陸上自衛隊が著作権を侵害?

※本記事は全文公開です。100円はおひねりで。


陸上自衛隊音楽隊に「パンツァーリート」の訳をコピペされるw : 「集団音楽」の研究(軍歌ブログ)

--引用開始-- 

https://www.youtube.com/watch?v=q5PSg2ut3sQ

ドイツ語のあとに日本語の歌詞が出てきますが、どう聴いても拙訳です。本当にありがとうございました。

--引用終了--


このブログの辻田さんが訳した歌詞を陸上自衛隊が本人の了承なしに利用したようです。はてなブックマークのコメントでは、「これは出典明記してないならアウトだなあ……。」というものもありますが、私はパッと見て『営利を目的としない上演等』(著作権法38条)に当たるんじゃないかなと思いました。

念のため調べてみると、自分の理解が甘かったことが分かったのでメモ代わりに記事にします。



営利を目的としない上演等の要件は

①営利を目的としない

②聴衆等から料金を受けない

③実演者等に報酬が支払われない

これらに合致すれば権利者の許諾を受けることなく利用しても著作権侵害になりません。順を追って見てみます。


まず、そもそも辻田さんに権利が帰属するか、ですが、翻訳は27条より二次的著作物の創作に当たると思いますので、翻訳文について辻田さんが著作権者になります。

さて、では今回の陸上自衛隊による上演、いつのものだったか調べてみました。どうやら「平成24年度陸上自衛隊東部方面音楽まつり」でのものだったようです。自衛隊の主催によるものなので営利目的でないことは間違いないので①の要件は充たしています。

また、wikipediaによると”一般観覧は往復葉書およびインターネットによる申し込み制で、抽選で観覧者が決められる”とあり、自衛隊のページでも有料である旨の記載はないため、②も充たすかに見えます。少し気になったのはwikipediaにある”館内外では業者により自衛隊グッズや記念品、DVD、カレンダー、菓子や食料品などの販売が行われている”という記載。グッズ販売が行われていても「聴衆等から料金を受けない」と言えるのか……と。これについて著作権法コンメンタールは”著作物の提供・提示とは無関係に一般に提供される給付の対価は、実費ないし通常料金の範囲にとどまる限り、ここに規定される「料金」には当たらない”(p.317)とあり、問題ないようですね。

次に③ですが、音楽隊に所属する自衛隊員って国からお給料貰ってこの仕事してるわけですよね?自衛隊音楽まつりも趣味でやってるわけじゃなくてお仕事の一環としてしているはずなので、「実演者等に報酬が支払われない」には当たらないのでは???というのが一番気になったところでした。ただ、これについても著作権法コンメンタールは”消防庁音楽隊あるいは詩歌を朗読する学校教師の給与は、演奏や口述の行為に対する反対給付とは言えず、著作物の利用行為をめぐる著作者の私益と公益との純粋な調整を妨げるような利潤とはいえない、したがって、そうした給与は、本要件の「報酬」には該当しないものと解すべき”(p.319)とあるため、問題となる可能性は低いかもしれません。

以上より、この自衛隊による上演、演奏は「営利を目的としない上演等」にあたり、著作権者の許諾を得ることなく無断で使っても大丈夫だった、、、という結論になりそうです。




ところで

自衛隊音楽まつりの様子はニコニコ生放送やUstreamで生中継されていたらしいんですよね。これは公衆送信権を侵害してる可能性あるのでは・・・?(あだちビデオ制作室のDVDにパンツァー・リートは収録されてないし、Youtubeの自衛隊公式チャンネルでもアップされていない)


ちなみに

パンツァー・リート自体は1933年の曲なので、作詞者のクルト・ヴィーレにかかる著作権が未だ切れていない可能性はあると思うんですが、翻訳自体が無許諾の可能性が(ry


以上です。

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