分野で使用される固く巨大なものを切断するための術式、もしくは戦闘用でしょうか。金属加工に使用するには規模が大きすぎると思われる上、ランダムな振動で崩壊させる場合は断面が荒々しくなってしまうために不向きだと思われますが……噴出点を絞り込むことができれば、強力なカッターとして機能しそうではあります。シンプルな効果を目的とした術式のために応用性が高くて良いですね。異世界の語句や形式に触れることができたのも嬉しいところです。しかし、取り立てて革新的な術式というわけではありませんね……

Θεέ μου, με βλέπεις;
Ένα αίτημα από μένα, το ευσεβές αρνί.
Θεράπευσε μας όλους.『星巻く天』

ちょっと！何語よこれ！！！全く読めないわ！！！……あら？グリーンから通信よ！なになに……「これはギリシア語だね、ギリシア神話は良いな。フォカヌポウ」へーそうなの。知らないわよ！！！
グリーンに免じてちょっとだけ入れるけど、もっとお茶の間の良い子のことを考えなさい！「なんて意味？」って解説を求められたら親が泣くわよ！！！

ごめん！アラビア語は読めなくてさ……
え？アラビア語じゃないの？
……えー、うん。何語を勉強すればわかるのかもわからないし、取り入れる以前の問題かな……
採点できないけど、こっちの非だから60点で……

ちょっと！翻訳魔術を貫通して来ないでよ！魔術秘匿性向上のテクニックだとしたら初歩的だけど、詠唱形態と接続先が密接に結びついているのは悪くないわね。詠唱の内容も手順と拠り所が明白でいいじゃない。術名を考えると使用者と遠い余所からわざわざ権能を借り受けてるっぽいのが気になるけど。

神を絶対としたギリシャ語による嘆願の祈りか。
この次元特有の神話を用いた、古臭くて有り触れた信仰の術だねェ。
だが、故に強いのだよ。
古きを侮る愚者は何処にでも居るが魔術においてその油断は命取りになる。
それこそ星の数ほどあるからねェ。
廃れずに残っているという事は有用だからなのさ。
……ま、今となってはいくらでも代用が効くがね。

異種の言語が混合されている誘引型術式ですね。目的は詠唱の簡略化か、もしくは誘引を目的とする概念が特定の言語しか受け付けない、または別言語を介すると損失が大きすぎる場合だと思われるのですが……その場合なぜ片方の言語でのみ記述しないのか気になりますね。
使用されている言語体系的に異種言語が多重に意味を含んでいるなどして情報を圧縮している様子は見られないので、異種言語でなければ誘引の効率が悪いのでしょう。シンプルに考えればその言語における神のもたらした奇跡や、その伝承から効果を引き出していると思われます。
解読したところ治癒を目的とした術式であるため、医療用なのでしょうね。「癒す」という限定的ではない言葉を使用しているため、戦場や家庭における簡易的な治癒、痛み止め、解熱などに使用されると思われます。もしくは誘引する神が医療や衛生を司るタイプではなく、一神教的な万能型の神であり、事細かに効果を引き出せない場合でしょうか……
さて、ではなぜ異種言語で統一せず『星巻く天』という別言語を加えたかの考察ですが……まあこれは、大体予想が付くというか。詠唱者の所持している術式発動用の装置に異種言語の発動術式が対応していないのではないですかね。はあ……すみません、溜息が。いえ、別言語の術式を引用すればより効率的かつ便利な治癒魔法になるということに気付き、それを術式化したのは素晴らしいことです。問題はそのまま術式を扱うには普及している杖などの道具が追い付かなかったという点で……どの世界でもこういう事例はありますよね。うーん、術式開発者の苦心が見えます。発想自体は素晴らしいんですけどね……

理外理ルーズルール制定、この手に勝利を。「嗚呼無条理ぼくのかち」

あら！詳しい意味はよくわかんないけど、勝ちって書いてあるわ！！勝利や、勝つ、最高の言葉ね！あたしたち、特にレッドは怪獣や怪人をメタメタにして優越感を得るためにこの仕事やってるから、多分みんな好きになるわ！
ちょっとどこかのサッカー選手みたいなのが気になるけど、まあ勝利の前には関係ないわね！

ごめん！完全に私情だけど『外の理』を支配する系の魔法にはいい思い出がないんだよね！
なにせこっちの世界に帰ろうとして一回腕を失ってるからさ！

……絶対死んでも二度と使わないかな！
とはいえ、これもこっちの非だからな〜……
60点で。

これ、体系化された魔術じゃなさそうね。魔力量さえあれば誰でも同じ手続きで同じ術が使えるのが魔術詠唱の強みなのに。たぶん諸々を捻じ曲げて権能を使ってる感じだし、詠唱にかこつけて自分の特別さをアピールされてるみたいでムカつくわ。術の効果は別として、詠唱はアングッドよ。

ム、これは……結果の強制、因果に干渉する異能かい？
こういった手合いは相手の発動条件を満たさなければ対処は容易なんだが、二節という短さは中々見ないねェ。
傲慢な物言いは気に食わないが……。
面白そうじゃァないか、解析のしがいがある。
先に回収係共に捕まってくれるなよ。
アイツらの取り柄は仕事の速さだけだが、君が捕まってしまうと脳を開けないからねェ！

はい、「内因型」の術式でしょうか？詠唱者の内部に能力・効果を引き出すための何らかの器官がある、もしくは脳なんかが身体外の領域に繋がっていて、エネルギーを引き出せる場合ですが……紛らわしいですよね、誘引は「引」なのに内因は「因」ですし、身体を通してエネルギーを引き出している場合は誘引じゃないのかって話でもあるし、実際曖昧で問題になることもしばしば……レビューに戻りましょう。
この詠唱は3部分に分けられるように見えます。ただ、内因型の詠唱は個々人の内部で組み上げられた論理を使用することが多いので、正確には分かりませんが。まずはじめに、理外理(ルーズルール)という概念に干渉することで、何らかの効果を発生させる詠唱のようですね。言葉の意味を取れば理の外の理、別世界の法則を引用することで世界に変容を起こし、本来その世界の法則では不可能な現象・不可能に近い現象を引き起こすといった感じでしょうか。制定とありますので自分自身で法則を自在に操作するこができるかもしれませんが、ルールを0から構成するのは複雑で非常に難しいと思われるので、別世界の論理、もしくは自己の体内で形成された論理を捻じ込む場合がコストの観点から見て妥当でしょう。その効果も世界全体ではなく、一定領域内に収まる程度でしょうね。法則に干渉する難易度を考えると、理外理という概念はその世界において案外普遍のものなのかもしれません。その世界に生きる存在が身近に感じることのできる概念であり、個々の中に独立してそれぞれ存在するというよりかは世界の構成要素として中心に位置するような……となると内因型か誘引型かちょうど曖昧な領域に入ってくるんですが……。
次の文章「この手に勝利を。」についてはあまり考えなくて良さそうですね。内因型の詠唱によくある、個人の中の法則に関係するものだと思われます。これは癖やルーティンのようなもので、必須というわけではありませんが「自分の使用する術式である」ことを自分自身に気付かせるために必要な部分ですね。勝利を、とあるので頻繁に戦闘を行う世界なのでしょうか。術式自体も戦闘目的のように見えます。
先に説明した、理外理が普遍的な概念である場合は、「嗚呼無条理(ぼくのかち)」というこのワードが最も詠唱にとって重要なポイントとなるはずです。俗に言う必殺技と言いますか、詠唱者が起こす効果・現象に付けた名称ですよね。手前の「この手に勝利を。」と合わせて勝負に関連する効果が起こるのだと思われますが、うーん。かなり独自の論理で組まれているようですし、やはり内因型の詠唱は推測にも限界がありますね。属性の因子を外側に求めているようではないので、炎を出したり水を出したり、のような単純な効果でないことは分かるのですが。勝負しているゲームのルールを改変して強制的に勝利する、みたいな場合もありますし。これは評価が難しいですね。

眠る山脈　二つの盾
怒れる暁　燦然の月
衝動　残像　雨男　廃棄物　星々の葬列　メメント・モリ
栄華に堕ちろ『八咫烏』

なんか言葉の羅列ね。ブルーがよく爆音で聴いてるお経みたいだわ。それでえーっと……鳥を召喚するのかしら。巨大ドラゴンより鳥のほうがかわいいわよね！
また全然読めないからハシビロコウとか出てきたら困るけど。本当は大きいワンちゃんがいいわ。ちょっとこの詠唱、試してみようかしら？

要素の抽出、私みたいな詠唱経験のない人間にもちゃんと何を唱えているのかがわかるいい詠唱だね。
まぁ、私にこのタイプのは難しそうだけどね……

拠り所として結びつける対象がチグハグな印象ね。三本足の太陽烏を術名に冠しておいて……まあ自然由来の奇跡行使として考えれば多少は意図が分からなくもないかしら。前半部分はそっち方面と相性が良さそうなものなのだけど。……意味は考えずに適当にそれっぽいのを並べただけとか言わないわよね。

十一節の魔術としては中々の完成度だ。
綺麗に纏められていて詠唱難度もそこまで高くはないだろうねェ。
惜しむらくは関連性の低い単語を多く繋げている事だろう、どう作用するかはまだ分からないが力が分散してしまう事は確かだ。
言葉を使えば使う程、その魔術に含まれる属性は多様化する。
だが無造作に並べてしまうと返って相容れない個々の力が反発し合うのさ。
まるで、群がる聴衆の様にねェ。

えー、まず誘引型術式ですね。詠唱の組み立てが整っているので、これは順序にもしっかりと意味のあるタイプと見ました。古典的な術式ではなく、近現代にかけての理論化された術式といった雰囲気を感じます。
前二行は誘引の対象となる逸話や神話だと思われるのですが、山脈で「槍」と「盾」、暁で「日」と「月」のように対比を取っているところが気になります。おそらくは止揚効果を狙ったものだと思うのですが……その場合この詠唱の言葉に対応する誘引対象を見定めていることになるので、かなり高度な詠唱になりますね……！地道な研究が裏にあったのでしょう。
「衝動」～「メメント・モリ」の部分は属性付けの工程だと思われます。短い単語を連ねているので韻律に意味があるタイプかと初めは思いましたが、これはこの一行の詠唱をひとまとまりとして捉えるための勢いが関係している気がします。この一行の流れを一つのモーション、因果関係としてエネルギーに付与することで、これと同じ運命を辿らせる効果を持つはずです。生から衰退、死へのモーション……誕生は省かれていますから、やはり一方向の因果でしょう。そして、単純な死を目的とした詠唱でもありませんね。
死後の再生、ではなく安寧。「葬列」や「メメント・モリ」はその属性に関係した詠唱になっているようなので、効果対象は不死の存在でしょうか？または死後呪いなどの形態をとって再生を行う存在かもしれませんね。『八咫烏』というのは太陽を象徴とする神格存在だと記憶しています。そういった点から見ても穢れを持った存在、死による眠りを跳ね除けてしまった生命への破邪効果が期待できそうです。個人的な感想ですが、たとえ敵対する存在だとしても、敬意や慈しみの効果によって正しい眠りを贈る、といった形式であるこの詠唱術式は好ましいです。構成学的に見てもこれ以上ないほど合理化されていますし、素晴らしいですね。死では止まらず害を為し続けるものへの対抗策がこの詠唱なのでしょうか……こういった詠唱が発達する世界はなかなか特異な状況下に置かれているでしょう。興味深い……貴重なサンプルです。これは論文に使用できそうですね。

希望翳すは夢の遣い
想い築くは理想世界
ここはそう、限界無き幻界

CODE:Release

めっちゃ韻踏んでるわね。ラップバトルだったらこの詠唱が優勝よ。それでまた英語！読めないわ！コデレレス？何するのかしら、全くわからないわ。
ちょっとお茶の間の子たちには難しすぎるわね。でも子どもって、深く考えずに生きてるから案外気にならないのかも。あたしは気になるからこんな感じの点よ。

ひっ、『外の理』……
まぁ、でもこれはコード化されてるタイプのフィールド系だから割と安全……
安全なんだよね？
やっぱ不安だからこの点数で。

これも電子由来かしら。……魔術詠唱のレビューだって聞いているのだけど、これに関しては魔術でもない気がするわ。やってることは空間干渉と法則の捻じ曲げでしょ？世界干渉系魔術にしては簡素だしね。個人の大魔術ならもう少し秘匿性が高くってもいいし。ま、ちょっとくらいは参考になる部分が無くはないから点はあげる。

フフ、言葉遊びは嫌いじゃァ無いよ。
戦いの中にも美しさを、硝煙漂う戦場で優雅に踊るというのなら賛辞を送ろう。
特徴的な詠唱という物は二度目からは即座に看破され狙われるが、発動すれば状況を覆す事が出来るだろう。
……理想を超えて夢を掴み、希望の先に向かってこそ知恵ある者の真価と言える。
その先に何があるか、確かめてみるといいさ。

うーん、うん……？誘引型の詠唱にしては主観的すぎるというか、エネルギー源が定かではありませんね。かといって内因型の詠唱というほどの独自性も感じられないような……でも内因型は個人差が激しいからなあ……えー、もしかすれば「触媒型」？それは穿ちすぎですかね。視点がほぼ固定されているのでやっぱり内因型な気がします。
前二行の韻が揃っていて心地よいですね。こういうところのこだわりは内因型らしいです。詠唱者もしくは詠唱設計者の理念が強いほど詠唱としては強大なものになりますし、逆にここを欠いていれば内因型詠唱として成り立ちにくいですから。「限界無き幻界」の言葉遊びもそれらしいですね。
最後の「CODE:Release」が少し気になるところです。内因型詠唱なので言語の統一性などは主観による論理が強く働くため、外部の存在が「こうした方が良い」みたいな意見を挟んでも意味がないですからね。このやり方が最適であるからこそ詠唱者は使用しているわけですし。ただ、別言語が塊のフレーズとして入ってくるような場合は、「お決まりのセリフ」みたいなことが多いですからその類いの言葉だと思います。
発生しうる効果としては、その世界とは性質の異なった領域の展開でしょうか。詠唱者の脳内で描いた景色がそのように再現される領域の展開ですかね。もう少しテクニカルな解釈ですと、類感魔術の応用系の場合があります。その領域内と完全に同一の世界を自己の内側に描いた上で、自己領域に理想を描くことで干渉、思うままの結果を作り出し、それが類感状態にある現実の領域内にも作用する、といったパターン。内因型詠唱者にとって世界の方に影響を与えるよりも自己内部に影響を与える方が簡便だと思われるので、個人的にはこちらをオススメしたいです。残念ながら内因型の詠唱者は、本人でもどのような原理・理屈で詠唱を行っているか判別がつかないことが多い上、理解できたとしても詠唱を改変するのはその方の人格を取り換えるようなのもので、困難を極めるのですが。希望、夢、想う、理想とかなり明確なワードが使用されているので効果の方は推測しやすいですね。
領域魔術となりますと時間経過で勝手に規模が縮小していくパターンが多いです。維持にコストがかかるので、大規模な展開は難しいでしょう。自己の外側にエネルギー源がある場合はまた別ですが、内因型ですからね。思うままに世界を操作できるのは応用性が恐ろしいほど広く柔軟ですが、その状態はつまり高エントロピー状態で、エネルギーに満ちているということ。何か一つの効果に絞った方が、術式としては効率が良いです。想像が全て具現化するということは、イメージしてしまった結果全てが事実になってしまうことでもありますし、敵が想定外の行動をとった際に「しまった」と思うだけで致命的なエラーを引き起こしかねません。裏をかかれて自爆しないよう、細心の注意が必要ですね。

血性術式、限定展開──。
赫の血性、紅の血性を並列接続。
照射術式、全点解放。
文字通り""灰""になるがいい！
「血禍招来・灰燼魔炎」！

なんかめっちゃ赤い感じがするわ！服も持ち物も部屋の内装も全部が真っ赤なレッドが喜びそう！文字通り灰に〜って部分もいいわねー。
文字通りって言葉好きだわ。文字通りなんだもの。深く考えなくていいわ。でも血は年齢制限上がっちゃうから、あたしたちは活用できないわね。残念だわ……。

魔族の中でも吸血鬼族が主に使うタイプの炎術式だね！
何より魔術的な工程がほぼ語られていること、最後の一言が相手に恐怖を与える言葉になっているのもいいね！

こういう形式の詠唱ねー。血統に物を言わせてるのが気に食わないけど、まあ詠唱としては悪くないんじゃないかしら。火のエレメントの術と血の力って噛み合い悪いから私は使わないけどね。生まれついての適正だかなんだかでこいつの血にどれほどの価値があるか知らないけど、どうせ私の方が強いわ。

うん、良いじゃないか。
体系化され練り上げられた術式、準備が容易な血を触媒としているのも実に効率的だ。
原初の叡智たる炎を象るのはとても効果的と言える。
信仰系の術は祈る対象となる神への信仰や知名度がそのまま威力を底上げする場合があるが、炎というのはそれこそヒトがサルモドキだった頃から力の象徴として扱われてきたからねェ。

「血性術式」「照射術式」という術式のカテゴリがある世界の詠唱でしょうか？「血性術式」に対応するものが「赫の血性、紅の血性」で、「照射術式」に対応する何らかの有意味な「点」と数えるものが「全解放」されている、と解釈しました。これもまた、一つ目の術式と同様に詠唱そのものではない気がしますね……
「血禍招来・灰燼魔炎」のもたらす効果は、文字通り炎の召喚でしょうね。これはあくまで推測ですが、「血性術式」「照射術式」のうち詠唱の属性を持つ方・効果の内容を決定するのは「血性術式」の方ではないでしょうか。「血禍招来」という締めの文言から、「血」がキーとなって効果を発生させているものだと思われるので……
もし「血性術式」の詠唱が誘引型だった場合は、その世界の血液には炎に関連する神秘・伝承などが存在するでしょう。赤く揺らめく見た目が古来から炎の例えとして形容されてきた、神の身体から漏れ出した血が炎となった……のような。「赫の血性、紅の血性」がその属性を使用した詠唱となって、この「血禍招来・灰燼魔炎」がもたらす効果の引き金になっていると考えられます。「赫の血性、紅の血性」の二種類の詠唱を使用しているので、シンプルに炎属性を誘引していない場合もありますね。ものが燃えるために必要な状況、例えば「燃素」のようなものを生み出す術式と、それを発火させる術式の組み合わせのような方法もあります。血液の成分はほとんどが水であり、むしろ火とは真逆に位置するもののように思えますが、逸話や伝説という歴史の築いた観点、もしくは事実より誘引すれば十分に効果を発生させることができます。この「血性術式」の詠唱は良い例ですね。
誘引型でない場合、「触媒型」であれば、血液自体に魔力などの特殊なエネルギーが宿っているという状況になります。そのエネルギーを詠唱式によって加工して、望む形に整えてあげれば、炎以外にも様々な効果を発揮することが可能でしょう。しかしこの場合は血液に存在するエネルギー以上の効果は期待できないため、発生する効果は小規模なものになるでしょうか。もしくは「血性術式」の効率が非常に良い、血液に含まれるエネルギーが非常に多いということもありますか。「灰燼魔炎」というほどですから、発生している効果は十分に破壊力を伴うものでしょうし、あり得るならば後者の場合でしょうかね。
応用系の詠唱として、複数の詠唱を圧縮したものを下位に置き、その上で詠唱式を練り上げているという場合もありますが、今回もストックされている詠唱を多重に展開しているだけのように見えます。私は血性術式や照射術式の組み立てがどうなってるのか知りたいのですが……ああ、もどかしい。

荒野　色彩　食虫植物　讃美歌　漂流　連綿の牙
死地を穢す一滴の血　焦熱の地を悉く啄め
血翅凍法「縛鎧」

また羅列よ！文字自体はシンプルだけど、こっちのほうがよりよくわかんないわ！まあよくわかんないけどなんか氷属性？なのかしら！なんでも冷凍してからそのまま食べるブルーは喜びそうね！
戦いには……うーん、冷凍肉で殴るとか？あんまりかわいくないし教育に悪いわね！お茶の間ポイントを踏まえてこんなところね！

詠唱の方もそうだけど、呪文の性質が『顎』と『氷晶』で汚れないのがいいね！

まあまあ良い詠唱なんじゃない？ さっきのと比べてこっちは同じ血の術式でも水のエレメントに寄ってる術式よね。土と結び付いて身体を鎧うのも道理に適ってるわ。戦地を拠り所にして対象に血を『纏わせ』る形なのも単純な破壊魔術との違いを感じさせるからプラスグッドよ。ちょーっと生臭すぎるけど。

似たような形式の術を見たが……あちらよりは纏まっているねェ。
関連しない単語を繋げるという術は“こちら”ではあまり見ないんだが、この次元ではそういう体系や技術が確立されていたりするのかい？
うっすらとしたイメージは想像出来るが、発動するその瞬間まで何が起きるか分からないと言うのは大きなアドバンテージとなりえる。
それは、私も知り得ない事だ。
『ミュージアム』の上層部は未知を恐れる馬鹿しか居ないし、末端には未知すら恐れぬ馬鹿が居る。
……もっと自由に外を見て回れるのなら、次元固有の技術を探求してみたいものだねェ。

続けて誘引型の詠唱術式ですね。こちらも「血」をキーにした詠唱でしょうか。属性の決定は中間の一行がそれに値すると思います。
一行目の荒野～牙では誘引型らしく誘引対象に紐づいた要素を並べて、誘引の効率を上げていると考えられます。讃美歌とあるので神のような信仰対象である、もしくは信仰対象だった概念からエネルギーを引き出そうとしていますね。荒野はその神が存在した場所かでしょうか。荒野土着の宗教ということなのかもしれません。色彩もその信仰方法に関連していそうですね。特定の色を「神の色」として同一視したのかもしれませんし、そもそも神の方から「色」という視覚的アプローチを使用して人々に干渉し、信仰を働きかけたのかもしれません。荒野という場所は一面土色の世界です。そんな中「色」という強力で鮮烈な存在は、人々の気を惹く上で効率的な形のような気もします。砂嵐の中、砂漠の風景の中で定住地を見つけるための目印になったり、自分の部族と別の部族を見分けるための目印に色を使用したのかもしれません。砂漠において色は信仰対象となるのに相応しい力がありますね。
食虫植物というフレーズから、神は外敵を捕食し信者を守護してくれる存在だったのかもしれません。砂漠の植物というだけでも何らかの神聖さを感じるに足りますし、植物であれば染料を取り出せるのかも。信仰対象が「食虫植物」→「そこから取り出せる色」→「色を持つ神の概念」と移り変わっていたら面白いですね。
しかし後半では「漂流」とあり、牙とも続きます。そこに生きる人々から信仰が失われたことを表しているのでしょうか。詠唱者がその場所出身ではないため、信仰が広がり外の存在にも伝わり、「連綿」と紡がれている、だから詠唱に盛り込める、という形なのかもしれません。信仰の存在する範囲を詠唱する場所にまで広がったということにして、エネルギーを引き出す効率を上げている可能性もあります。
この詠唱のもたらす効果はおそらく攻撃的な、範囲を持った破壊を目的としたものだと思われるのですが……神様に何があったのでしょうね。死地というのは砂漠でしょうか。焦熱の地は砂漠のことを指しているはずなので、詠唱を行った場所が死地なのか、それとも神によって死地となってしまった場所、つまりその神を信仰していた砂漠の村を指している？そこを汚す一滴の血は、神が吸ってしまったのでしょうか。食虫植物のような捕食を行う神が、人間の味を覚えてしまった。悉く啄めという文言があることからも、噛むことや捕食に近い効果を発生させる詠唱だと思われます。地面から無数の牙を持った植物や、それに近い概念体が生え効果対象に噛みつき自由を奪う……そんな効果を想像します。宗教的伝承を最大限有効に活用した詠唱だと思います。テクニカルで素晴らしいですね。

鈴音、聖、極、裁断。泥濘に沈め七つの所在、我が名を持って棄却する。忘却十六号、「縁魔」。

緑魔！？ちょっとグリーン！連絡をよこしてこないで！あることないことお茶の間にばらまくわよ！えーっと、何かしら……なんか忘れさせるのかしら？隠しごとなんてあたしには無いわよ！
まあ、イエローのプリン勝手に食べたこととか忘れさせられるなら使いたいけど。あの娘ったら、ちゃんと名前書いときなさいっての！

簡略化された詠唱っていうのはいい、何よりスマートだからね。
まぁ、これ使うんだったら無詠唱でいいかなってなる所はあるから、その辺はちょっとな……実用性がね。

この場合の"名"って実際に個人を特定する記号じゃなくって、ただの位なことが多いわね。だから評価してあげるのだけど。結局魔力量の保証に近いものだし。記録喪失の魔術としてはまあ、良い方かしら。ただ型が固定されすぎてて余所の他人が使う用じゃないのが明確なのよね〜。

う〜ん？
かな〜り前に、似たような術を見たような……。
……あァ！反異物派の愚者に紛れていた奴と同じだねェ！
こちらの方がより洗練されている！
……そりゃァテロリストに加担する馬鹿の術が源流と同じ練度な訳は無いか……。
その馬鹿ですら厄介だったから……関わり合いになりたく無いねェ。
そもそも「聖」だの「裁く」だの、正義だ悪だの論法は全くもって無駄だと思っているんだ。
君達の正義が誰かに保証されたとして、その誰かの正気を保証する奴は居るのかい？

これは誘引型、それとも内因型？「我が名を持って棄却する」のフレーズの解釈によって変わってきますね。使われている文言の意味性・伝承的な強度から、個人的には誘引型の方が綺麗だと思います。
「鈴音、聖、極、裁断。」という詠唱は断片的すぎて意味が取りづらいのですが、これは意図的なものかもしれません。詠唱の意味が先読みできてしまう場合、途中で無効化されたり詠唱の主導権を横から奪われてしまう可能性もあるので……となると対人戦闘や、かなり智慧を有する存在との戦闘で使用することが想定されているように思えます。誘引型としては誘引対象を明確に指定した方が誘引力が強くエネルギーが多く取り出せるため、こういった断片化は理論的にはあまり採用したくはない手法なのですが、実戦となれば多くの詠唱術式はうまく作動しなくなりますからね。机上の空論、夢に出た詠唱というものです……少し違うかも。ないものねだり、ですか。
「鈴音、聖、極、裁断。」の部分からはどちらかと言えば聖なるものによって邪なるものを切り払う、という印象を受けます。後の「縁魔」は「閻魔」という地獄・冥界の王のことを指しているのでしょうか。ある宗教においてエンマといえばそういった存在だったと記憶しておりますが……「裁き」を与える存在のため、印象とそこまで離れた感じはしませんね。「裁断」とは切断すること以外にも、「物事の善悪・正邪を判断して断定する」という意味がありますし。詠唱の前半部ではあえて裁きと切断のどちらにも取れる言葉を使用し、詠唱後半部の干渉されにくい部分で「縁魔」という名称を用いることで誘引する概念を固定しエネルギーを引き出す。実戦を想定してよく組まれた硬派な詠唱ですね。
「泥濘に沈め七つの所在」が何を意味しているか、辿り着くことは難しそうですね。おそらくその世界独自の概念でしょうし。それともある宗教における地獄、「大焦熱・焦熱・大叫喚・叫喚・衆合・黒縄・等活」……の七つを指して「七つの所在」と表現しているのでしょうか。地獄へ堕ちた人間は七日ごとに七回の審判を受けるという話もありますし、七という数字が重要なファクターになっていることは間違いなさそうです。「泥濘に沈め」、「棄却」から、それら地獄の裁きを否定し、その代行者として自己を世界に提唱するような効果もあるのでしょうか。「忘却十六号」は詠唱効果を起動する装置の名前……？あまり確かなことは言えませんね。想定される効果としては、「縁魔」としての力を自己に付与するなどの強化魔術などが考えられます。敵対するのは罪人や邪なる存在でしょうか？
エネルギーロスと他者による干渉の危険性を加味し、無駄を最大限に減らしている良い詠唱でした。この詠唱術式を考案された方とはきっと気が合いますね！

厄災　陰影　無貌の鬼　陽光　亡骸　過食症
嘲りの星　天撃つ双眸　修羅と雷
弾け「鳳凰種・茜炎」

羅列ナンバー3ね！なんか慣れてきたわ！本当にますます意味がわからないわ！どんなテンションで唱えてるのかしら！まあ、これは炎属性っぽいわね！鳳凰ってなんか鳥でしょ？
ドラゴンから変える候補がひとつ増えたわね。でも詠唱するのむずかしそう。赤いって焚き付ければいけそうだから、レッドにやってもらおーっと。

どっちかというと人間より魔族向けかもな。
召喚系なのはいいんだけどね……私もよく使うから。

鳳凰の名で火のエレメント系の術ね。名が体を表してて分かりやすいのは高評価。もう少しくらい鳳凰の権能を引き出せる形にしても良かったんじゃないかしら？とも思うけど……構成も拠り所と形の定義でしっかりしてるし、派生系も用意されてそうでいいじゃない。拡張性の高さも確かに大事よね。

ン〜……なるほど、何となく掴めてきたような……。
畏れに、災害、光と闇。
解釈を広げれば繋がりはする、か。
所謂天才と呼ばれる者たちが作った初めから完成している術式では無く、長きに渡り連綿と受け継がれ少しずつ改良を加えられて来た物の様に受け取れる。
似たような体系の術を今度試してみても良いかもしれないねェ。
役に立たない部下は幾らでも居るから、的にでもしてみようかなァ。

これも誘引型術式ですね？タイプとしては少し前に解釈した、誘引対象に紐づいた要素を並べて誘引の効率を上げる詠唱だと思います。
しかし、第一行目の言葉を紐づけるのが難しいですね。「厄災　陰影　無貌の鬼」の始動からは暗さ、破壊的なイメージがあるのですが、その後に「陽光」と続くのが気になります。「亡骸　過食症」は文をそのままに受け止めればスカベンジャー……屍食鬼のことを指しているのでしょうか？個人的には「陰影」と「陽光」に深い関係性があると思います。シンプルな影ではなく、光によって浮き彫りにされる影の象徴といいますか。あえてこの詠唱に「陽光」を差し込むことで、効果をより強力なものに引き上げようとしている気がしますね。止揚効果を狙うにしては対応が小さいでしょうか……その世界の神話的に陰影/陽光周りの言葉が関係している要素かもしれないですから、確かなことは言えませんが。
ここで二～三行目が問題になってくるんですよね。「嘲りの星　天撃つ双眸　修羅と雷」……ダイレクトな神話・伝承からの引用という印象を受けるのですが、三行目の「鳳凰種・茜炎」という締め句との関係性がいまいち読み取れないところがあります。鳳凰種が「星」のような姿形を持っている、空で燃え輝く存在ということなのでしょうか。天撃つ双眸というのは位置関係が反対なような気もしますね。空から見下ろすならば「天撃つ」ではないでしょうし。鳳凰種はより空を目指す存在なんでしょうかね。より高所で輝く恒星との一体化を目論み飛んでいくとか、そこから生まれた存在で故郷へと帰りたがっているとか。想定される効果はやはり「鳳凰種」の召喚や、それを象った炎の発生などでしょうね。
「弾け」という起動のフレーズも気になります。流れ出すイメージや通す、変換するというイメージがあれど、「弾く」と括る詠唱は初めて見ました。集中させたエネルギーを流すことで、空間中の魔素などに干渉し、それらを「粒子として弾く」ことが効果の起動原理となっている世界なのでしょうか……？
これは少々突飛な発想ですが、この世界の詠唱は普遍的な詠唱の逆を行っているのかもしれません。対立概念を立項することで、逆側を引き出すという方法。ある方向に働く力が大きくなればなるほど、その逆へと引っ張る力も強くなります。光が強くなれば影も濃くなるように、その反動を「弾く」ことで詠唱が成り立つ世界。その世界の詠唱であれば、例えば「鳳凰種」とされた存在の天敵や、彼らを害するための方法、つまり「天撃つ」「雷」のような詠唱が「鳳凰種」を引き付けることになります。非常に特殊な誘引型術式なのかもしれませんね……私の知識不足で妄想の域を出ないところだけ、残念ですが。

えーと、なんじゃったか……白き茨？うんにゃ、夜の帳……違う、昏き……そう、昏き翼じゃ！えー、昏き翼……嘆きの太陽……トカゲの尻尾……いや、蝶の鱗粉だったか？ええい急かすな！蝶の鱗粉……潜り抜ける環……それから、遍く光！どうじゃ！『極煌煉炎球ファイアボール』！

あら、このおじいさんすごく親近感があるわ！あたしらもいつもこんな感じで口上考えてるから。グダり？知らないわよそんなの！
もしかして先代ゴリオスンジャーだったりするかしら？あ、でもなんか難しい漢字使ってるから違うかも。とにかく、これは高評価よ！

曖昧すぎるから覚えてから再提出しよっか！
ちゃんと発動してるのは点数に入れておいたよ！

魔術詠唱の基礎も知らないの？ 唱えるなら素早く正確に最も効率よく唱えるのがエレガントでスマートなのよ。というか魔術書にこんな耄碌した年寄りの戯言みたいなのを載せるつもりなのかしら。付けられるならダブルプラスアングッドを付けてやりたいわね。

……まァ、詠唱としての完成度は下の下だねェ。
目を向けるべき杜撰な詠唱では無く、むしろこれで“発動している”という点だ。
言葉を並べればその分だけ属性が多様化する、と先程言ったが今回はより酷い。
意図せずして本来含まれない単語を羅列し、その上で発動させられるというのならそれは天才ではなく『天災』だろう。
分かるかい？
自らの力を正しく理解せず、制御すらしない馬鹿がこんな所に居たという事さ。
赤子が核のボタンを握っているのと同じなんだよ。

あの……あのですね。まず詠唱術式をしっかり思い出してから詠唱を始めてくださいね。途中で取り込もうとしたエネルギーが発散するぐらいならいいですが、逆流したり意図とは異なる属性を帯びたりすれば大惨事ですよ？まったく、これだから昔ながらの魔術師は……安全管理を軽視しすぎています。
それにしても詠唱する要素がバラバラですね。「白き茨」と「昏き翼」なんて語感が近いだけで、意味合いは全く逆を取っているじゃないですか。本当にこの詠唱で効果を発生させられるんでしょうか？もし可能だった場合、この詠唱は引用型ではなく触媒型だったというのが一番納得の行く結論になりますかね。この魔術師さんの中にあるエネルギーを使用する術式であり、紡がれる言葉や要素の厳密性はそこまで重視されないという場合です。最終的なエネルギー操作の決定権は詠唱者の手にありますし、これなら何度詠唱を失敗してもある程度は収拾がつくでしょう。そうだとしても危険極まりないですが……『極煌煉炎球ファイアボール』なんて魔術を行使できるのですから、それなりに高位の魔術師なのだと思うのですが。歳ってとりたくないものですね。

深淵より来たれり……我が漆黒の……えー、深い……黒……黒煙の…………超……破壊、えいっ「全世界激襲大魔王的暗黒波動！」……ふん、完璧です

完璧よ！アンタ、ゴリオスンジャーにならない？アンタのノリでバッチリやってけるわよ！なんか黒くてお茶の間の悪ガキが好きそうな感じもぴったり！ゴリオスブラックはアンタに決まりね！
……ホントはもうブラックいるんだけど、ウチとは違う会社に連勤しててなかなか出動できないのよね。ブラック2ってことで、ひとつどう？

うーん、完璧じゃないね！ちっとも完璧じゃない！もう少し練習しよ？
とはいえ詠唱エアプの私があんま批判するのもアレだからな！ちゃんと発動してるのと、一応最後までやった事は評価しておくよ。

前のと同じね。ダブルプラスアングッド。これって詠唱のレビューなのでしょう？なのに肝心な詠唱が雑で発動すれば良いみたいな考え方って嫌いよ。詠唱以外の手続きを踏む方式も分かるけどね。とはいえ何より術の名前が気に入らないわ。私の本物の詠唱でこいつの頭を超破壊してやる。

これも酷いねェ。
なんというか、聞くに堪えないねェ。
軽々しく全世界だの超破壊だの、強い言葉を使うと術の精度が下がるのが常識なんだが……。
それに、もしその言葉をそのまま汲み取った物が発動してしまえば取り返しがつかない。
だから余り居ないんだ、こういう事を口にする奴は。
……強い言葉を使いたがる人種が一定数存在するのは知っているが、嫌な汗が出てくるねェ。
君の中の『完璧』とやらの基準は知らないが、もう少し高みを目指すといいよ。
成長した時に、過去を思い出して悶絶しないように、ね。

ええと、可愛いですね。私の同級生にも居ましたよ、昔こういうオリジナル詠唱を考えていた子が。懐かしいですね。
はい、あの……流石にこれに点数を付けてあげるわけにはいかないですし、そもそも正式な書面にこれを残してしまうのはなんというか、人の心が無いというか……どうして応募してきてしまったんですか？そして、運営委員会さんはどうして通してしまったんですか？
あー、えー。と、匿名で良かったですね！勉強頑張ってください、応援しています。特に詠唱文の構造理論学なんかが面白いので、ぜひ文献を当たってみてくださいね……

螺旋の海 断絶され 精密をこぞ尊べ 我が弍拾肆の針よ 廻天せし渦となりて理を両度覆さん 「刻織りの舞台」

羅列……ってもうホントに好きね！詠唱ってこうなのかしら？よく見たらちゃんと文章になってるわ。意味は全然わかんないけど。うん、何が起こるのかも全然わかんないわ！
舞台？舞台セットでもするのかしら？うーん、テレビ局には良いのかしらね。

魔術的な空間で擬似的に機械を構築して、魔力糸の精密な操作で物質を構築する繊細な術式。
こういうのだよね！脳の整理のために詠唱したくなるタイプのやつ！
実用性も含めて高評価！

手続きから術の効果が分かりやすくっていいわ。時間系の魔術としては標準的な詠唱で無駄がなくて好きよ。時間神の名前を呼ばない辺りに詠唱者の自信みたいなのが見え隠れしてるけれど。まあ私にだってこのくらいは出来るし、型もキレイだし、減点は少しで勘弁してあげるわ。

時に干渉する力はどれも強力でねェ。
過去に戻ったり未来へ進んだり、加速したり停止したり、ソレは恒久的なモノでは無さそうだから見逃しておくが、場合によってはあのいけ好かない回収係が向かうかもしれないねェ。
舞台という名付けからして結界か領域に似た物を展開する術式だろう。
射程範囲内に相手が入れば引きずり込んで自分の有利なフィールドで戦えるというのは大きなアドバンテージになりえる。
それが時に干渉する物となれば尚更だ。
私も昔に時空魔法の使い手と戦ったことが……いや、その歴史は無くしたんだったか……。
……忘れてくれたまえ、独り言だ。

ふーむ、誘引型術式だとすれば、発展語が少ないですね。何らかの伝承に紐づいているならば事象や固有名詞が組み込むのが定石ですから。かといって内因型にしては精緻すぎる、つまり意味が通りすぎています。内因型術式なら既存の言葉の関連や、社会に通底している論理など無視した方が固有性を帯びて効果が強まることが多いです。
高度に理論化されていますよね、この詠唱は……うん、狙っている効果を推測するに、誘引型術式でなければ成し得ない規模だと思います。誘引対象はきっと「時間」ですね。世界の刻んできた時間という概念に干渉し、築かれた歴史の地層、その圧力を詠唱に応用しようとしていると思います。しかし誘引に使う要素が時計ですか。人類が開発した時計の概念では人類の時間しか測れないですから、神話や伝承のようには力を引き出せないかもしれませんね。神や精霊のような存在ほど原初的ではなく、形而上的で本能に基づいたものでもありませんし。ただ、この世界ではその壁は既に突破しているのかもしれません。もしかすれば誘引型と触媒型のハイブリッドという可能性もある……？困りましたね、一体どのようにしているのでしょう！ブレイクスルーの鍵が眠っていそうな詠唱でワクワクします。
さて、効果は時間に関連したものだというのは容易に想像が付きますが……まあ十中八九「巻き戻し」ですよね。「理を両度覆さん」とまで言えば時間遡行の術式でしょう。渦のように先へ先へと落ちていく形の時間概念を、逆向きに巻いて戻す。この形式を取れば時計の操作との相関が取れます。「両度」であるのは戻ってくるために付けられた部分ですかね。目的は過去事象の編集でしょうか。当然エネルギー的な問題から、効果範囲は世界全体には及ばないと思うので、例えば一部地域において大災害などで人命が多く失われた場合に使用されるのかもしれません。
これは単なる思いつきなのですが、螺旋の海……実は生物の内部にも螺旋状の構造が眠っていると言われています。それらと関係があるでしょうか。世界ごとに時間の捉え方・数え方が異なることもあるため、あえて追求はしなかったのですが、24の針という言葉にはいろいろな捉え方があります。「針が24ある時計の世界である」「12個の分割された時間を指す、二対の針を指して2x12で24の針」などがパッと浮かぶのですが、私の世界では一日という時間単位が「24時間」で区切られているんですよね。そして、生命の最小単位と言われる「細胞」、その中で人類の細胞が分裂する時間は「24時間」です。時間の単位である「一日」と、生命の最小単位である「細胞」。生命の中に存在する螺旋状の構造と、時間の螺旋構造。螺旋の構造を持つということは、「二対」あるということです。二対の針と二対の構造、そして「両度覆さん」……これはある人間一個体を中心とした時間の巻き戻し、もしくは若返りの術式なのでは？と、すれば空間に作用するほどのエネルギーは不要になりますし、人類の規定した時間の概念をはみ出さないことにもなります。実現可能性的にはこの方が強いかもしれません。もしこのような方法を取る場合、魔術とは別分野の領域も複合した術式ということになりますが。複雑極まりないですね……ええ、恐ろしいほどに高度です。
それにしても、時間操作魔術は夢がありますね。私の世界では非常に困難な魔術として有名で、世界跳躍魔術や完全なる蘇生魔術と並べて魔術の最終到達点のように語られているぐらいです。ごく小規模、短期間での時間遡行などは理論上可能と言われているのですが、まだまだ空想の域を出ませんね。もしかしたらこの詠唱も理論上のものだったり、非常に安定した環境下でのみ可能な術式だったりするのでしょうか？先の詠唱を見るに、必ずしも効果が発揮できるような詠唱が集められているわけではないようですし。ぜひ意見交換をしてみたいものですね。

王よ、厖き痩躯のナズオリグよ。
虚無を齎す黒なる食指を、以て世界を舐り取り給え。
忌星『彎』

読めないわ！！そんで結局どういうヤツなのかもよくわかんないわ！！！星？星が降るのかしら？なんかそういう雰囲気はしないんだけど……
うん、ちょっと、まあ。お茶の間の良い子に配慮してほしいわ。

異界の神の力を降ろす事で発動する強力な攻撃魔法だね。
詠唱はかっこいいけど、私は自力で再現できるから神を降ろすのはあんま使わないかな……

少し気になるところはあるけど、まあ解釈次第でヘンテコ詠唱にはならない範囲だから全体で見ればプラス寄りね。形式もしっかりしてる方だし。まあ肝心の権能がケダモノ由来っぽい感じだから可愛くないのよね。もう少し力だけ借りられないのかしら。術の効果的には現実歪曲で破壊をするタイプでしょ？

良い詠唱だ。
綿密に組み立てられていて、酷くシンプルで、だから強い。
体系としては信仰魔術や洗礼詠唱に近いだろうねェ。
かつて在った物、または在るとされた者の逸話を基盤としてその力を模した現象を生じさせる。
軌道上の物を消滅させるのか、それとも削り取るのか。
いずれにしろ取り扱いには注意が必要だろうねェ、使い手が未熟では事故が起きるだろうさ。

分かりやすい誘引型の術式ですね。少々難敵が続いたのでホッとしました。そう、色々と難のある術式が……
さて、ここで誘引している対象は王と呼ばれている「厖き痩躯のナズオリグ」と呼ばれる存在でしょう。こう固有名詞が登場すると対象が明確になって嬉しいですね。「厖き」という言語表現は初めて見たのですが、大きい・多いのどちらかの意味を持つのでしょうか？あいにく私の所持している辞書では意味が確定できませんでした。痩躯とも言われているので、大きさというよりは「多い」の方でしょうかね。後文の「食指」の数を指して多いと表現しているのかも。
詠唱としてもシンプルなもので、「厖き痩躯のナズオリグ」の持つ権能や能力、はたまた伝承でしょうか、「虚無を齎す黒なる食指」と表現される現象を発生させるための詠唱だと思われます。誘引対象からエネルギー・属性ともに誘引してきているため最も効率が良いです。「忌星『彎』」というのはその現象を応用した戦闘魔術のことを指すのでしょう。戦闘において最適化されているような気がします。「彎」という言葉には弓を引く、弓のように曲げるという意味があるようですが……誘引される現象は空間を削り取るような効果だと想定されるので、弓のように空間を捻じ曲げるという意味かもしれません。忌星の部分に着目すれば、また別解釈をすることもできますが。個人的には「忌星」という星が「厖き痩躯のナズオリグ」のシンボルとされているもので、それを引用することで力を誘引しているという形式だと効率が良いと思われるのですが、発生する効果が空中から始まりまるで星のように見えるのかもしれませんし、光すら削るために真っ黒な空間に空いた穴、黒い星のようになりそれを「忌星」と呼んでいるのかもしれません。こういう可能性は幾ら仮定しても潰せるものではないですから、あまり意味は無いですが……

眼を抉り舌を抜き喉を貫き腕を捥ぎ足を折り爪を剥ぎ肉を削ぎ骨を断ち魂を啜る。「来りて滅ぼす君の敵」――精々ソレと遊んでいるといい。

え！？ちょっとちょっと！怖すぎるっての！何をする詠唱なのよ！遊ぶような相手じゃないわ！子ども泣くわよ！！アンタが遊んでなさいっての！！
あと召喚しといてソレ扱いするんじゃないわ！！うちのドラゴンだったら裏垢にこもるところよ！！まったくもう！ちゃんと認知しなさいよね！！！

ん〜、構築までの詠唱は完璧だよ！
……けど、個人の好みとして直接手を下したいから100点ではないかな……

召喚対象の存在定義で時間を使いすぎね。その分門の生成手続きはしなくていいなら便利だけど。もし召喚使役型の魔術じゃなくて対象の破壊だけが目的なんだとしたら、もっと別のを使うわ。ま、必要以上に残虐に振る舞うのはエレガントさに欠けてアングッドってことよね。

こういった攻撃的な詠唱というものは戦闘に使う事を想定するのが一般的だと思うんだ。
その点からするとこれは余りにも読み上げづら過ぎる。
長さや読みづらさで詠唱難度は何倍にも跳ね上がるのだから実戦的では無いと思うねェ。
当然相手は詠唱を妨害したい、こちらは術を発動させたいのだから難読な詠唱は不意打ちか時間を稼ぐか、それとも相手が身動き取れない状況で使う必要があると思うよ。

ここまで詠唱者の主張が強いとなれば、流石に内因型でしょうか。
内因型にしては非常にシンプル、やりたいことが明確に分かる詠唱で珍しいとまで言えるかもしれません。「来りて滅ぼす君の敵」という名称も複雑さをあえて排しているような名前です。内因型詠唱で召喚される存在などが、固有名詞を持っていないのは珍しい。これは詠唱者の性格に由来しているのでしょうね。詠唱者自身があまり自己に価値を置いていない可能性が高いかもしれません。自分自身が代替可能な存在と捉えている、むしろそうありたいと思っている。あらゆる現象を有機的ではなく無機的に、パズルのように考えている方の詠唱という気がします。
そう仮定すると、「眼を抉り～」の部分で特にその性質が顕著に出ているように思えます。人体、人間をひとまとまりの生命と捉えるより、眼や舌、肉や骨や魂で構成された機械として、それらをパーツで見ているような詠唱ですから。呼び出される「来りて滅ぼす君の敵」はどんな形をしているのか気になりますね。小さな立方体で構成された金属生命体みたいなものが現れたとしてもおかしくありません。
うーん、内因型の詠唱を考えるとどうしても詠唱者の心中や在り方についての考察になってしまいますね。詠唱式のレビューとしてはどうなのでしょうか……この詠唱は個人的に好ましい素朴さで、内因型の詠唱の中では特殊と言えるでしょう。良いサンプルですね。

戒律に呪縛す憐れなる神の嬰児よ
再び星辰の刻を超え 天を衝く蒼雲より。「白夜」

白夜は読めるわ！バカにしないで！それ以外は……うん。お茶の間に優しくないわね。何をするのかちょっとよくわかんなかったわ。なんか空に向かってってる感じはするわね。
ホワイトの自家用ロケットとどっちが速いのかしら？それにしても白夜って、しろよるでしょ、夜が白くなるのかしら？うーん、哲学的ね。

『奇跡』特有の仰々しい愛称と古の『神の子』に祈りを捧げる大規模な構成がいい感じだね！
……まぁ、神の力は借りるまでもないから奇跡系は実用性ないんだけどね。

これもまあところどころ気になるけど……まあ詠唱の本質部分は分かるし甘めに採点してあげる。私が詠唱するとしたら修正するけど。星占系の派生で奇跡を呼ぶタイプって奇跡資源を用意する所が肝心なんだけど、そこに関してはいい感じだし、一応及第点はあげられるわね。

星、空、それに時。
やはり格式ある術式の持つ属性とはこうでなくては。
神にまつわる詠唱を組み立てる上で天や時と言った人智では届きにくい遥かなるモノを組み込むのは古くからある手法だ。
その上、人間は星に無数の意味を持たせているからねェ。
この術式にはまだ高い拡張性が残っている。
陰気臭い神の子よりも別の神を核とする事も出来るだろう。

これも、誘引型術式ですね。よもやま話ですが、誘引型術式が詠唱術式の形としては一番メジャーでそのほとんどを占めるので、今回レビュー用に渡された詠唱たちはむしろ偏っているくらいです。誘引型術式が一番理論的に言及しやすいので助かりますね。
さて、この詠唱の誘引対象は「戒律に呪縛す憐れなる神の嬰児」ですね。分かりやすく神話上の存在なので、エネルギーの誘引対象としては十分でしょう。神に類する存在でありながら規則に縛られているということで、詠唱に組み込んでエネルギーを吸い出す上でかなり便利な存在なのではないでしょうか。その規則を流用したり曲解したりして無理やりに当てはめれば、どれだけ詠唱者から離れた存在であっても概念に直接訴えかけることができますし。最適化のための工夫が見られて良いですね。
二行目からは属性付け、発生させたい効果に関係するものだと推測できます。星辰というのは星、星座のことですね。神話と星座は深い関わりがありますし、そのまま神格の象徴として引用することもできるでしょう。少しだけ「戒律に呪縛す」というのが「星座として紡がれ、縛られる」ということかと考えたのですが、あまり適当とは思えませんね。神話において星座へ揚げられることは昇格ですから……それとも人理に収められるということがそれを指すのかもしれませんが。まあこの詠唱においてより重要なのは「星辰の刻」と言われていることで、これが「星座、神の存在していた遠い過去時空」を指しているのか、それとは異なるこの世界特有の「星辰の刻」があるのか……ということでしょう。どちらにしても「再び」というフレーズは過去を指し、その過去の場で発生した現象を「超え」させることにより属性を引用、もしくは事象を誘引し効果として発生させる、という筋書きが一番効果的だと思われます。
発生させる効果は「白夜」というように太陽が関係しているのでしょうね。「天を衝く蒼雲より」とあるので、雲を起点として太陽を発現させる、気象操作の詠唱術式でしょうか。「太陽が沈まない」というところと紐づけて意外に治癒魔術だったりするのかも……？引用してくる神の逸話によりますね。どちらにしてもこの詠唱文でしっかり一つの効果に定まるよう設計されているはずなので、この詠唱文の指す特定の事象があるのでしょう。神話などからの誘引で事象を発生させる、誘引型術式のお手本のような詠唱ですね。ただ、古典的な詠唱と言いますか……伝承そのままを引っ張ってきているようなので応用性には欠けるところがあるでしょう。

怎麼生、相応しき罰――説破、天水。貴君、方舟に乗るに能わず。

中国語？読めないわっての！！！もう、なんなのよ！詠唱ってもっと脳直なものじゃないのかしら！方舟って何？船？船から追い出すのかしら。だいぶ限定的な使い方ね。
そういえば前にみんなで船に乗ったときに、レッドが1人で海賊ごっこしてて恥ずかしかったわ。そういうときに使えるのかしら、これ。うーん、お茶の間ポイント的にいまいちね。

……読めない！
一応、日本語の部分からある程度術式の全容は見えたけどね。
実用のしようがないからさ、ごめんね。

禅問答の形式の詠唱ね。面白いじゃない。私は好きよ、洗練されてる感じがするし、何より無駄がなくて。終末の洪水を再現するには簡素すぎるけど。というか禅問答の形式に洪水神話って噛み合うものなのかしら。未開拓すぎて試してみるのも面白そうね。可能性を感じるからオマケで点を付けてあげる。

禅問答を組み込むなんて随分珍しい事をするねェ、質問も返事も1人でするなんて少し寂しくないかい？
天の水に方舟、はるか昔に起きたとされている大洪水の記録を模した術で間違いないだろう。
水はいいねェ、生命の源にして始まりの母たる大海の属性を宿す術ともなれば尋常では無い破壊力があるだろう。
それに、大量の水で押し流すと事後処理が面倒という点も相手に与える精神的負荷、身体的疲労が期待出来る。
私は片付ける側にはなりたくないがねェ。

怎麼生、「そもさん」と読むんですね……さあどうだ！みたいな意味のようです。知りませんでした……おっと、これは誘引型術式、それもモチーフが分かりやすいですね。
多くの神話に共通して見られる神々の起こした災害、大洪水の逸話を誘引する術式ですね。なんでも川の近くで人類の文明は興り発達してきたために、川の氾濫は人々にとって重大かつ恐ろしい出来事だったため、神話に取り込まれるケースが多かったとか。この詠唱では方舟伝説も合わせて誘引していますね。方舟伝説を持ち出した場合は「洪水の規模が地球規模だった」という伝承からエネルギーをを取り出すことになるため、他の洪水の逸話を誘引した際よりも強力な効果が期待できるのでしょうか。もしくは逃げ道、自己防衛のために方舟を召喚するという意味合いがあるのかもしれません。
どちらの場合も相手が方舟に乗ることができない存在であることを前提とした詠唱術式となっています。まあ、それは術式でそのまま言及しているのですが。自分が方舟に乗って洪水を回避する、という方法を取る場合、範囲をうまく絞るなどして詠唱の影響下にある人間をごく少数にしなければいけませんね。もし自分よりも「善」と捉えられる人間が影響下にいた場合は乗ることができないでしょうから。それに方舟伝説では「つがい」をセットで乗せることになっているため、性別にも気を払わなければならないでしょうし、相手が人間ではなかった場合も「あらゆる生物から一種類ずつ」のルールに則って方舟に乗れてしまうでしょう。範囲内のものを一掃することができる強力な術式ですが、気を払わなければならない点が多く扱いが難しいですね。特に範囲を広げるほど同じ人間種を巻き込んでしまうところが相性が悪いですね。相手を用意した場所へ誘導する必要などがあるかもしれません。

起動―
蒼鉛の牢　収斂の蟲　悉くを焼く自縛の荒野
―終結「天煉之樹」

キャーーー！何！？！？虫！？！？あたし虫ニガテなのよ！イエロー！イエロー！！アンタ虫潰して汁出すの好きでしょ！ちょっとこの詠唱の相手してよ！！
「汁が出ないのはちょっと……」何よ！もう交換日記してやんないんだから！……あら？なんかよく見たら終結って書いてあるわ。虫、出ないのかしら。よかったわ！

いいねぇ！私も広域殲滅魔法は積極的に取り入れるべきだと思うし、戦術的に「行軍を単身で阻止する」みたいな運用をするなら詠唱はありだと思うよ！
大魔術をコンパクトに纏めているのもいい。ここまでの規模で空間に干渉する奴だともっと長くなりそうなものだけど、先述の運用を考えるとホントにちょうどいい長さ！
実用性、ロマン、共に満点！

んー、自然系の高次派生系って感じの詠唱ね。火のエレメントの力も混ぜてるのかしら。なんかややこしいことしてそうな割には詠唱がシンプルね。型として手順の一部を短縮して別で纏めてるのかしら。そういうところに目を瞑れば格式は高そうだし評価すべきところもあるわね。一部だけ私の詠唱に取り込んであげてもいいわよ？

本人の持ち得る異能ではなく、外部の物品や兵装に対する発動シークエンスとしての詠唱に見えるねェ。
先ほども言ったと思うが、人の手で作られた兵装等はやり方さえ分かっていれば誰でも使えるのが利点だ。
けれど、魔術的、呪術的な物はその限りでは無いのさ。
素養の無い者が扱うと暴走したり、そもそも発動しなかったり、結構気難しい物が多いんだ。
これも例に漏れず、取り扱いを間違えると大惨事になるだろうねェ。

うーん、誘引型術式ですかね。要素ごとの繋がりを推測するのは難しそうな気がします。見えるところから手を付けていくしかないですね。
蒼鉛というのはビスマスのことですね。それなりに珍しい金属で、確か他の金属と混ぜれば常温で溶けるようになるとか。それで作り上げた「蒼鉛の牢」ならば出ることを意図された牢ということなのか、堅牢だった牢を脆化させ内側のものを脱出させるということか。「収斂の蟲」というのも難しいですね。神話などに語られる蟲は蝗のように大群であることが多いですから、それを収斂させた？それとも収斂進化を指している……？
「悉くを焼く自縛の荒野」は「天煉之樹」と繋げて考えられるためまだ理解しやすそうに見えますね。「天煉之樹」の煉は煉獄などに使われる言葉ですから、炎や焼くことに関連していると思われます。樹木が枝を広げ天へと広がるように、荒野の大地を燃やしていく……そんな神話・伝承がその世界にはあり、そこから属性ごと誘引しているというのが一番簡単な推測ですかね。うーん。
私の勉強不足でこの詠唱は完全には理解できそうにありません。申し訳ない……「自縛」と「牢」などにも関連性がありそうなんですけどね。どうしても見えてこなかったのでこの点数を付けさせてもらいます。

終わりー！！もうっ脳が疲れたわ！！小難しい単語が多すぎよ！！みんな、お茶の間の良い子に優しくしなさい！……え？自分がわかんないだけだろって？
うるさーい！！アンタの家にドラゴン召喚するわよ！せいぜいアイツに無理やり友達登録でもされなさい！うわっ話題にしてたら変なスタンプ送られてきたわ！そろそろ退散しなきゃ！チャオ！アンタもドラゴンと仲良くしなさいよ！

いやー、私はどの詠唱を取り入れて行こうかな〜。
……いや、詠唱の見すぎで疲れたし、なんかもうしばらくは無詠唱で続けるかな。

魔術詠唱は料理のレシピに該当する部分だって話よね。まあなくても構わないタイプ(私みたいな)もいるのだけど！
だから発動の手順……、何処からどう力を借りてきてどう使うかが明確な詠唱が高評価になったわ。これって魔術じゃなくて詠唱のレビューだし。
ある程度教科書みたいなキレイなのが来ると思ったら所々てんで違うのだもの、ビックリしちゃった。ま、これでレビューのテストは終わりね。私への評価はどう？

いやァ、楽しませてもらったよ！
多種多様な信仰や体系、それに基づいた詠唱の数々。
その道のプロでは無いから土壇場で完全には解析出来なかったが、持ち帰ってまとめればそれなりの史料にはなるだろう。
こんなに長い間外に出る機会は中々無いからねェ。
もう少し色んな場所を巡ってみたかったんだが……どうやらもう回収係がこちらに向かっているらしくてねェ。
私の力を危険視するのは分かるが、少々乱暴だとは思わないかい？
……まァ、そういう訳だ。一足先にお暇するよ！
逃げ足には自信があるんだ、獣人だからねェ！

今読み返せばかなり私の世界の論理で話を進めてしまいました。残念ながら詠唱術式を理解するための舟が、自分の世界の理論しか無かったもので……簡素なものですが総評に私なりの詠唱理論の解説を載せておくことにします。ぜひ興味があれば私の世界に来てお話をしましょう。お待ちしています。

詠唱理論
「誘引型」：強大な力を持つ存在、物質、その力場からエネルギーを取り出すことにより、魔術的な効果を発生させるタイプの術式。この形式の詠唱術式が最もメジャーである。誘引型の「誘」は、目的の力場に関連付けたキーワードを詠唱に組み込むことにより発生までの道筋を示し、エネルギー損失をなるべく少なくするという方式のため。力場から0.001%でもエネルギーを直接引き出せれば「強大な魔術」となることが多い。それだけ対象となる力場のエネルギーが大きいことが多い（基本的に「世界」が対象だったりします。世界全体のエネルギーの0.001%なんて、想像したくもないでしょう？）が、特殊な属性を求めて小規模な力場を使用することもある。エネルギーを効率よく引き出すにはまず「その力場と深く関係があること」が重要なため、やはり世界（その世界から産み落とされそこで生きているため）などからエネルギーを取ることが多い。自己の体内からエネルギーを取り出す際は、最も近い存在であるためエネルギー欠失はほぼ起こらない（精神と体が乖離している、精神状態が異常である、シンプルに引き出すことが苦手などの問題で十分に魔力を引き出せないこともある）。空気中のマナは発散した魔術のエネルギーだと言われている。また、力場から取り出すエネルギーは純粋なことが多い（その方が便利）ため、触媒となる用語を盛り込んで属性を決めることも多々ある。

「触媒型」：エネルギーは別途用意され、術式はその経路を示す（属性を付与する）ためだけに使用されるタイプの詠唱術式。使用するエネルギーに属性が既についている世界が多いため、珍しい術式ではあるが、エネルギーに満ちた世界などでは最も便利かつ簡便な方式なので多用される。

「内因型」：自己の内部にある効果・能力を引き出すための詠唱であり。まあまあ珍しい形式。能力者の使用する詠唱などはこれに相当する。

メモ：詠唱文全て通して詠唱した際にのみ、この文章が意味を持つという場合もありますからね。実際その形式の方が術式中断時、発動失敗時にエネルギーをロスしたり逆流が発生する危険性も少ないので、完全に0からルールを練り上げられる内因型の詠唱者と相性が良いんです。

エネルギー概念
「魔力」：魔素の流れが生む魔術エネルギー。ベルフラワーの生きる世界から取り出せる力は主にこの形を取る。性質は電力にも近いが、可塑性が非常に高く、エネルギー損失がほぼなく熱や光へと変換でき、エネルギー損失は大きいが物質へと換えることも可能である（これは光・熱は魔素に属性を加えたものであり、厳密に言えば光魔術エネルギー、熱魔術エネルギーとなるため現実の熱・光とは全く異なっているため。物質は魔術エネルギーを多少は含んでいるものの、個体として存在するために可塑性を失わせる必要があることからエネルギー損失が非常に大きくなります）。

「魔法」と「魔術」：魔法とは、魔力などを使用して発生する効果全般を指す非常に広い言葉である。自然発生した効果も魔法と呼ぶ。魔術とは発生原因に人間の手が存在する効果であり、詠唱術式によって発生した効果は全て「魔術」「魔術による効果」である。魔法は魔術を含んでいる大概念で、下位に魔術があるという形。